2167話 竜の再誕
さっきの【風船飛行士】の【覇道竜陣】による制御不能事件もあってかとうとう片手で数えられるくらいしかプレイヤーが残っていない。
そろそろ俺も腹を括る時が来たか?
残っているのは【風船飛行士】、トング使いのモブプレイヤー、サバイバルナイフ使いのモブプレイヤー、風呂敷使いのモブプレイヤー……そして俺だ!
少数しか残ってないし、半分以上がモブプレイヤーという絶望的状況証拠ってわけだな。
風船偽竜で柔軟な防御をしていた【風船飛行士】とその付近で守ってもらっていた俺が生き残るのは理論上分かるが、今生き残っているモブプレイヤーたちは実力で生き残ったのか運良く生き残ったのかよく分からないから戦力として数えていいのかすら分からない。
だからこそ、俺自身がそろそろ腹を括らないといけないと思ったわけだな。
他力本願しようにも、その他力が心許なさすぎるからな……
「お前が突撃するならオレたちは全力で壁になるしかアリエナイwww
ここまで来てお前を犬死にさせるのは流石に役割理論に反するンゴねぇwww 」
出た、【風船飛行士】の役割理論!
それぞれがそれぞれの役割を果たすのに専念して、他の一切を切り捨てるってやつだ。
かなり尖った考え方だが、犠牲を省みず最短距離で目的を達成するという点においては随一だろう。
「そのためにもwww
【槌鍛冶士】www
ここを竜の里とするwww
許可してくれwww 」
竜の里とする……!?
いったいどういうことだ!?
何をしようとしているんだっ!?
俺は困惑していたが【槌鍛冶士】は少しだけ考えた後、サムズアップをしながら頷き……
「承知した!!!
ワシの森の……この一部をお前に貸し出そう!!!
【上位権限】ー【pseudo definition】!!!
封印竜の森里ーダンサムントだ!!!」
そう宣言すると、森の雰囲気が変わっていき……どこか荒々しいものになってきた。
まるで竜がすぐそばで息づいているかのような、そんな錯覚を覚えてしまうくらいにはな!
「サンキュー【槌鍛冶士】www
これでオレのやりたかったことが出来るンゴねぇwww
【荒野の自由】、見せてやるよ!
これがギルドマスターの力だ!
称号【竜人冒険者の長】をセット!
ギルドマスター権限起動www」
【Warning!】
【大いなる力の庇護の元には】
【多くの同胞、協力者が集う】
【復興を遂げた故郷にて】
【その大いなる力を示せ!】
【【ギルドマスター】権限により種族【竜人】の味方のステータスを上昇】
【エリア指定【竜の里】】
ギルドマスター権限か!
これがやりたくて【槌鍛冶士】にお願いしてたってわけか。
エリアの指定が竜の里に限られてるみたいだから仕方ないが、そこまでして無理やり達成してくるとは中々破天荒だな!
「ちょっwww
お前にだけは言われたくないンゴねぇwww
お前以上に破天荒なプレイヤーなんていないだろwww 」
そうかなぁ?
……それはそうと竜人の力を引き上げたところで、正直焼け石に水なんじゃないのか?
「幸いにもここに残ってる他のプレイヤー三人はオレのクランメンバーで、全員竜人だwww
それだけ恩恵を受けられるから価値はあるだろwww
対象人数が増えるとオレの負担がその分増えるからここまで使えなかったが、今の人数なら耐えられるからなwww 」
ふーん、ギルドマスター権限には負担っていうデメリットがあるのか。
そりゃ使うのを渋るか。
でも、さっきも言ったようにこのギルドマスター権限の強化だけで勝ち目があるとは思えないぞ?
「ちょっwww
慌てるな慌てるなwww
早くイキたいからって必死すぎだろwww
ここからが最後の仕上げだwww
【タウラノ】から貰ってきた呪符を風船偽竜に貼りつけて……竜人4人の呪力を最大限まで搾り取る!
ヴッッッッwww 」
そうして風船偽竜に呪符を貼りつけた【風船飛行士】……とそのクランメンバーたちは苦悶の声を上げ始めた。
まるで生け贄を捧げているかのような……
というか【深淵顕現権限】で俺がプレイヤーを生け贄にしているのを再現しているのか!?
ということは疑似顕現スキルっていうことで、風船偽竜に貼りつけたってことは……
【Raid Battle!】
【這竜渓谷の大盟主】
【オメガンド=メイローン】
【渓谷這竜】【竜人】【ギルドマスター】
【種の存続のために】
【冒険者を導く】
【聖獣であるが故に】
【深淵と敵対する】
【大いなる力の庇護の元には】
【多くの同胞、協力者が集う】
【復興を遂げた故郷にて】
【その大いなる力を示せ!】
【レイドバトルを開始します】
「久方ぶりのわっちの出番なのじゃ!
レイドボスの格を引っ提げて登場なのじゃよ!」
なんと、青竜レイドボス【オメガンド】がレイドボス……つまり人型ではなく竜の姿で登場したのだった!
これは私も予想していませんでしたね……
【タウラノ】、こんなものまで開発していたとは油断の隙もありませんね。
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】




