2168話 制限付き青竜
【Raid Battle!】
【這竜渓谷の大盟主】
【オメガンド=メイローン】
【渓谷這竜】【竜人】【ギルドマスター】
【種の存続のために】
【冒険者を導く】
【聖獣であるが故に】
【深淵と敵対する】
【大いなる力の庇護の元には】
【多くの同胞、協力者が集う】
【復興を遂げた故郷にて】
【その大いなる力を示せ!】
【レイドバトルを開始します】
「久方ぶりのわっちの出番なのじゃ!
レイドボスの格を引っ提げて登場なのじゃよ!」
なんと、青竜レイドボス【オメガンド】がレイドボス……つまり人型ではなく竜の姿で登場したのだった!
まさか【風船飛行士】の隠し球として【オメガンド】を連れてくるというものがあったとはな……っ!?
奇しくも俺と同じ、聖獣を助っ人とするものだったというわけだ。
だからこそ、俺が【カイ=フジン】を召喚した時にこれまでにないほど賛同してくれていたってわけだな。
色々と腑に落ちたな……
「待ってたぞ【オメガンド】www
せっかくレイドボスとして呼び出せる使いきりの切り札をここで切ったんだwww
【荒野の自由】に一矢報いてくれないとオレが涙目になるンゴねぇwww 」
「わっちに任せるのじゃ!
竜の里の長として全力を披露するのじゃよ!」
そう言って【オメガンド】は【荒野の自由】へと飛びかかっていった。
まずお互いに相手の動向を見ている段階なのか、スキルの応酬というよりは身体と技量での戦いが繰り広げられている。
……で、今のうちにあの【オメガンド】のことを【風船飛行士】に聞いておくか。
どうせ呪力を最大限まで搾り取られたから戦闘どころか動くのもままならないんだろ?
だったら俺への説明責任くらい果たして貰わないとな。
「強欲すぎワロタwww
さっさと【オメガンド】のところに行って助太刀して来いよwww
……と言いたいところだが、実際すぐに戦闘に行かなくて助かった。
【荒野の自由】が聞こえない状態でお前に今の状況を伝える必要があったからな。
俺のリソースが切れて死に戻りするまでの猶予期間中にお前に伝えきらないとな……」
【風船飛行士】は途中から鬱陶しい喋り方を止めて真面目に俺の目を見て話し始めた。
それほど切羽詰まった状況ということなんだろうが、超戦力のレイドボスバージョンの【オメガンド】が助太刀に来たから余裕は生まれたはずじゃないのか?
俺が【風船飛行士】にそう問いかけると、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべて言葉を紡ぎ始めた。
「それならどれほどよかったんだろう。
あの【オメガンド】は風船偽竜に貼ってある呪符の力で生存しているハリボテみたいなものだ。
呪符が剥がされたらその時点で終了なのは当然として、さっき注ぎ込んだ呪力が全て無くなったらその時点で【オメガンド】はこの場から退去だ。
あと、【ギルドマスター】権限を代行しているオレが死に戻りしても同様だ。
様子見でスキルを使っていないように見えるが、あの【オメガンド】がスキルを使えるのは一回か、多くて二回くらい……制約が多すぎてかなり危ない橋を渡っているってことは伝えておきたくてな」
……は?
めちゃくちゃ制約多いじゃん!
よくもそんなに制約がある状態にしたな?
「だからここまで使わなかったんだよ。
切り札感を出して使わないと【荒野の自由】へのハッタリが効かないだろ?
この戦いは【荒野の自由】を倒すための戦いじゃない、そのことを念頭に置くならここがこのハッタリの使いどころだったというだけだ」
うーん、よく考えてきてたな!
経過はどうあれ、複数のパターンを予想していかに目的を果たすための立ち振舞いをするのか決めてきたんだろうよ。
流石並列思考が得意なだけあって、戦闘しながら裏で計画を修正し続けていたはずだ。
本来は【検証班長】みたいな作戦立案役がいれば【風船飛行士】がここまで無理をする必要は無かったんだろうが、その【検証班長】は今回敵に回ってしまっているからな。
戦闘要員としても貴重なトッププレイヤーを別の仕事に振ってしまうのは本当はもったいないところなんだけど……
まぁ、いないなら仕方ないだろう。
「ちょうどいいし、オレをそこの木陰に隠してくれ。
【オメガンド】を少しでも延命させるためにオレが先に死に戻りするわけにはいかない。
【荒野の自由】と【オメガンド】の戦いの流れ弾で死に戻りしたらこれまでの努力が水の泡だ」
【風船飛行士】もそう言っていることなので、首根っこを引っ張って木陰まで連れ込んでいった。
「ちょっwww
もうちょっと丁寧に扱って欲しいンゴねぇwww 」
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】




