2084話 事後硬直
俺の【アキカゼ・ハヤテ】コスプレを見た【ウルウシンバー=|◉〻◉)=サハギン】は驚いた様子をして硬直していた。
さっきは咄嗟に姿を変えたからトライデントの攻撃が継続されていたのだが、今は止まっていることを考えると何か気になるところがあるんだろうな?
「今がチャンスだよ!
ここで攻めないといつ次の好機があるかなんて分からないからね!
スキル発動!【海鉱一滴】!」
【双真ナル】がこの静寂のなかで一番早く動き始めて、【夢魔たこす】も使っていたスキル【海鉱一滴】で攻めていた。
水の中に一つの水滴がさらに生み出され、そこから波紋が広がり【ウルウシンバー=|◉〻◉)=サハギン】へと押し寄せていった!
よしっ、しっかり効いているな!
ご丁寧にノックバックもされているので、残りの体力もそれほど残っていないのが見て取れた。
「うん、そうだね。
もうあと一息頑張ろうか!」
そうしていると【海鉱一滴】を嫌がった【ウルウシンバー=|◉〻◉)=サハギン】が最後の切り札としてなのか水の膜を張っていき、攻撃をシャットアウトしてきたぞ!
……なるほど、本来はここまで体力を削ったタイミングで使ってくるものだったのか。
傷を抉っていた時にこの行動をしてきたのは本当にNG行動をしてきたプレイヤーへ先攻して対策するためだったのだろう。
ここまで体力を削った後に使ってくるなら何とか先も見えるのだが、さほど体力を削っていないタイミングであの水の膜を使われたら勝ち目が全く見えないし仕方ない。
「とはいえ、あれは【魚尾砲撃】や【海底撈月】のレーザーを防いでくるくらい頑丈なバリアだよ?
ここからどうやって攻略する気かな?」
とりあえずさっき手に入れたスキルでも使ってみるか!
スキル発動!【アキカゼ】!
俺はキーになりそうな新たなカタカナスキルの【アキカゼ】を発動させてみた。
すると俺のチュートリアル武器が包丁からカメラへと変化していったのだ。
……これだけか?
俺は武器を失っただけなんだが……!?
「チュートリアル武器を変化させるカタカナスキル……そんなものもあるんだね?
これは私も予想してなかったから驚いたよ。
【修練武器上位解放】とも違う新しい切り口だよ、チュートリアル武器の形は変わっても系統が変化するなんてこのボトムダウンオンラインでは無かったと思うからね」
俺も知らないな。
包丁とカメラでは全く別物だし。
まさか同じ系統に属していた……とかいうオチはないだろうな?
「流石にそれはないと思うけど……」
というわけで、新スキルの【アキカゼ】では水の膜をどうにかすることは出来なかったようだ。
参ったな……
「そんなことしてたら向こうから攻撃が飛んできたよ!?
水の渦柱が何本もこっちに向かってきてるね!」
また、新たな攻撃パターンか!
しかも連発してくるし、遠距離にも対応出来るという厄介そうなものだ。
これは……防いでいいんだろうか?
「どうだろうね?
これも防いだら天板落とし攻撃をされてしまう可能性もあるからね。
可能なら避ける方向性の方がいいかも!」
まぁ、幸いにも【アキカゼ・ハヤテ】コスプレ状態の俺は回避性能がピカ一だ!
避けることだけを考えるなら造作もないぞ!
「……確かに見事な避けっぷりだね!?
しかも私を抱えてなんて結構余裕があるんだ?」
もしかしたらいけるかもと思ってやってみたが案外いけたな。
【双真ナル】は俺よりも大きいんだが、それでも抱えて移動して回避まで余裕にこなせるという自信があった。
それほどこのアバターの今の性能は高まっているというわけだ!
移動行為に特化するなら右に出るプレイヤーはいないんじゃないかってくらいだな。
「……もしかしたらこれを見越して攻撃を防いではいけないギミックになっていたのかな?
それは考えすぎかな……?
イレギュラー発生した状況だから、どこまでが【山伏権現】の予定に組み込まれてたのか分からないのがもどかしいよ」
それは俺も知らん!
だけど、流石にそこまでは想定外じゃないのか?
お前の力が無かったら【アキカゼ・ハヤテ】の力を借りれなかったわけだし。
それを計算に入れるのは無理だろ。
「……まぁ、【包丁戦士】がそう思うならそれでもいいかな?
私としてはここから決着まで【包丁戦士】を導けたらそれで充分だからね」
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】