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2159話 【槌鍛冶士】の大演説

 「ガハハ!!!

 皆、よく集まってくれたな!!!

 ここまで攻め込まれていて敗戦直前という状況だが、これだけの人数が集まってくれてワシは嬉しいぞ!!!

 だが、このまま負けるわけにはいかない!!!

 逆転の切り札を【包丁戦士】が用意してくれたから、ここではそれに賭ける戦いになる!!!

 ワシからのお願いとしては、【包丁戦士】を【荒野の自由】に可能な限り近づけるようにしてやってくれ!!!

 それだけだ!!!」 


 

 【槌鍛冶士】はその演説をしながら俺に【荒野の自由】が写った写真を手渡してきた。

 これをどうすればいいんだ?



 「ガハハ!!!

 これを【荒野の自由】の身体に貼り付ければそれで達成だ!!!」



 【荒野の自由】の身体に貼りつける……か。

 字面だけ見れば簡単そうに聞こえるものだが、先日の戦いを見てもらったように逃げに徹していて攻撃をあまりしていなかったとはいえ、一撃も攻撃を当てられなかった。

 それが何を意味するのかというと、そもそも近づけるような余力がさっぱり無かったというわけだ!

 

 だから【荒野の自由】に写真を貼りつけるという行為は先日やっていた時間稼ぎよりもさらにハードルが高い行為ってことになるんだよなぁ……


 俺は苦虫を噛み潰したような表情を思わず浮かべてしまった。

 これを見た森人種族側のプレイヤーたちはざわめきはじめた。



 「先輩でも難しいッスか……」

 「ちょっwww

 お前がやってくれなかったら勝ち目がないンゴねぇwww

 何とかしてクレメンスwww 」

 「お姉さんが変わってあげたいところだけど、お姉さんも難しいわ~」

 「リーダーで無理なら多分無理でしょう」



 森人種族側のプレイヤーたちも何だかんだ俺を買ってくれていたようで、やれるなら俺くらいという認識みたいだな。

 そんな俺が露骨に不安そうな表情を浮かべたことで切り札が機能しない可能性も高いと思ってしまったのだろう。



 だが、そんな空気になった時に大声を張り上げて笑い飛ばすやつがいた。





 「ガハハ!!!

 皆、何を心配しておる!!!

 この次元……包丁次元をMVPプレイヤーとして引っ張ってきたのは誰でもない【包丁戦士】だ!!!

 そして何よりも、ワシが信頼をおく唯一無二の相棒だ!!!

 この写真を必ず活用してくれると確信しておるわ!!!」






 そんな根拠となるか分からない発言だったが、【槌鍛冶士】の力強く朗らかな声に周りは再び活気を取り戻し始めた!

 本当なら貼りに行く俺がやるはずだった煽動を珍しく【槌鍛冶士】がやってくれたが……

 本来ならこれだけの人前に代表として立つのを好んでやりたがらないのに今回やってくれたのは、自分自身のエリアを守るための陣営対戦であるということと俺が不安になっていたのがあるんだろう。


 そこに責任を感じて柄にもないことをやってくれたわけだ。

 それだけ狙われたことや、不利な戦況になってしまったことも含めて自責の念があるんだろうよ。


 ……俺の唯一無二の相棒がそれだけ背負い込んでいるなら、俺がその負担を軽減してやらないとな!






 『お前ら!

 この俺が【荒野の自由】に写真をきっちり貼りつけてやる!

 だから死に物狂いで俺を【荒野の自由】の目の前まで連れていけよ!

 ここまでの窮地を打開できる切り札を俺が用意して、【槌鍛冶士】が調整したんだ。

 手を抜いたら俺が直々にそいつをキルしに行ってやる!

 震えながら戦いやがれ!』



 「「「「「うおぉぉぉぉおぉぉぉ!!!」」」」」









 俺と【槌鍛冶士】の演説が組み合わさり何とかして士気を取り戻した森人種族側プレイヤーたち。

 機戒種族側のプレイヤーたちが【槌鍛冶士】の……【鉄血森林の森人君主】の【上位権限】で封印の森ダンサムントから排除されているからこそ、イマココにおいてはこちら側にアドバンテージがあると言ってもいい。


 そこでプレイヤーたちのモチベーションの高い低いが戦力にも大きく関係してくるからこそ、戦いが始まる前にそこにほぼ最高潮まで引き上げることが出来たのがとってもありがたい。

 戦いが始まった後だと後の祭りだからな……



 それじゃ、お前ら!

 イクゾ~!




 デッデッデデデデ カーン!


 【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】 

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