2048話 双真ナル
【Raid Battle!】
【包丁戦士】
【包丁を冠する君主】
【深淵域の管理者】
【『sin』暴食大罪を司る悪魔】
【メイン】ー【深淵天子】【深淵使徒】【プレイヤー】【会者定離】
【サブ1】ー【次元天子】【ボーダー(妖怪)】【上位権限】
【サブ2】ー【暴食大罪魔】【デザイア】
【聖獣を担うが故に】
【深淵へ誘い】
【聖邪の境界を流転させる】
【責務放棄により】
【境界を見守り】
【管理することを強いられる】
【会うは別れの始め】
【合わせ物は離れ物】
【産声は死の始まり】
【この世の栄誉は去ってゆく】
【故に永遠なるものなど存在しない】
【瞳に宿る狂気に溺れたままいられることを祈るのみ】
【ああ……この世は無情である】
【ワールドアナウンス】
【【包丁戦士】がレイドボスとして顕現しました】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も元気にログイン!
昨日は【翡翠溝海域メェイド】のレイドボス【翠玉海溝の深穴子】……【サーツイ=ヘテロコンガー】が倒されたというワールドアナウンスが流れていたな。
【双真ナル】というプレイヤーが特に活躍していたようで、エリア名称やレイドボスの名前を一気に明かして勝利に導いていたな。
とはいえ単独の攻略ではなくクラン【リップカレント】と共同で討伐したみたいなので、あらかじめ何かしらの根回しはしていたんだろうな?
というわけでやって来ました海エリア!
ここでクラン【リップカレント】のリーダーである【海図航海士】を通じてコンタクトを取ってもらったのでさっそく【双真ナル】に会えることになっている。
昨日のワールドアナウンスを聞いてからすぐにその約束を取りつけにいったからわりと融通が利いてくれたな!
「おおっ、本物の【包丁戦士】だ!
一度会ってみたかったから、そっちから声をかけてくれて助かったかな」
俺に声をかけてきたのはやはり見覚えの無い姿のプレイヤーだった。
見た目は女性のようだが……
腰には二本の剣が提げられていることからチュートリアル武器は多分だが双剣だろう。
おそらくこいつが……
「そう、私が【双真ナル】!
うちのおじいちゃんがお世話になったようだから挨拶したいと思っていたんだよ」
うちのおじいちゃん……?
誰のことを言ってるんだ?
特に心当たりは無いんだが……
「いや、分からないなら気にしなくていいよ。
分かる人だけ分かればそれでいいからね!
それにしても知ってはいたけれど、こうやって目の当たりにしてみると君は本当に幼い女の子のような容姿のアバターなんだね。
それがプレイヤーキラーだなんて物騒すぎる!」
何か馴れ馴れしい……というよりは別の視点から俺を見て接してきているような違和感を覚えるが、内容自体はよく聞くような俺に対する感想なので深くは触れないでおこう。
ただ、アバターがただの女性のものにしては違和感がある。
男性的要素を兼ね備えている気配がするんだよなぁ?
「あぁ、このアバターは両性具有になっているんだよ。
この次元のレイドボス【カイ=フジン】も同じだから、プレイヤーのアバターでもあってもおかしくはないよね?」
変な気配の原因はそれか!
それなら納得だ。
……それよりも、お前が本当に【双真ナル】でいいんだよな?
それなら【翡翠溝海域メェイド】のレイドボス【翠玉海溝の深穴子】……【サーツイ=ヘテロコンガー】を倒したんだろ?
どうやって倒したのか気になるな、よかったら教えてくれよ。
俺がそう要望を出すと少しだけ考えるそぶりを見せた後、口を開いて返答をしてくれた。
「あの【包丁戦士】が聞きたがっているなら答えてあげよう。
今の私は水棲の生き物に対して優位を取りやすいんだ。
だから海エリアにいるレイドボスの討伐にはそこまで苦労しなかったわけ」
少しはぐらかされているような気もするが、とにかく海エリアでの攻略に特効があるプレイヤーということか。
初対面で無理に手の内を明かしてくれるとは思ってないので、それだけ教えてくれたなら今回はそれで満足しておくことにしよう。
「しばらくはここにいる予定だから、気が向いたら会いに来てよ。
私からも会いに行かせてもらうだろうからお互い様になるかもだけど」
まぁ、海エリアをこれまでより進められるようなプレイヤーがここにいてくれるなら助かるな。
多少は進んでいたが、それでも最終目標の深海種族の【上位権限】レイドボスの【カニタマ】を倒すためにはまだまだ乗り越えないといけないからな!
「そこまで協力できるかは分からないけれど、今のところ【包丁戦士】の敵ではないつもりだから可能な範囲で協力はさせてもらうよ」
【双真ナル】はそう言いながら直立で海に沈んでいってしまった……
えぇ……
突然の奇行カニ!
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】