2093話 お屋敷オフ会
俺、【霧咲朱芽】はとある場所へと足を運んでいた。
そこは都心にある一際目立つ豪邸だ。
都心でこれだけの規模の豪邸を維持しようとしたらとんでもない額のお金が飛び続けてしまうことになるはずだが、それでもなおここにあるということはその程度の出費なんて気にならないくらい稼いでいる証拠になる。
そう、ここはこの国随一の産業を牽引する跳流財閥が保有する屋敷なのだ!
流石にこの中へ無遠慮で入る勇気は無いが……
ということで守衛が監視しているゲートを横目にどうするのか逡巡しているわけだ。
こんなに格式ばったところに入った試しなんてほとんどないからな……
トレジャーハンターとして手に入れた財宝を売り捌く時もブローカーを経由しているから金持ちと会う機会なんて数えられるくらいしかないぞ!
ということでうろうろしていたら中から貫禄のある年配女性家政婦が外に出てきて、俺の前まで歩いてきた。
「【霧咲朱芽】様でごさいますでしょうか?
お嬢様のご友人がいらっしゃるということでお待ちしておりましたがお時間になられてもいらっしゃらないため、私が参りました。
メイド長の【賀虎理衣】と申します、身の回りについてお世話させていただくことになりますが……
……お嬢様のご学友でございましょうか?」
どうやら俺が何者なのか知られていないようだな、どういう意図か知らないが……
というか俺は【トランポリン守兵】お嬢様と同学年と思われてるのか?
流石にそこまで若くないぞ!?
「呼んでおいて案内人に伝えてくれていないのはどうかと思うぞ……
もう少し俺を歓迎してくれてもいいんじゃないのか?」
俺がそうボソッと聞こえないように呟きながらも、家政婦の後ろについて中へと入っていくことにした。
すると、歩くこと1分ほどしたら歩きながら家政婦が話しかけてきた。
「その立ち振舞い……もしやと思いましたが【包丁戦士】様でございましょうか?
ご学友の方がそれほど場慣れした歩き方をされるとは思えませんし、私も対戦した経験がありますから似たような雰囲気を感じました」
俺の正体を歩きながら看破してきただと!?
どれだけの強者なんだ……
だが、【トランポリン守兵】お嬢様の知り合いで強者の家政婦といえば一人思い当たる節がある。
「お前、【肉叉家政婦】か?
こうもあっさり俺の正体を見破ってくるとは恐れ入ったな!
流石は警護も任されているだけある」
「お褒めのお言葉、身に余る光栄でございます。
では僭越ながら、このままお嬢様のところまでご案内させていただきます。
ごゆるりとお時間をお過ごしなさいませ」
そうして【肉叉家政婦】に案内されたのは頑丈かつ流麗な装飾の成された扉の前だった。
そこを【賀虎理衣】が開けると黒髪ロングのおとなしめな印象の女がいた。
服は……どこかの学校の制服みたいだな。
まさかコイツが……!?
「ワタクシが跳流財閥次期後継者【跳流麗華】……そして【トランポリン守兵】ですわ!」
やっぱりそうだったのか!?
だが、ボトムダウンオンラインの中での印象とは結構違うんだな。
金髪でもツインテドリルでもないし、ゴスロリも着てないからな……
「中等部の頃はそのようなコスプレをしていたこともありましたが、今はこの姿がスタンダードでしてよ!
ボトムダウンオンラインの中ではかつてコスプレしていた姿をアバターとして再現しましたわ!」
なるほどな。
だから見た目の印象が違うんだな。
それでかつ、やったことのある姿だから自身にも馴染みがあるというわけだ。
「【包丁戦士】様……いえ【霧咲朱芽】様はお聞きしていた年齢よりもずっと若々しい見た目をされていらっしゃいますわね!
ワタクシよりも若く見られてもおかしくありませんでしてよ」
「実際、【賀虎理衣】には初見で学友だと思われてたからな……
名前しか伝えてなかったのか?」
俺が【跳流麗華】にそう聞いてみると手を口に当てながら笑いを堪えて俺の問いに答えてくれた。
「その方が『面白い』ことになると思っておりましたわ!
予想していた通りの対面をされていたのですわね!」
こいつ……故意にやってたな!?
俺で遊びやがって……
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】