212話 悪寒の予感
【Raid Battle!】
【包丁を冠する君主】
【菜刀天子】
【次元天子】【上位権限】【???】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【次元をさまよい】
【冒険者を導く】
【聖獣を担うが故に】
【深淵と敵対する】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も元気にログイン!
今日は……何をしようか……
「劣化天子が何をするのか決めずにログインしてくるのは珍しいですね。
今日は槍でも降ってくるのではないですか?」
この若干上から目線の物言いは……【菜刀天子】か。
まあ、たしかに何も決めないでログインしたのはあまりないからな。
せっかくだしお前に聞くか、何したらいいと思う?
「雑な振り方ですね……次元天子である私にもう少し敬意を払ってくれませんかね?
この次元の最高権力者なんですが……」
まあ、そんな固いこと言うなよ、今さらじゃないか。
「……劣化天子に期待した私が間違いでしたか……
それで、やることですか……
宝物庫でも見てきたらどうですか?
ついでに整理しておいてください、私のために働くといいでしょう」
おいおい、なんか完全に雑用係として働かせる気満々じゃないか。
でも、宝物庫か……機能を解放した日以降全く確認してなかったしちょうどいいか。
やれるだけはやってやろう。
「それではキリキリとボロ雑巾になるまで手を休めないように」
そんな不穏な言葉を聞き流し、俺は宝物庫へと歩みを進めるのだった……
はい、というわけでやって来ました王宮の中にある宝物庫!
重厚な扉の取っ手に手をかけてゆっくりと開けていく。
すると、その先に広がっていた光景が目にはいった。
……なんじゃこりゃ!?
俺が以前見た宝物庫は壁の黄金装飾や、天井のきらびやかな照明、大理石の床など部屋自体がとても豪華で文句なしという空間だけで見ると良い場所だった。
だが、今はどうだろうか。
荘厳な雰囲気と豊かな彩飾が見るものを惹き付ける中毒性のある様式で、メキシコにあるカカシュトラ遺跡の壁画を思い出させる感じに変わっている。
これは……【失伝秘具】八卦深淵板か!
そういえば、ダンジョンで手に入れて宝物庫に送ったんだった。
手に入れたっきり何に使うのか分からなかったので、完全に忘却してたぞ……
実績照会に出てくるくらい重要なアイテムなのに、散々な扱いをしてしまってる。
「いや、【失伝秘具】の存在を忘れないでくれませんか?」
悪い悪い。
で、内装の変化に気をとられていたが、包丁次元のプレイヤーたちが雑に宝物庫にアイテムを送ってきている結果、かなりカオスな様子になっている。
大根があったかと思うと、そのとなりにはぬいぐるみが置いてあったりする。
……よく見るとこのぬいぐるみ、【菜刀天子】をデフォルメした見た目だな。
物好きもいたものだ……
こっちは紙……いや、手紙か。
黄色のリボンで留められた手紙がそこには落ちていた。
俺は、落ちている手紙を手にとって読んでみる。
【菜刀天子】!【菜刀天子】!【菜刀天子】!【菜刀天子】ぅぅうううわぁああああああああああああああああああああああん!!!
あぁああああ…ああ…あっあっー!あぁああああああ!!!【菜刀天子】【菜刀天子】【菜刀天子】ぅううぁわぁああああ!!!
あぁクンカクンカ!クンカクンカ!スーハースーハー!スーハースーハー!いい匂いだなぁ…くんくん
んはぁっ!【菜刀天子】たんの黄金色の髪をクンカクンカしたいお!クンカクンカ!あぁあ!!
間違えた!モフモフしたいお!モフモフ!モフモフ!髪髪モフモフ!カリカリモフモフ…きゅんきゅんきゅい!!
闘技場イベントの【菜刀天子】たんかわいかったよぅ!!あぁぁああ…あああ…あっあぁああああ!!ふぁぁあああんんっ!!
次元戦争勝てて良かったね【菜刀天子】たん!あぁあああああ!かわいい!【菜刀天子】たん!かわいい!あっああぁああ!
初心者イベントの告知にも出てきて嬉し…いやぁああああああ!!!にゃああああああああん!!ぎゃああああああああ!!
ぐあああああああああああ!!!VRMMOなんて現実じゃない!!!!あ……よく考えたら……
【 菜 刀 天 子 】ち ゃ ん は 現実 じ ゃ な い?にゃあああああああああああああん!!うぁああああああああああ!!
そんなぁああああああ!!いやぁぁぁあああああああああ!!はぁああああああん!!アネイブルぁああああ!!
この!ちきしょー!やめてやる!!現実なんかやめ…て…え!?見…てる?ホログラムの【菜刀天子】ちゃんが僕を見てる?
闘技場のホログラムの【菜刀天子】ちゃんが僕を見てるぞ!【菜刀天子】ちゃんが僕を見てるぞ!ウインドウ画面のイベント告知の【菜刀天子】ちゃんが僕を見てるぞ!!
闘技場イベントのハイライト動画の【菜刀天子】ちゃんが僕に話しかけてるぞ!!!よかった…世の中まだまだ捨てたモンじゃないんだねっ!
いやっほぉおおおおおおお!!!僕には【菜刀天子】ちゃんがいる!!やったよ!!ひとりでできるもん!!!
あ、新緑都市アネイブルの【菜刀天子】ちゃああああああああああああああん!!いやぁあああああああああああああああ!!!!
あっあんああっああんあぁあ!!!!ぁああああああ!!!ァぁあああ!!
ううっうぅうう!!俺の想いよ【菜刀天子】へ届け!!新緑都市アネイブルの【菜刀天子】へ届け!
……俺はそっと手紙を【魚尾砲撃】で焼き払った。
これはこの次元に存在していいものではない。
なんだか悪寒がしましたね……?
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