2134話 謙譲の美徳1
「【包丁戦士】さん!
今がチャンスです!
【石動ガンジ】にトドメを刺してください!」
言われずとも俺が作ったチャンスだ!
やらせてもらうぞ!
スキル発動!【一尾狐矢】!
俺は矢のようにして狐火を連射していく。
まるで夜空に輝く花火のように綺麗な火花だが、それが全て散り散りに飛んでいくが至近距離で放ったこともありほとんどが【石動ガンジ】に被弾していった。
命中率に難のあることで定評のある【タウラノ】のスキルの【一尾狐矢】だが、発射地点から散らばるのが難点なだけで至近距離で放てば威力が合計されて高威力になるのだ!
「【包丁戦士】さん、いい判断です!
動けない相手に使うのが一番効果的なスキルですからね」
動けない相手に効果的っていうのもスキルの立ち位置として微妙なところだが、どれかが当たればOKくらいのノリで使うならそれほど困るものでもない。
とはいえ、やはり狙ったところにまともに飛んでいかないのは嫌なのでここでこの手札をさっそく切らせてもらったわけだな。
「確かにダメージこそ受けたが、これしきでは致命傷とは言えないな。
某の防御力を甘く見たか」
いいや、俺だって【一尾狐矢】だけで倒せるなんて思ってないぞ。
だからさらに次にいかせてもらうとする!
スキル発動!【彩炎帝像】!
俺が次に使ったのはステッキ次元、蛇腹剣次元と合同で懇親のために作りあげた像を完成させた時に偶然手に入ったスキル【彩炎帝像】だ。
これは上空に炎で作られた鳥を生み出し、それを相手に向けて放つというスキルだ。
特徴としては2つの機能から選んで創造できるのだが、今回使うのは巨大な像をそのまま上空から落下させるというものだ!
相手が動かないならこれがちょうどいい!
真上から真下へ落とすことしか出来ないのでかなり融通が利かないんだが、その分熱量が高く威力が高いのは間違いない!
……とはいえ、さっきも言ったように【石動ガンジ】は今動けないからな!
これも最適解だろ!
そしてそのまま落としていったところ……
「さ、流石にこの一撃は堪えるな。
身体の真ん中に穴が空いてしまったようだ」
よしっ、めちゃくちゃ防御力が高かった【石動ガンジ】にようやく致命傷を負わせることが出来たな!
動かない相手を前提にしたスキルを連続で直撃させたんだから流石にそれくらいになってもらわないと困るものだけど。
とはいえ、本来なら余裕でオーバーキルになる威力なのにそれでも全然生きてる状態なことに驚くべきだろう。
どれだけ防御力を高めてるんだよ!
流石におかしいだろ!
「だがこれで条件は満たされた!
刮目するといい!」
【美徳テキスト】
【【謙譲】が世界を凌駕する時、岩兵は救済される】
【Wake Up!】
【石動ガンジ】
【金鉱科ジュエリーゴーレム】→【金鉱科謙譲絢爛宝石兵】
【【謙譲】の権能により美徳進化しました】
【美徳の【生樹技能】が解放されました】
【【謙譲】レベルの上昇】
【【謙譲】時に相手との被害率対比でステータスが上昇します】
【【謙譲】の権能による特殊能力が貸与されます】
【大罪への敵対反応が発生しました】
出たな美徳反応!?
どうやら俺との被害率対比でステータスが変動するみたいだが、さっきので条件を満たしたとなれば身体が欠損していたりする状況が悪ければ悪いほどステータスが上がるのかもしれないな。
腹のど真ん中に空洞を空けたからようやく【謙譲】の美徳の権能が借りられたんだからな!
両足を失っている俺が相手だったからそれを越えるくらいの被害を受けるまでは起動できなかったのだろうよ。
難儀なものだが、案外大ダメージを受けた状態でこいつと戦えたのはラッキーだったのかもしれないなぁ!
怪我の功名というものですね。
全く、これだから劣化天子は……
悪運だけで生きているようなものですよ?
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】




