2129話 蒼炎カンガルー
炎を宿らせた拳でパンチしながら追撃してくる蒼炎カンガルーと、そこから逃げる俺。
だが、両足が爆発で吹き飛ばされ片方しか翼がない俺だと移動速度がさほど出ずどんどん距離を詰められていっている。
これは正直まずいが、さっきの立ち姿を見ている時に動きに一番隙のあったやつが蒼炎カンガルーだったからな。
あの中でも一番パワーもスピードもなんと無く高そうだったが、それでも一番ふとした拍子で倒せる可能性があるのがこいつだったからな……
仕方ない。
追いつかれても何とかなるように今から準備しておくか……
そうして追いつかれた瞬間、俺は急旋回していく。
スキル発動!【天元顕現権限】!
俺はここで機動力を再度取り戻すために天子の左翼を生やしていった。
さっきまでは竜の右翼だけが残っていた状態だったからな、これでまた両方の翼が生えてきたというわけだ!
本当ならここでスピードアップして逃げるという選択肢も出てくるのだが、そうなると俺を追いかけてきていた蒼炎カンガルーが【ロイス=キャメル】のところに戻っていってしまうことだろう。
そうなると【ロイス=キャメル】の負担が流石にヤバそうなので止めておいた方がいいってわけだな!
というわけでスキル発動!【花上楼閣】!
俺は岩の花弁を生み出してガトリング砲のようにどんどん放っていく。
それを蒼炎を宿した拳で撃ち落とそうとしたカンガルーだったが、2発ほど撃ち落としたタイミングで攻撃が間に合わず残りは全て被弾していったようだ!
やはり、立ち姿を見ていて隙が多かっただけあって、防御面はわりと弱めだな。
……と俺が勝ち誇った顔をしていたらそれに気づいた蒼炎カンガルーが怒りながら拳を何回か振るとそこから炎が発射されてきた!
しかもご丁寧に拳の形をした炎になっていた。
そんなロケットパンチみたいなのありかよ!
だが、それは相手が悪かったな!
ほれ、空に舞い上がってやろうか!
俺は拳を意に介さず空に飛び立つことで回避していった。
拳からの延長攻撃だと進路がどうしても直線的になるからな……
かなりの至近距離か、接近している最中の相手か、大型の相手くらいじゃないと中々当たらないぞ?
というわけでそろそろ締めにいかせてもらおうじゃないか!
スキル発動!【渡月伝心】!
俺は包丁の先から銀色の円環粒子を発生させて、そこから蒼炎カンガルーへ向けて振り下ろしていった!
すると、円環粒子たちが蒼炎カンガルーを囲い込んでいき、一斉に襲いかかっていったのだ!
そして粒子たちが蒼炎カンガルーを千切りにしていき、そのまま消し去っていった。
……ふぅ、いくらスペックが高くともきちんと対処すればこんなものか。
まぁ、プレイヤー三人分ってところか。
【ロイス=キャメル】が相手をしているやつらがどれくらいの強さなのかまでは分からないが、万全の【ロイス=キャメル】なら残り三人くらいなら片付けられるだろう。
そっちに助っ人に行くのもいいだろうが、こいつらを相手にしている間に【検証班長】が危険に晒されていないか心配だな。
そう思い俺がこの後どうするのか腕を組みながら考えていると、ふと地響きのような音が周囲に響き渡り始めた。
この重音感、よほど重いものが持ち上がった後に落下してきていないと鳴らないものだ。
ただ、油断していたからどっちの方向から鳴っていたのかまでは気づけなかった。
……ちっ、集中していたら聞き分けくらい出来たのにな。
とりあえず【ロイス=キャメル】なら1人で何とかしてくれるだろうと信じて【検証班長】を追うか!
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】




