2130話 四散霧散
不安を煽るような大振動が起きたわけだが、【ロイス=キャメル】の方だとしても何とかしてくれるだろうと思い残された不安点である【検証班長】の方へと向かうようにした。
【検証班長】は自衛こそ出来るだろうが、それ以上には決してならないからな……
もし襲われていたら時間稼ぎに徹しているはずだろう。
そして他のプレイヤーに反撃を任せることになるんだが、【検証班長】についていっているプレイヤーたちは戦闘が苦手な生産プレイヤーばかりだ。
とても天昇箱庭側のプレイヤーを打倒出来るほどではない。
炎に追われて逃げてきたが、もしかすると逆方向にも伏兵がいて【検証班長】が先に襲われていたりしたらかなりピンチだ!
何とかして守りたいところだが、俺はさっきまで戦闘をしていてしばらく移動できていないからな。
どこまで【検証班長】が逃げているかによって追いつけるまでの時間が変わってくるし、方角も途中で変えていたら探すのも困難だ。
とりあえず直進して探すしかないが、頼むから早く見つかってくれよっ!
というわけで天子の左翼と邪悪竜の右翼を羽ばたかせながら後を追っていく俺。
今のところは【検証班長】どころか一緒にいたはずの生産プレイヤーたちの姿は見つからない。
そんなに長い時間戦闘していたつもりはないんだが、それでも結構離されてしまったみたいだな……
……とか思っていたら俺の気配察知に1人の気配が引っ掛かってくれたぞ!
これはラッキーだな!
どうやら俺が探していた方向より45度くらい角度がずれていたらしく、飛翔する方向を切り替えてそちらへと向かっていく。
こういう時に気配に敏感なのは非常に助かるなぁ!
何も手がかりがない状態だったらこの1人すら見つけられずに見当違いの方向へと飛び続けるハメになっていたんだからな……
そうなったなら余計なロスタイムが生まれるのは当然のことながら、取り返しのつかないことになりかねない。
あと、もしかしたら不要な戦闘に巻き込まれる可能性も孕んでいるから侮れないと思うぞ!
「げっ、【包丁戦士】……
いや、今は味方だからいいのか……」
俺が見つけたモブプレイヤーは俺の顔を見るなり顔をしかめていた。
ということは俺の悪行をよく知っている包丁次元のプレイヤーってことだろう。
蛇腹剣次元やステッキ次元のプレイヤーはそこまで露骨な反応を示すほど俺のことを詳しく知っているやつはそんなにいないからな……
「それより【包丁戦士】の足無いじゃん!
あの【包丁戦士】が両足を失うくらい激しい戦闘だったっていうのかよ……
やっぱり次元戦争やガーデンバトルは包丁次元内の戦いよりもレベルが高いのか!?」
まぁ、その辺にこれまで参加したことがないプレイヤーならそういう反応になってもおかしくはないか。
俺が包丁次元内で負け越したり、プレイヤー相手に重傷を負う機会って中々無いからモブプレイヤーたちにとっては驚きの要因なのかもしれない。
それはそうと、お前以外のプレイヤーはどこに行ったんだ?
周りにはいなさそうというか気配を感じないからある程度離れているみたいだが……
「あっ、それそれ!
【包丁戦士】と【ロイス=キャメル】さんが離れた後に後ろから突撃してくるゴーレムみたいなやつがいてみんな必死に逃げてたんだよ。
四方向くらいに別れて逃走したからわりとバラバラになってる。
オレは途中で追われてないのが分かったからここで1人で休憩してたんだよ」
お前、結構マイペースなやつだな……
「だってオレのチュートリアル武器は歯ブラシだし、モノを磨くくらいにしか役に立たないからどうせ倒されてもそこまで損にならないし、追いつかれたらそのままキルされるだけだ」
マイペースなのか悲観的なのか分からなくなってきたな……
とりあえず生産プレイヤーたちは四方向に散っていったんだな?
【検証班長】がどっちに行ったか分かるか?
「【検証班長】さんなら……
ここから90度向きを変えたところに向かっていった……気がする。
オレも途中まで必死に逃げてたからあんまり正確じゃないからな!
違っても後からキルしにくるなよ!?」
……普段の俺がどう思われているのか分かる反応だな。
まぁ、それはそれとして【検証班長】がいる方向が分かったからヨシとしよう!
さあ、あとは追いかけるだけだ!
ゴーレムも気になるしな!
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】




