2123話 勤勉の美徳4ー リミット・ブラックドラゴン
「スキル発動!【機天慟哭】!
総門解放だぜ!」
ギアフリィがとっておきのスキルを発動させると、背後に空間の歪みが生まれ始めた。
そして、1つ1つから大砲、マスケット銃、ガトリング、ショットガン、レーザー銃、粒子砲など様々な遠距離武器が出現し空中で待機している。
それぞれ出現した武器には1から12までのナンバリングがされていて、おそろく時計に呼応しているのだろう。
「全機、射撃対象は目の前の【紫焼ミルカ】
だ!
撃ち方用意……放て!」
ギアフリィが射撃を武器たちに命じると、空中で待機していた武器が凶弾を一斉に放ち始めた。
これも【ギアフリィ】が得意とする必殺技のうちの一つだな!
次元戦争初期から愛用していることからも機戒種族スキルの中でも取り回しが特にいいと本人も感じていることなのだろう。
「出たわね!?
前はそれに苦しめられたけど、前に苦戦した戦術の対策をしないほどアタシはバカじゃないわよ!
【美徳ー勤勉の反芻】よ!」
そう宣言して【生樹技能】を起動させた【紫焼ミルカ】はオーラで全身を覆っていった。
ただでさえ紫色の炎で燃えたぎっているのに、そこに新たなエフェクトが追加されると目がチカチカしてくるのだが、気にすべきはそこではなさそうだ。
「実力派プレイヤーのオレが使ったスキル【機天慟哭】が全然効いてない!?
一発でも大ダメージになるはずなんだぜ!?
そんなことありえるのかよ!?」
「ふふん、驚いたかしら。
この【美徳ー勤勉の反芻】はアタシを直近で三回前まで死に戻りさせた攻撃のダメージを10分の1にするのよ!
前はその【機天慟哭】とかいう攻撃にやられちゃったけど、そのお陰で今のアタシにはほとんど効かないのよ!」
そ、そんなものまであるのか!?
【生樹技能】は中々奥深いな……
過去のログまでご丁寧に遡って参照してダメージ軽減をしてくるってことか。
死に戻りさせた攻撃限定みたいだから初見の相手には全く使えないし、直近三回までだから期間がかなり空いて再戦した場合でも全く意味を為さないという……俺が手に入れたとしても使い道に困るものだ。
そしてこれで分かるのは【紫焼ミルカ】が前回のガーデンバトルからほとんど死に戻りをしていないということだ。
俺はあのサハギンに気が狂うほど死に戻りさせられたから回数にかなり差があるような気もするな!
「あれから死んでないのかよ……
天昇箱庭は随分と温室みたいに快適みたいだな!」
「アンタッ、言っていいことといけないことがあるでしょ!」
「ハンッ、それなら実力派プレイヤーのオレに勝ってから言えよ!
スキル発動!【機竜響助】!」
【機天慟哭】が効かないと判断した【ギアフリィ】は新たな機戒種族のスキル【機竜響助】を発動させていった。
すると、【ギアフリィ】が取り出したデバイスから竜の鱗のような機械パーツが生み出され、身体とチュートリアル武器のパイルバンカーに取り付けられていった。
……これはまさか【竜鱗図冊】の機戒種族バージョンか!?
「さらに行くぜ!
スキル発動!【機戒深淵BD】!」
そこにさらに組み合わせられたのは【機戒深淵】というスキルだ。
【ギアフリィ】がさっき取りつけたばかりの機械パーツの竜鱗に黒い紋様が這うようにして宿っていき、全身から黒いオーラを放つようになっていた。
これは【深淵顕現権限】か【深淵纏縛】みたいなものか!?
深淵の力をヒシヒシと感じるぞ!?
「機戒種族の力で制御した深淵の力を部分的に行使出来るスキルだぜ!
チビ女みたいなイカれたやつじゃなくても安定して深淵の力を使えるようになる優れものだ!
……その分出力は落ちるけどよ」
そ、そんなスキルまで獲得していたのか!?
確かに機戒種族って力を抑え込んだり、封印したりする傾向にあるが……それを行使出来る手段まで用意していたとはな!?
敵だったら厄介なことこの上ないが、今回は味方なのでありがたく頼らせてもらうぞ!
それに深淵の力同士なら連携もしやすいし、【ギアフリィ】も中々幅広いスタイルを使い分けてくるようになってきたな!?
変身の形態も複数使い分けてくるMVPプレイヤーはあんまりいないから、どことなく親近感がわいてくるな……
言われてみるとそうですね。
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】




