2136話 謙譲の美徳3
スキル発動!【阻鴉邪眼】!
俺はまず右目を黒く輝かせてデバフサークルを生み出していく。
対象はもちろん【石動ガンジ】だ!
巨大なロボットみたいなゴーレムのアバターだからデバフサークルのどこかには被ってくれているのもあって、視界に収めるのも楽で助かるなぁ……
図体がデカイ相手には案外これがいいのかもしれない。
そして、本体の【石動ガンジ】が弱体化されたということもあって、周囲を回っていたダイヤモンドたちの勢いが僅かではあるが弱まったようだ。
「天昇箱庭側のプレイヤーの【生樹技能】はアバターの本体と連携しているんですね。
もしかして身体に根源のようなものが内蔵されているんでしょうか……?」
【検証班長】の考察もあり得ない話じゃなさそうだよな。
底下箱庭側のプレイヤーが使うスキルは外付けだからアバターと適合しないスキルも多いんだが、天昇箱庭側のプレイヤーが使う【生樹技能】は身体に紐付いているっぽいし適合しないとかは無さそうだもんな。
システムの違いが【阻鴉邪眼】の挙動にも結果として現れてきているのは面白いな!
「底下箱庭側の呪いのようなスキル……
しかも某のClear bodyを貫通してきているのか。
ということは某に直接呪いをかけてきているわけではないのか……?」
ちっ、勘が鋭いな。
デバフサークルの範囲内に弱体化する空間を作っているだけだから、その範囲を抜けられたら良くない。
その代わりに直接【石動ガンジ】を弱体化させているわけじゃないから謎の弱体化対策を貫通出来たのだ。
……通用するかどうかは半分賭けみたいなものだったけどな!
だが、弱体化させても俺以外にアタッカーがいないので俺が追撃しないといけない。
それならこれだ!
スキル発動!【魚尾砲撃】!
俺が使ったのはもはや説明不要な極太レーザー、【魚尾砲撃】だ!
これで【石動ガンジ】を直接狙い撃ちするっ!
「それなりに威力のありそうな一撃のようだが……無駄だ!」
そう言って周囲に浮いていたダイヤモンドたちを密集させて俺の極太レーザーを防いできた。
そんな芸当も出来るのかよ、便利すぎるだろそれ!
それならこっちもそれを利用させてもらうだけだ!
スキル発動!【儡蜘蛛糸】!
今度俺が使ったのは【儡蜘蛛糸】……蜘蛛糸を噴射するスキルだ。
それを【魚尾砲撃】から【石動ガンジ】を守っていたダイヤモンドにへばりつけていく。
すると、その統制が崩れていきダイヤモンド同士でぶつかり合いを始めてしまったな!
「これは奇妙なことをしてくれた……
某のダイヤモンドのコントロールが利かないっ!?
操作を上書きしてきている……そういうことなのか」
ちっ、察しが良いようで。
まぁ、相手の操作に介入しているんだから気づかれるのは織り込み済みなんだけど、それでももうちょっと掻き乱したかったんだよなぁ……
それだったらもう少し【魚尾砲撃】のレーザーをぶち当て続けることが容易だったのに。
俺が全てのダイヤモンドの操作権利を奪取したわけじゃないので、奪ってないダイヤモンドたちで軌道修正をしようとしてきている。
スキルそのものの操作権利を奪う【秋風領域】と蜘蛛糸が触れている部分だけの操作権利を奪う【儡蜘蛛糸】では色々と仕様が違うからな……
本当はあのダイヤモンド全てを奪えていたらぶっちゃけ圧勝できたと思う。
逆に言えば、水系の攻撃をしてくる相手には【秋風領域】で楽して勝てるってわけだ。
【夢魔たこす】しかり、【潮騒ローラ】しかりだ。
だからこそ、手抜き出来ない【石動ガンジ】相手には手札をバンバン切り続けないといけないわけだ!
特に今は【阻鴉邪眼】、【儡蜘蛛糸】、【魚尾砲撃】だからな……
ルル様の深淵細胞を重ねていなかったら俺の身体が耐えきてれないだろうよ。
リソースが足りてなかった頃はこんなに同時にスキルの効果を継続させ続けるなんて出来てなかったどころか、そもそも発動すらしてくれないレベルの時もあったしな。
そこは俺の成長だよなぁ……
「激戦を繰り広げながら染々としているのは狂人と言われてもおかしくないですよ!
ボクがイメージアップしているんだから、見た目だけでも真剣に戦っているように見せてもらえると助かるよ……
ボク自身は自然体の【包丁戦士】さんを見ていたいところなんだけどね」
劣化天子の表情の変化は端から見ると異様としか言えませんからね。
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】




