2161話 ナナイロのアーツ
「アンビリーバボー!
テイマーでありながらミーの陣営の入っていないのがクエスチョンだったが、まさかその竜は修練武器だったのデース!?
であるならば、対処方法も変わりマース!
【レインボウ】!」
【荒野の自由】は機戒の砂を操り弓矢を生み出すと、それを引き絞り矢を放ってきた。
矢は分裂し、それぞれ七色に輝きながら風船偽竜を山なりに乗り越えて俺たちを狙撃してきたのだ!
まっすぐな軌道の銃弾だと難しいが、弓矢なら緩い軌道で敵を狙いに行けるってことか……
流石【上位権限】レイドボス……判断が効率的過ぎてビビるな!?
得物を使い捨てるように切り替えながら戦うのって人間からしてみるとかなり難しいんだぞ!?
俺だって暗器スタイルで複数切り替えたりすることもあるが、限度はあるし……
だが、【荒野の自由】は違う。
前に戦ったときもそうだったが、攻撃のための得物への執着が一切感じられず機械的に効率を求めている感じだ。
初期の方にあった【菜刀天子】を見ている気もする。
「ぐわ~!!!」
「し、しんどい……」
「出落ちで死ぬとか情けなさすぎるわ、私……」
「これが【荒野の自由】……ヤバすぎるだろ!」
どうやら【レインボウ】を受けてモブプレイヤーたちがさっそく死に戻りし始めてしまったようだ。
さては、風船偽竜を過信したな!
「いやいや、流石に風船偽竜を乗り越えられてきた攻撃はオレの範囲外ンゴねぇwww
直接破られたならともかく、さっきのはノーカンだろwww 」
「バカなこと言ってないで早く進みなさいって!
【包丁戦士】ちゃんが困ってるでしょ!」
「悲報www
彼女が全くオレの味方をしてくれない件についてwww
テラワロスwww 」
戦場だっていうのに彼氏彼女でイチャつきやがって……
【風船飛行士】も【虫眼鏡踊子】も随分と盛ってるようで。
「「イチャついてない」わ!」
はいはい……
まぁ、俺の分身みたいな【フェイ】も【フランベルジェナイト】と戦場でイチャついてる時がかなりあるから、潜在的にはあんまり人のことを言えたものじゃない気もするのでこの辺を弄るのはもしかするとやぶ蛇かもしれないな……
恋愛脳の俺自身を見せられるのってもはや罰ゲームみたいなものだし、それを指摘されたらもっと辛い!
「まだまだ行きマース!
【レインボウ】!」
現状を打破する方法としてカタカナスキルの【レインボウ】が最適だと判断した【荒野の自由】は再び同じく【レインボウ】を使用してきた。
弓矢のスキルは接近されたら使いにくいのだが、まだ【荒野の自由】との距離を詰めきれていない状況だとプレイヤー側はめちゃくちゃ対処に困るやつだ。
「ガハハ!!!
これは防がねば不味いな!!!
【森主顕現権限】!
【鉄壁樹林】!」
ここで名乗り出たのは俺たちの今回の総大将……【鉄血森林の森人君主】こと【槌鍛冶士】だ!
森人としての力を活性化させるスキル【森主顕現権限】を使った後、スキル【鉄壁樹林】で地面から生やした鋼鉄で出来た樹木を壁のように並べていき、それで七色の弓矢を次々に受け止めていった!
流石【槌鍛冶士】!
防御させたら他の【上位権限】レイドボスにも劣らないな!
「ガハハ!!!
その分攻撃力にはあまり自信がないがな!!!
自分の身を守ることだけを考え続けて生きてきたから、それに長けた力ばかり身についていったのだ!!!
情けないがな!!!」
【槌鍛冶士】はそう言っているが、別にそんなに悪いことだと思わない。
誰だって自分が生き残ることに必死なわけだ。
それがどんな手段であるかは他人にとやかく言われる筋合いもないだろう。
……むしろ、その手段で他の強豪たちの魔の手から逃れて生き続けてきたのだから誇るべきだ!
違うか?
「ガハハ!!!
お前に諭されるとはな!!!
だが、その思いっきりが心地よいな!!!」
【槌鍛冶士】が自嘲しているのは見てられなかったからな。
【荒野の自由】には【荒野の自由】なりの正義があるように、【槌鍛冶士】には【槌鍛冶士】なりの正義があってもいいだろう。
その判断基準は様々だが、結果を出してさえいれば問題ない!
あとはこの戦いでお互いの正義をぶつけ合うだけだ。
「【槌鍛冶士】先輩のためにも俺っちも頑張るッス!
ストックスロット1!【天元顕現権限】ッス!」
【槌鍛冶士】の鋼鉄の樹林の後ろから飛び出していったのは【バットシーフ】後輩だ。
黄金色の左翼を生み出し、それで飛翔していく。
……貴重な【天元顕現権限】の使い手だ、無駄死にするなよ!
無断とはいえ天子の力を扱うのですから無様な負け方は許しませんよ!
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】




