2115話 紫色の刺客
というわけで一人で森の中をうろうろしているわけだが……
流石にまだここまでは来てないみたいだな?
たどり着くのも時間の問題だと思うが、流石に開始早々に見通しの悪い森の中に突っ込んでくるやつはそう簡単にはいないだろう。
誰が、何が潜んでいるのか分からないわけだし。
多分【マキ】のいる市場周辺には既に天昇箱庭側のプレイヤーはたどり着いていて、戦闘が始まっていてもおかしくないとは思うが……
そうして森の中で少し耳をすませてみたら案の定、【マキ】がいるであろう市場の方から戦闘音が聞こえ始めた。
ここまでは【検証班長】の予想通りだな。
……いや、待て待て!?
一直線にこっちに向かってきている気配がするぞ!?
しかもこの進行速度と方向からして好戦的な敵っていうのは疑う余地すらないくらいだ!
しかもこの進路……放置してたら【検証班長】と【ギアフリィ】のところへたどり着いてしまうな!?
狙ってなのか、偶然なのか分からないが初っぱなからこれを放置するのは良くないよな……
せっかく俺が遊撃に出てるわけだし、仕留めにいかないと役割として合わないし!
……ってなわけで、謎の勢いで進行してきた敵と接触出来そうなポイントまで移動していく。
移動速度が速いから逆に直線的な移動方法になってしまっているということもあって、進路を予想しやすかったのはありがたい話だ。
そうして待ち構えていると現れたのは3メートルほどの紫色の炎に覆われた狼の姿のプレイヤーだった。
オイオイ、こいつは俺が一番出会いたくなかった灯火科のセクションリーダーは【紫焼ミルカ】じゃないか!?
【ワールドアナウンス】
【【包丁戦士】が【名称看破】しました】
【【灯火科】のプレイヤー【紫焼ミルカ】】
【【包丁戦士】「オイオイ、こいつは俺が一番出会いたくなかった灯火科のセクションリーダーは【紫焼ミルカ】じゃないか!?」】
【【名称公開】により知名度に応じたステータス低下効果付与】
「いっ、いきなりデバフ!?
そんなのアリっ!?」
俺のかけた【名称公開】デバフに驚いた灯火科のセクションリーダーの【紫焼ミルカ】は足を止めて辺りを見渡しはじめた。
……あっ、俺を見つけたみたいだな!
とりあえずこれで一旦の足止めは出来たわけだが、ここから倒すところまで持っていかないといけない。
だが、こいつは俺が一番苦手とするセクションリーダーの可能性が高いし下手すると返り討ちになることになるだろう。
まだ戦ってないかは実力はどんなものか知らないが、セクションリーダーってことは相当のやり手なのは間違いないだろうし苦戦は確実に強いられることだろうよ、くそっ!
「なんでデバフを受けたアタシじゃなくてアンタの方が悔しそうな顔してるのよ……
底下箱庭側のプレイヤーはよく分からないわね」
分からないついでに簡単に自己紹介しておこうか。
俺は底下箱庭、包丁次元のMVPプレイヤーの【包丁戦士】だぁ!
そっちでいうセクションリーダーみたいなものだな。
「ふーん、アンタがリーダーの可能性もありそうね?
それなら走るのは止めて戦闘しようかしら。
何故かアタシの名前を知っていたみたいだけど改めて自己紹介しておくわ。
アタシは天昇箱庭、灯火科のセクションリーダー【紫焼ミルカ】よ!
この燃えたぎる疾走欲をアンタで発散させてもらうわ!」
……こいつ、発言から推測するに走ることが好きなタイプか。
だから目的地を決めて走っていたわけじゃなくて、走ることで得られる疾走感を求めて異様な動きをしていたわけだ。
それが偶然【検証班長】や【ギアフリィ】の方向だったわけで。
とはいってもただ単純なだけではなくて、戦闘開始したが俺とにらめっこしている状態で間合いをはかり合っている。
相手の隙を窺えるくらいの忍耐や洞察力はありそうだな。
【潮騒ローラ】のように直感や勢いだけで無双するわけではないらしい。
……まぁ、【潮騒ローラ】は対処しにくかったので意図を読めそうな分【紫焼ミルカ】の方が相手をしやすいかもしれないか。
あとは属性的な相性が良ければ有利に立ち回れた自信があるんだが、炎、火属性の使い手みたいだから絶対俺へのダメージが増大されるんだよなぁ……
参ったなぁ……
なんとかしなさい!
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】




