2162話 フューチャー下落
「ストックスロット2!【モーニングスターシスター】の【クラッシュ】ッス!」
「撲のカタカナスキルデスね!」
【バットシーフ】後輩はそう宣言すると、急降下して【荒野の自由】へとバットを振りかぶっていった!
【バットシーフ】後輩や【モーニングスターシスター】本人も言っているが、今回パクってきたのは【裏の人脈】の【モーニングスターシスター】が使うスキルだ。
あれは俺の【フィレオ】と似た系統のもので、ダメージはほとんど与えられないが代わりに状態を大きく変化させるものだ。
【フィレオ】が切断に特化しているように、【クラッシュ】は破壊に特化している!
【バットシーフ】後輩はあれで【荒野の自由】を破壊しようとしているのだろうか?
流石に無謀過ぎるだろ……
「ハッハッハッ!
ユーはフールデース!
その程度でミーは崩せまセーン!
【機獄銅檻】!」
飛翔してくる【バットシーフ】後輩を見た【荒野の自由】は銅の柵を手元に生み出し、それを投擲していった。
するとどうだろうか、銅の柵が【バットシーフ】後輩に近づいたタイミングで黄金色の翼が消えてしまったのだ!
そういえばそうだ、あの銅ゴリラ……【ヴィブラウン=コング】は深淵や聖獣天子関係のスキルを一定範囲内だけ無効化する能力を持っていたんだった!
そのボスである【荒野の自由】も同じ力を使ってくるの当たり前だよな……っ!?
「うわわわわわっ!?
お、落ちるッス!?」
上空を飛翔していた【バットシーフ】後輩は重力に逆らえずそのまま地面に向かって急下降していっている。
あのままいけば落下した衝撃で身体がペシャンコになるのは目に見えてるな。
それに、カタカナスキル【クラッシュ】を発動している最中なのも最悪だ。
あれは攻撃をぶつけると四肢のどれかが破壊されてしまう。
落下した瞬間にバットが何かに当たってしまったら受け身を取れたとしても【バットシーフ】後輩は甚大な身体故障を起こしてしまうわけだ。
【荒野の自由】め、本当に効率よくプレイヤーを間引いていくためにそこまでやるか!?
「ちょっwww
【包丁戦士】が助けに行けよwww
誰も助けないならオレが助けるしかないンゴねぇwww
スキル発動!【波状風流】!」
【風船飛行士】が【バットシーフ】後輩への助け船として使ったのは聖獣スキルの【波状風流】。
竜人に種族転生していれば風の刃を放てるものだが、今回は風のスプリンクラーを出現させる底辺種族用にダウングレードされたもののようだ。
それを【バットシーフ】後輩が落下してきている地点へ設置すると、そのまま上空へ吹き荒れる風が立ち始めていった!
「たっ、助かったッス……
本当に死に戻り寸前だったッスよ!
先輩も助けてくれたら良かったッス」
バカを言うな!
一応作戦として俺が下手を打つわけにはいかないからな。
自分のミスなら自分で尻拭いしろよ。
「ぐぬぬ……
先輩は相変わらず厳しいッスね……」
「ちょっwww
見捨てるのはアリエナイwww
お前のクランの貴重な戦力だろwww 」
それはそうなんだがな……
甘やかし過ぎたかもしれないとちょっと反省してて、干渉を減らしてるんだよ。
俺は【風船飛行士】にこっそり伝えておいた。
【バットシーフ】後輩に聞かれるのは何だか癪だし。
【風船飛行士】ならいいのかと言われると微妙なところなんだが、一応クランのリーダーをやっている者同士なので多少は共感してくれると思ってだ。
「……【包丁戦士】もそういうこと考えるんだな。
思ってたよりもクランメンバーを大切にしているみたいでオレもちょっと安心した」
急に真面目な口調と表情でそう伝えてきた【風船飛行士】。
……相変わらず普段とのギャップが凄いな!?
そんなに真面目になるほど俺や俺のクランのことを心配してくれてたのかよ。
頭がキレるやつの考えることはよく分からないな……
普段あれだけ敵対してるっていうのに。
「【包丁戦士】ちゃん、実は私の彼氏は結構気にかけてるのよ?
リアルでデートする時とかも【包丁戦士】ちゃんの話題が出るくらいには」
「ちょっwww
おまっwww
勝手なことを言うなwww 」
「何よ、どんなことを喋ろうと私の勝手でしょ?
ほら、【包丁戦士】ちゃんも困ってるじゃない!」
困ってるのはお前らのイチャつきに対してなんだけどなぁ……
まぁ、いいけどさぁ……
「次は私が力を発揮する番かしらね?」
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】




