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2117話 猛火タライ

 紫色の炎に包まれた三メートルサイズの狼アバターの【紫焼ミルカ】が突進や爪攻撃で俺を追い詰めようとしてくる。



 「コラッ!

 ちょこまか逃げるのを止めなさいよ!

 アタシの攻撃がアンタに全く当たらないじゃないの!」



 そんなこと言われたって素直に当たりにいったら俺が馬鹿みたいじゃんか。

 それに、その言葉に俺が従う義理なんてないしな。


 行動はわりと鋭いし抜けてるところはあまりないみたいだが、【紫焼ミルカ】は言動のピントがズレているみたいなんだよなぁ……

 明らかに対戦相手に求めることじゃないものも要求してきてるし。

 そういう煽りなのかもしれないけどな!



 「アンタ、言い過ぎじゃないっ!?

 アタシだって考えて話してるのよ!」



 さーて、どうだかな?

 確かに考えているのかもしれないが、どれくらい考えてるかの程度については話してないから少し考えたことがすぐに口に出るタイプなのかもしれないだろう。



 それなら……

 スキル発動!【【深海顕現権限XIII(ウルウシンバー)】】!



 俺がスキルを発動させると身体から赤色の魚鱗が全身を覆うように生えてきた。

 

  

 「ちょっとアタシたちみたいなモンスター型に近づいたわね?

 金属鎧を着てたあの男も変身してきたけど、その時は羽だったからプレイヤーによって違うのね?」



 どうやら【ギアフリィ】も変身スキルを使って変身する姿を見せていたようだな。

 まぁ、アバターのスペックが軒並み高い天昇箱庭側のプレイヤーを相手にするならそれくらいの下駄を履かないとキツすぎるから当然ではあるんだけどな!



 ちなみに俺が力を宿したのは深海種族のレイドボス【ウルウシンバー=|◉〻◉)=サハギン】のものだ。

 これなら炎や火に対する耐性も一気に上がるだろうし、【紫焼ミルカ】の攻撃が被弾したとしても即死することはないと見込んでいるぞ!

 

 これまでには無かった手札だが、【双真(ふたま)ナル】のお陰で手に入った俺の弱点を補完する変身形態だ!

 


 「でも、少し見た目が変わったくらいでアタシに勝つつもり?

 それは甘いわよ!

 くらいなさい!

 【灯火ー猛火の導】!」



 【紫焼ミルカ】が繰り出してきたのは【灯火ー猛火の導】という【生樹技能(ツリー)】だった。

 口からブレスのようにして放たれた紫色の炎は俺を狙って真っ直ぐ迫ってきているっ!


 ……さっき狙いが定まってない攻撃なんて当たらないって言ったからそれの意趣返しってわけか?

 むしろ俺だけを葬り去るっていう猛火だよな、これ……



 だが、これを当たってやるわけにはいかない!

 いくら炎に幾分か強くなったとはいえ、別に炎にめっぽう強くなったわけじゃないからな!

 むしろマイナスがようやくゼロ地点に戻ったくらいだ。

 

 だったらこれで凌がせてもらうか!

 スキル発動!【三叉漁板】!



 俺は【ウルウシンバー=|◉〻◉)=サハギン】を討伐して手に入れたスキル【三叉漁板】を発動させた。

 するとどうだろうか、手元に緑色のトライデントが現れてきた。

 

 

 「何?

 そのトライデントでアタシの炎を防ぐ気かしら?

 でもそんな細い棒一本で防げるほどアタシの【灯火ー猛火の導】は弱火じゃないわよ!」



 そりゃ、これで炎を切ったりするなんて芸当が出来るわけない……いや、【釣竿剣士】とか【師匠】ならやってのけるんだろうが、俺には無理だ!

 

 だからこそ、このトライデントは地面に突き刺す!



 「せっかく生み出したトライデントを地面に突き刺した!?

 アンタ、頭がおかしくなったの!?

 それじゃ防ぐどころじゃないわ!

 さては、アタシがあまりにも強そうだから勝つのを諦めたのね」



 いやいや、流石にそれはない。

 確かにお前が強いのは認めてやるが、勝機はまだまだ全然あるからな!



 というわけで【三叉漁板】の効果発動!

 上から魚鱗の生えた巨大なタライが落下してきて、俺と【紫焼ミルカ】の間に割り込んできた。

 そして炎を受け止めてくれて俺の方に被害が及ぶことはなかったぞ!

 


 変な挙動のスキルだが、性能は充分だったというわけだ!




 真面目カニ!


 【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】

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タライガード!うおおおお!
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