2124話 勤勉の美徳5ー 零地点
「随分念入りに姿を変えてきたみたいだけど、それくらいで今のアタシに勝てるのかしら?
虚仮威しにならないといいわね?」
「それなら実力派プレイヤーのオレの力を見せてやるぜ!
スキル発動!code call……」
【荒れ狂う大罪の風よ】
【オレの漆黒の炎に抱かれて変容しろ!】
【この身に歯向かう愚か者たちへ降り注ぐ災厄と化し】
【傲慢なるオレの実力を知らしめせ!】
【漆黒の焔が世界の全てを包み込み】
【此処がオレの煉獄と化すぜ!】
【【傲慢ナル深淵ノ焔】!】
大罪【傲慢】の力を深淵の力で強制的に使役させ放たれた漆黒の焔が瞬く間に膨れ上がっていく。
その膨張する様は、自らの傲慢によってプライドが膨れ上がっていくことを形にしたと言われても納得できるほどの勢いと爆発力だった。
これは前に死屍累々城塞でギアフリィゾンビが使ってきてた激強スキルじゃないか!?
【ギアフリィ】、お前も使えるようになってのかよ……
それに、いつの間に【傲慢】の大罪の権能の貸与を受けてたんだ?
アナウンスを聞き逃してしまったかな?
そんなことを考えている間にも【ギアフリィ】の炎で狙われた【紫焼ミルカ】
「炎特化のアタシに炎をぶつけようとしてくるなんていい度胸じゃない!
受けて立つわよ!
【美徳ー勤勉の集約】、それに【灯火-鎮火の導】!」
対抗して【紫焼ミルカ】が放ったのはこれまでとは一気に変わって透明な粉塵のようなものだった。
それが【ギアフリィ】の放った【傲慢ナル深淵ノ焔】とぶつかると炎を一気に弱めていった。
あれほどの熱量を一気に減らすとは……!?
「【紫焼ミルカ】、オレの炎に何をした!?
結構自信のある一撃だったんだぜ!?」
「灯火科のセクションリーダーとして、炎の扱いは他のプレイヤーには負けないわよ!
当然炎を弱める方法も知り尽くしてるわ!」
属性に特化しているからこそ、対策も分かるというわけか。
まぁ、灯火科っていうくらいだし、【紫焼ミルカ】以外も炎攻撃を主体にしてそうだからその対策くらいは持ち合わせているよなぁ……
だが、【ギアフリィ】に気を取られ過ぎたな?
俺のこと忘れてないか?
俺は包丁を振り抜いて【紫焼ミルカ】の背中を切り裂いていった。
こいつは巨体なので背中全体……というわけにはいかなかったが、死角を突いて無防備な【紫焼ミルカ】に強烈な一撃を与えることが出来たのでかなりの活躍じゃないか?
「よくやったチビ女!
実力派プレイヤーのオレのスキルを無駄にしなかったな!
相変わらず抜け目のないやつだぜ!」
「派手な攻撃に目を取られ過ぎたわね……
悔しいけど完全に【ギアフリィ】に気を取られてたわ!」
とのことだ。
やっぱり俺は一対一で戦ってるよりも他の連中が戦っている間に割り込んで奇襲を仕掛けていくのが適任だな!
自分でもそう思ってる。
それに【ギアフリィ】の攻撃がめちゃくちゃ派手で目立つエフェクトを散らかしまくっていたからな。
俺が背後に忍び寄りやすい状況を【ギアフリィ】がしれっと作ってくれていたわけだ。
ありがたいことにな。
「さっき自分でも言ったことだけど守ってばかりだと勝てないわね……
そろそろ反撃させてもらうわよ!
【灯火ー零火の導】!」
反撃と言わんがばかりに【紫焼ミルカ】が使ってきた【生樹技能】は【灯火ー零火の導】というものだった。
これまでのように大規模な熱量が俺たちを襲ってくる、そう思っていたのだが……
「寒っ!?
炎じゃなくて氷が出てきたぞ!?」
そう、【ギアフリィ】の言うようにこれまでとは真逆の現象が起きているのだ!
しかも俺たちの足を絡めとるようにして氷が伸びてきているのでせっかく翼があるのに空に逃げられなくなった。
それに、寒さでスリップダメージがどんどん蓄積されていってしまっているみたいだな。
これまでは圧倒的な火力で敵を凪払うような戦闘スタイルだったのに急に搦手で攻めてきたな……
「アタシが火力だけで天昇箱庭の戦いを勝ち抜いてきたと思ってたワケ?
そんなに天昇箱庭は甘くないわよ!
裏の隠し球があるから意表を突くことだってやるわよ。
……灯火科ではあんまり人気のない【生樹技能】だけどね」
やっぱり【生樹技能】にも人気、不人気とかあるのか……
スキルツリー方式ならある程度なぞれば入手する【生樹技能】を選べるだろうし、人気なものをみんなが伸ばそうとするのはあり得るかな?
スキルにも差はありますけどね。
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】




