2137話 謙譲の美徳4
「では、ダイヤモンドから切り替えて対応させてもらおうか。
【金鉱ー紫晶の採】!」
【石動ガンジ】が【生樹技能】を発動させると周囲で回っていたダイヤモンドたちが一斉に姿を変えてダイヤモンドからアメジストへと変貌していった。
「見た目が変わりましたね。
わざわざダイヤモンドじゃなくしたということは性質に差異があるということです、気をつけてください!」
気をつけるといえば気をつけるが……
何をどう気をつけたらいいのか分からないから対策しようがないよな……
そうして警戒しながら【魚尾砲撃】を当て続けていると、アメジストたちが尖りはじめてそのまま俺たちを刺し殺そうとしてきた!
まるでウニかクリみたいなトゲトゲ感だ……
……というかこのまま放置してると【検証班長】を含めて生産プレイヤーたちがみんな死ぬな!?
「ぐわっっっ!」
「避けられねぇ!?」
「途中で出会った女性型ゴーレムとイチャイチャしたかった……」
案の定防御が間に合わないっ!
だが、せめて【検証班長】だけは守らないとっ!
スキル発動!【塞百足壁】!
俺は慌てて深淵の黒い壁を打ち立てて【検証班長】の前に割り込ませていく。
そこにぶつかったアメジストと黒い壁は拮抗しており、何とか防御出来ているようだ。
これでそのまま貫通していたら底下箱庭側の敗けだったからホッとしたぞ……!
だが、攻撃はそのまま続いており俺が守っている【検証班長】を除いた生産プレイヤーたちは次々にやられていってしまっている。
「【包丁戦士】、俺たちは見殺しかよ……」
「仕方ないとはいえきついぜ」
「俺、この戦いが終わったら結婚するんだ……」
「こんなところにいつまでもいられねぇ!
さっさとステッキ次元に帰らせてもらうぞ」
死亡フラグを残しながらどんどん死に戻りしていく生産モブプレイヤーたち。
お前ら、正直それ言いたいだけだろ!
どうせ死に戻りするならネタに走りたい気持ちは分かるけどさ。
「攻守逆転か。
手札の多さには驚いたが、些か拍子抜けした面もある。
底下箱庭と天昇箱庭の個の力の差には大きな溝があるのが確認できただけでも成果とすべきか」
おいおい、勝手に結論づけられるのは癪だな!?
……まぁ、一対複数で押されている状況だから言われても仕方ないかもしれないがお前もわりと死にかけなのを忘れるなよ!?
巨大化してもお腹に穴が空いたままなのは変わりないんだからな!
「だが、今はそちら側が某の攻撃を受けて大きくプレイヤーの数を減らしているのも事実。
ここから某が早々負けることもなかろう」
もう勝った気でいるんだな。
それならそれで突け入る隙もあるというものだ。
スキル発動!【堕枝深淵】!
さらに重ねてスキル発動!【堕枝深淵】!
俺は重ねの兵法を用いてルル様の必殺技である黒い茨を発生させるスキル【堕枝深淵】を発動させた!
「そのような茨は某のアメジストで串刺しにしておこう。
縫い付けておけば悪さもしまい」
【石動ガンジ】はそう言ってアメジストをトゲトゲしく伸ばしていき俺の黒い茨をどんどん地面へと串刺しにしていってしまった。
くっ、器用に縫いつけてきたな……
いいな、ここまで手強い相手は食欲をそそるってもんだ!
テンションが上がってくるじゃないか!
だが、追加だっ!
このおかわりを喰らってもらおうか!
このまま喰らい尽くさせてもらうぞ!!!!
思いっきり暴れてこい!
スキル発動!【堕枝深淵】!
さらにスキル発動!【暴食狂姫】!
【スキルチェイン!】
【【暴食狂姫】【堕枝深淵】】
【追加効果が付与されました】
【デメリットが増加しました】
【連鎖発動【暴食堕枝】】
俺は【暴食】の飢えに身を任せてスキルを発動させた。
すると、包丁から漆黒の茨が伸び、茨の枝が伸びていくと棘が生えるように包丁の刀身が次々に剥き出しとなり地面から一気に【石動ガンジ】を串刺しにしようと蠢きはじめた。
そして、鉱石で作られた足元から徐々に食い荒らしていく。
さらには既にアメジストに串刺しにされていた黒い茨からもアメジストを直接喰らいはじめて、その拘束から徐々に抜け出してきている。
そっちが美徳の力で戦うならこっちは大罪の力で荒らしてやるまでだ!
ははははは!
俺の飢えの前ではお前の固さは歯応えのいい食材でしかなかったってわけだ!!!
「感情の昂り……?
それが大罪のカギか。
閾値を超えた感情は身を滅ぼすというのに、底下箱庭側は破滅を望んでいるのか……?
……さて、それはさておき移動が封じられてしまったか。
これではここで勝負を決めねば勝ちはないか……」
はははははははは!!!
もっと、もっと喰らわせてくれよ!!
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】




