2125話 勤勉の美徳6ー 槍雨
【紫焼ミルカ】の【灯火ー零火の導】で足を氷で絡め取られてしまった俺と【ギアフリィ】。
行動を阻害されてしまったのもあり、飛べなくなってしまった。
おい、【ギアフリィ】!
この氷なんとか出来ないか?
「だったらこの辺り一帯の氷をまとめて吹き飛ばさないとダメだな……
実力派プレイヤーのオレの一撃に巻き込まれないように気をつけるんだぜ?
スキル発動!code call……」
【ギアフリィ】はそう言うとまたスキルの詠唱をし始めた。
おいおい、そんな大袈裟な……
【天焦がす傲慢の黒炎よ】
【点火された誇りは留まることを知らず】
【地に伏す者を下す雨と化す】
【渾然たるオレの実力を知らしめせ!】
【混沌たるオレの威光を知らしめせ!】
【オレの号令により】
【気高き誇りが今ここに顕現する】
【破砕せよっ!!!】
【【混濁スル傲慢ノ黒炎雨】】
【ギアフリィ】の詠唱が終わると空に黒炎で作り出されたパイルバンカーが幾つも生成されて、それが地上へと一気に降り注ぎ始めたのだ!
……氷をちょっとどうにかするってだけにしては大袈裟過ぎる攻撃だよな!?
しかも俺にも襲いかかってきてるし!?
「だから先に気をつけろって言ったんだぜ!
この詠唱スキルたちは実力派プレイヤーのオレでも制御しきれないからな!
でもチビ女ならなんとかするだろ?」
くっ、俺に変な信頼を持ちやがって……
でも何とかしないわけにはいかないよな?
というわけで黒炎のパイルバンカーを包丁で受け流していく。
俺の包丁によるパリィはほぼ100パーセントの成功率という絶対的自信のある技能だ!
だが、そんなパリィでも攻撃の威力は完全に流しきれず腕の各所に火傷を負ってしまった。
まぁ、それでも足元を絡め取っていた氷たちが根こそぎ破壊されていってくれたので再び自由に移動できるようになったぞ!
「……やっぱりチビ女のそれ、どんなスキルよりも厄介だと思うぜ?」
なんだよ、お前が何とかしろって言ったから何とかして凌いだのにそんな非難されるような言われ方をする筋合いなんてないんだからな!?
「べっ、別に非難してるわけじゃないぜ!?」
……それならいいんだがな?
というか、詠唱が必要なスキルってことは俺の【堕枝深淵】や【紅枝深淵】みたいな奥義系スキルに該当するのがさっきから使ってきているやつか。
大罪とガルザヴォークの力の合わせ技みたいなものだから機戒種族の力で制御するには力が溢れすぎている感じだろう。
【ギアフリィ】は深淵の狂気に相乗りして使いこなすというより、常識的な範囲で飼い慣らすタイプっぽいし仕方ないか。
そして、さっきの一撃でダメージをくらったのは俺や氷だけじゃなく……
「何なの何なの何なの!?
いっぱいパイルバンカーが降ってきたんだけど!?
痛いじゃないの!?」
きっちり【紫焼ミルカ】にもダメージを与えていたようだ。
しかもわりと重傷のようだ。
全身を炎で覆っているわりに黒炎でのダメージも通るみたいで安心したぞ。
「【ギアフリィ】の全く制御しきる気の無い攻撃のせいよ!
炎が乱れてて相殺するのがとっても難しかったんだからっ!」
どうやら半分暴走状態だったことが逆に功を奏したらしいな。
乱れまくっていて読めなかったとかそういうことだろう。
いや、本当に【ギアフリィ】がここに来てくれてよかったなと思うぞ!
俺が想像していた【ギアフリィ】のこれまでの戦い方とは結構違うんだが、あいつはあいつで色々な力を実戦で試したいという気持ちもあるんだろうな。
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】




