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2133話 ルビーの傾き

 「勇んで攻撃してきたわりにまた様子見といったところか。

 荒い口調、粗野な態度からして短絡的……と見せかけて実のところはそうでもないか」



 【石動ガンジ】は俺の戦いぶりを見て品定めしてきているようだ。

 【ロイス=キャメル】から色々と話を聞いていたりしていたし、もしかして人間観察が趣味とかそういうタイプなのか!?

 わりと豪快そうな戦い方をしていたがその実堅実的でもあったので情報を与えれば与えるほどヤバいやつかもしれないな。

 もしかするとコイツは見た目こそゴツイゴーレムだがプレイヤーのタイプとしては【検証班長】に近いのかもれない。


 いわゆる情報系プレイヤーだな。

 それなら防御力を異様に高めているのも納得がいくぞ!

 【検証班長】もデカブツムカデの深淵細胞を取り込んでいたりして同じく防御力を高めているからな……



 「気をつけてください!

 このプレイヤーは【包丁戦士】さんの情報も集めていました。

 ボクと戦っている時もしきりに聞いてきていましたからね……

 それほどアナウンスで名前を事前に聞いていたプレイヤーということで興味があったのでしょうが」



 あぁ、確かに俺はガーデンバトル中に何度も名前つきでワールドアナウンスを鳴らしてしまっているからな……!

 それで執着心を持たれているというわけか。

 不用意に目立ちすぎたか……



 「とはいえ半分くらいは仕方ないと思いますよ。

 【名称公開】や大罪の連鎖反応は避けられないものであったり、有利になるために必要なファクターでしたからそれをやらない方が非効率的だよ」



 それもそうか。

 実際、その時間にタイムリープしたとしてやり直しをしても全く同じ選択肢を取るだろうからなぁ。



 「そろそろ某の【生樹技能(ツリー)】も御披露目させてもらおうではないか。

 【金鉱ー紅玉の採】!」



 【石動ガンジ】はこのタイミングで【生樹技能(ツリー)】の【金鉱ー紅玉の採】を使ってきた。

 すると、身体からルビーと思われる鉱石が伸びてきて俺をつけ狙い始めたのだ!


 くそっ、【石動故智】も紅の鉱石を生やすスキルを好んで使ってきていたがそこまで似るのか……!

 だが、【石動故智】は地面から生やして来ていたが【石動ガンジ】は身体から生やしているという差異はあるようだ。

 

 だが、これなら動きは読めるっ!

 


 俺は竜と天子の翼をはためかせて回避していく。

 俺を追いかけてきているし、一見すると複雑な動きも可能なように見える【生樹技能(ツリー)】の【金鉱ー紅玉の採】だったが軌道にところどころ人間味を感じる遊びがあった。

 つまり、自動追尾じゃなくて【石動ガンジ】による人力操作なのだろう。

 

 あれだけ重そうな鉱石を身体で支えながら操作しているのは凄い技だと思うが、それ故に時折支えきれなくて軌道がブレてしまっている。

 とはいえ、MVPプレイヤークラスのプレイヤーじゃないと気づけないような微々たるものだからそこを落ち度と言ってしまうのは酷というものだろう。



 だが、その隙はきっちり突かせてもらうぞ!


 俺は包丁を振り下ろし、細く伸びていたルビーの鉱石へと打ちつけていった。

 普通の包丁なら刃こぼれ間違いなしの行動だが……

 チ ュ ー ト リ ア ル 武 器 は 壊 れ な い !



 「なっ、某の身体が……傾くっ!?」



 先端を思いっきり押し込んでやったら本体もバランスを崩して横転してしまったようだ!

 テコの原理みたいなものだな!


 

 「くっ、身体が起こせない……」



 それだけ重量があれば普通は倒されることもないだろうし、ノックバックも防いでいたくらいだから対応策も持ってないのだろう。

 手足を動かしてもがいているが、その状態から復帰できないようだ。


 

 「それが武器にリソースを割いたという底下箱庭のプレイヤーの戦い方というわけか。

 チュートリアル武器と言ったか?

 壊れない道具といういわば夢物語を実現させた世界ではそのような動きをするのだな。

 ……実に興味深い」



 やべっ、もっと興味を持たれてしまったな……

 ただでさえ執着心を持たれているっていう話だったのに、より面倒くさいことになったぞ……!?





 【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】

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