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206話 再現性ミリオンボトム

 初心者プレイヤーたちを巻き込みながら爆発したミューン。

 一見すると撃破したように見えるが……


 脳内に鳴り響きはじめた無機質な声が唯一の判断基準だ。

 さあ、どっちだ!?



 【ability【会者定離】が起動しました】



 【ワールドアナウンス】



 【レイドクエスト【兎月舞う新緑の主(廻)】がクリアされました】


 【この次元の新規プレイヤーにスキル【渡月伝心】【花上楼閣】が開放されました】


 




 おっ、とりあえずミューンは倒せてたようだ。



 称号はなしか。

 まあ、あれはあくまでもオマケみたいなものだし復刻版だともらえないんだろう。


 あと、今まで配られていなかった聖獣スキルが2つとも初心者プレイヤーにも配られたみたいだな。

 いくらプレイヤーに人権がないゲームとはいえ、流石に初心者プレイヤーたちにあのべらぼうに硬い【ウプシロン=ウーグウイ】と戦わせることはしなかったようだ。

 あんなの、ゲームやりはじめた時に倒さないといけない相手として出てきたらすぐ止めてる自信がある。


 

 これで、初心者プレイヤーへの連絡や、移動距離の補助が楽になるだろう。

 システム補助系のスキルだが、なんだかんだ使い勝手はいいと評判だからこのスキルを手にいれた連中は喜ぶだろう。




 だが、俺からするとこのアナウンスから非常に嫌な予感がする。

 皆は俺が新緑都市アネイブルでレイドボスを倒したときに手にいれたスキルを覚えているだろうか?


 ……そう、【渡月伝心】と【魚尾砲撃】だ。

 この2つのスキルは俺だけじゃなくて、包丁次元のプレイヤー全員に配られたいわば汎用スキルという扱いだ。

 そのうち【渡月伝心】は今配られたからいいだろう。

 同じように汎用スキルの【花上楼閣】も同時に配られた。





 じゃあ、残された汎用スキルの【魚尾砲撃】は……?

 

 俺の考えに対しての答えを出すように紫色のオーラによって爆発して舞い上がった砂埃の中から何かが出てきた。


 絡みつくような粘液を地面に滴しながら、這いずるように迫り来るそれは俺にとってよーく見覚えのあるものだった。





 【Raid Battle!】




  

 【荒れ狂う魚尾砲(廻)】





 【レイドバトルを開始します】



 くっ、やっぱり出てきたかジェーライト!

 いや、長いしジェーでいいや。


 俺の目の前に現れたのは紫色のゴムのような質感を持った鱗で全身を覆われている巨大なウナギのようなレイドボスだ。

 俺に因縁のあったレイドボスは、なにも兎レイドボスのミューンだけじゃなかったってわけだ。

 本当は白虎形態のミューンが出てくるかな、とか思っていたが予想が外れてしまったようだ。


 だが、このウナギレイドボスのジェーも同時に相手していたからな……

 あの時のことは今でも昨日のように覚えているぞ!!


 お前の極太レーザーに何度もやられたからな!

 というか、なんならミューンの攻撃よりもジェー由来の攻撃にやられた回数の方が多い!


 でも、今回はジェー単体での顕現だ。

 同時行動がない分、案外やり易いかもしれないぞ?

 というわけでファイトだ、【バットシーフ】後輩!


 「先輩、自分が戦うわけじゃないからっていい加減なフリ方するのやめて欲しいッスよ……

 レイドボス二連戦なんて無茶にも程があるッス!?」


 俺の後輩は嘆いているが、そう悲観したものじゃない。

 多分だが、まだゾンビアタックはできると思うし、お前たちは新たなスキルを2つも手にいれたんだ!

 いけるいける!


 俺は雑に根拠を上げてモチベーションをあげてやる。

……実際には今手にいれたスキルは両方とも攻撃に使えないから、今回ほぼ役に立たないスキルだ……ということは伏せておいた。


 爆発を生き残った初心者プレイヤーたちの大半はポカンとしていたが、その側にいるマスコット化した先輩プレイヤーたちが指示をし再起動した。

 さっそく、突撃をしていく輩もいたが、ジェーの突撃によってあっさり闇に葬られたようだ。

 ウナギのような形状のジェーだが、身体をバネのように伸縮させることによって直線的ではあるがスピードと破壊力のある動きをしてきている。

 

 この動き方は2体のレイドボスが合体していたときにもしていた。

 だからこそ、直線的にしか動けないことも知っているし、予備動作が大きく分かりやすいから注意して見ていれば案外回避が容易だってことも知ってる。

 というわけで、後輩!

 その辺注意しておけ!


 「流石トッププレイヤーって呼ばれているだけあるッスね!

 先輩、こういうときは頼りになるッス!」


 最後のストックスロットにも入れてあった【天元顕現権限】を起動して天子の羽を維持しているからか、攻撃を一回もしていないのにも関わらずヘイトが【バットシーフ】後輩に集まっているので注意しておいた。


 深淵種族と天子は敵対関係にあるからなぁ……

 

 「うわっ、こいつ粘液飛ばしてきたッスよ!

 汚いッス!」


 ジェーは身体を思いっきり旋回させると、全身から垂らしている粘液を上空にいる【バットシーフ】後輩に向かって飛ばしてきた。


 この攻撃方法ははじめて見たな!?

 合体してからはミューンとの兼ね合いで使えなくなった攻撃方法なんだろう。


 粘液をもろに浴びてしまった【バットシーフ】後輩は急激にスピードが低下したみたいだ。

 辛うじて飛べてはいるが、かなりの低スピードなので格好の的になってしまっている。


 こうなると、かなり不味いぞ!?


 【#ЖЖ####【Ж】!!!】


 そして、やはりと言ったところか。

 ジェーの顔のカットインが演出として流れはじめた。

 これはレイドボスの必殺技が出る予兆……つまり……



 ジェーは口を大きく開けて、体内からエネルギーを爆発させてレーザーのように上空へ放った。

 紫色のオーラがバチバチと弾けとびながら宙へと向かう、その極太レーザー……【魚尾砲撃】はイルミネーションを見ているかのような錯覚をさせるほど綺麗なものだった。


 だが、そんな綺麗なものは俺たちの方に向かってきている。


 「うわぁぁぁぁぁ!?」


 力の奔流に呑み込まれた【バットシーフ】後輩と俺は呆気なく死に戻りすることとなった……


 やっぱり【釣竿剣士】がいないと極太レーザーの対処は厳しいぞ……









 歴史は繰り返したり、繰り返さなかったりする……


 【Bottom Down-Online Now loading……】



 

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― 新着の感想 ―
[良い点] 先にジェーのスキル渡さなかったところに 自爆特攻をさせないという運営の意思を感じる [気になる点] これは釣竿剣士のクランの新メンバーなら出来るかな 流石に無理か [一言] 前は基本ジェー…
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