2171話 決死の灰塵と奥義の機戒
【荒野の自由】による呪文(?)の詠唱がされて発動されたのは【焉機黄昏】というスキルだった。
それによって具現化されたのは高精度レーザー、爆発ミサイル、プラズマキャノン、ナノブレード、ガトリングレールガンなどなど……物騒極まりないものたちだった!
しかも最悪なことに、それらは単体ではなく複数生み出され続けているのだ!
機械……いや、機戒だからこその大量生産が可能ってわけなのだろう。
「なんじゃなんじゃなんじゃぁっ!?
まるでここが泰山府君になったかのようなのじゃ……
わっちは死地に来た覚えは無いのじゃよ!
これで打ち止めになるのじゃが、仕方あるまい!
スキル発動!【転雷煌竜】!
……あとは、任せたのじゃ!」
【オメガンド】がそう言いながら放ったスキルは【転雷煌竜】。
竜の形をした稲妻が空から降り注ぎ、生成され続けている凶悪な兵器たちを破壊していっている!
……だが、【転雷煌竜】の威力も頻度もかなり高いはずなのにそれよりも兵器生成の某が圧倒的に早い!
しかし、ここを逃したらもう一生チャンスは訪れないだろう!
【荒野の自由】は奥義を披露している関係でスキル操作に演算を全て振っているみたいで、本体はピクリとも動いていないからな!
ここで動かないと負けだっ!
超特急で距離を詰めるぞっ!
スキル発動!【夢幻深淵】!
さらに……
スキル発動!【魚尾砲撃】!
スキル発動!【魚尾砲撃】!
スキル発動!【魚尾砲撃】!
スキル発動!【魚尾砲撃】!
スキル発動!【魚尾砲撃】!
スキル発動!【魚尾砲撃】!
スキル発動!【魚尾砲撃】!
スキル発動!【魚尾砲撃】!
スキル発動!【魚尾砲撃】!
スキル発動!【魚尾砲撃】!
スキル発動!【魚尾砲撃】!
スキル発動!【魚尾砲撃】!
俺はここで夢幻のセーラー服フォームへと変身していき、羽を十二枚に増やしていった!
そして放ったのは極太レーザーを放つ【魚尾砲撃】だ。
だが、これは攻撃のためでも迎撃のためでもない。
ただただ、【荒野の自由】に突っ込んでいくための推進力としての役割を果たしてもらうためだな!
重ねの兵法を使っていない単発スキルを途切れる度に使っているだけなので、スキルの変質や性能の向上なんてものはないがそれで充分!
【夢幻深淵】によって引き上げられた性能なら、【荒野の自由】の兵器から何とかギリギリ避けられるからなっ!
……まぁ、全部追尾してきてるから油断したら即死するんだが。
そう思っていたら真上に生成されたナノブレードが俺の軌道に合わせて放たれて来てしまった。
……くっ、【魚尾砲撃】の推進力が高すぎてあの場所を避けるのは無理だぞっ!?
万事休すかと思ったその時……
「ガハハ!!!
ワシの見せ場を用意してくれるとは流石相棒だ!!!
切り裂き咲き誇れ、【鉄血精咲】!!!」
俺の絶体絶命のピンチに【槌鍛冶士】は鉄で作られた満開の菖蒲を、盾のように展開してくれた。
最高のタイミング、最高の設置場所だっ!
同じ【上位権限】レイドボスのスキル同士なのでかなり拮抗して壁となってくれているが。それでも【槌鍛冶士】は通常のスキルなのに対して、【荒野の自由】は奥義だ。
鉄菖蒲の盾の内側にも兵器を生成し始めて内分裂しはじめていった。
くっ、【槌鍛冶士】のアシストのことは忘れないぞっ!
「わっちの権限ももう持たないのじゃっ!
スキルも使えないから、わっちの身体で隠すのじゃ!」
そう言って【オメガンド】は俺の通る経路を覆い被さってトンネルのようにミチを作り出してくれた。
さっそくレーザーやナノブレードで直撃を受けていて辛そうだが、お陰でとうとう【荒野の自由】に肉薄出来たっ!
あとはこれでっ!!!
俺の手が【荒野の自由】に触れそうになり、あと一歩のところで不穏な声がし始めた。
「甘いデース!
この身体が動かなくてもこれなら出来マース!
【キャストオフ】!」
【荒野の自由】が土壇場で仕掛けてきたのは【キャストオフ】、聖剣次元のMVPプレイヤーの【ランゼルート】が使用してきたこともある装備解除のスキルだ。
それで装甲を分解し、弾丸のように飛ばしてきた!
ぐぅぅぅぅ!?!?
身体に、穴が、空い、た……っ!?
もはや客観的に身体を見る余裕もないが、部品が弾け飛んだだけで蓮根のように俺の身体がスカスカになっていることだろう。
だが、あとちょっと……
届けば、いいんだっ!
これで……っ!
スキル、発動、【紅枝深淵】……
そして、黒紅色の茨が写真を【荒野の自由】に貼り付けた瞬間、俺は力尽きて光の粒子となって消え去っていった……
さて、どうなりましたかね。
【オメガンド】や【カイ】が奮闘したので良いものとなるといいですが……
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】




