2101話 白黒渦巻きと東雲あすか
【Raid Battle!】
【包丁戦士】
【包丁を冠する君主】
【深淵域の管理者】
【『sin』暴食大罪を司る悪魔】
【メイン】ー【深淵天子】【深淵使徒】【プレイヤー】【会者定離】
【サブ1】ー【次元天子】【ボーダー(妖怪)】【上位権限】
【サブ2】ー【暴食大罪魔】【デザイア】
【聖獣を担うが故に】
【深淵へ誘い】
【聖邪の境界を流転させる】
【責務放棄により】
【境界を見守り】
【管理することを強いられる】
【会うは別れの始め】
【合わせ物は離れ物】
【産声は死の始まり】
【この世の栄誉は去ってゆく】
【故に永遠なるものなど存在しない】
【瞳に宿る狂気に溺れたままいられることを祈るのみ】
【ああ……この世は無情である】
【ワールドアナウンス】
【【包丁戦士】がレイドボスとして顕現しました】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も穏便にログイン!
何か久しぶりにログインした気分になるな。
気のせいかもしれないが……
というわけでやってきました流刑次元!
今はただの通路となっているこの場所だが、ここに三人の姿があった。
一人はこの俺だ!
……まぁ、俺の目が行き届いてなかったら何人いるのかそもそも把握できないので当然のことではあるんだが。
「おう!
昨日ぶりだっつー話だな!
ボトムダウンオンラインで会うのは久しぶりだけどよ!」
二人目は【東雲あすか】だ。
ゲーム内ではセーラー服衣装がデフォルトなのでコスプレ感があるはずなのだが、自然と着こなしているのは流石現役だな。
相変わらずの口調の悪さはあるけど。
「……」
そして三人目は無言剣士だな。
こいつのアバター名は本人が喋らないから分からん!
だが、昨日【山伏権現】に召集された三人が今日も集まっているのはあいつからの仕事の依頼があったからだ。
天昇箱庭側のサーバーを攻撃しろってことだった。
てっきりハッキング技術を使わないといけないと思っていたのだが、どうやら違ったようでサーバーにボトムダウンオンラインのアバターを使って乗り込むようだ。
「まるで俺たちがウイルスにコンバートして次元渡航するみてーなもんだな!
変な気分だっつー話だ」
「……!」
ウイルスにコンバート……言い得て妙な表現だな。
そう、俺たちが自分でサーバーに攻撃しないといけないんだからウイルスと表現しても違和感はないんだよなぁ。
自分がウイルスと言われるのは何か嫌な感じだが、事実だからその認識を頭に置いておかないといけないだろう。
「だよな!
……ここに天昇箱庭のサーバーに繋がるゲートが限定的に開かれるっつー話なんだがどこにあんだ?」
「……?」
俺たち三人で見渡してみたがパッと見でそれっぽいものは見当たらない。
まぁ、天昇箱庭に繋がるゲートが簡単に見つかるようでは他のプレイヤーたちが勝手に利用してしまう可能性もあるし、そうでなくても変な勘繰りをされてしまう可能性もあるので見つかりにくい方がいいんだろうけど。
そんなことを思っていたら……
「おい!?
何か空中に渦巻きみたいなのが出てきたぞ!?
やべーなあれ」
「……」
【東雲あすか】の言うように白黒に点滅する渦巻きのようなものがどんどん空中で大きくなっていっている。
まるで俺たちの登場を待ってから発生したかのようだが……
いや、多分それで正解なんだろう。
こんなの常にこんな場所に置いておくわけにもいかないくらい目立つし、俺たち専用として【山伏権現】が外から作り出してるんだろうなぁ……
「うだうだしてても仕方ねーしさっさと飛び込むっつー話だな!」
「……!」
そう言って【東雲あすか】は真っ先に飛び込んでいってしまった……
猪突猛進だな!?
せっかくだしちょっと様子を見てみるか……
俺と無言剣士は白黒の渦巻きを身体の前で腕を組みながらぼーっと眺めていた。
すると渦巻きの中から【東雲あすか】の顔だけこちら側に戻ってきた。
うわっ、きも!?
「きもってひでー言いぐさだっつー話だな!
ってかオメーらも早く来いよ!
こっちも変な感じになってんぞ!」
とりあえず【東雲あすか】の安否が確認出来たので安心だな。
あいつには悪いが人柱になってもらったので俺たちも向こうに行って大丈夫だろう……
平然と仲間の雑な使い方をしてますね……
流石は劣化天子……
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】