2045話 正気かオミクロン
【Raid Battle!】
【包丁戦士】
【包丁を冠する君主】
【深淵域の管理者】
【『sin』暴食大罪を司る悪魔】
【メイン】ー【深淵天子】【深淵使徒】【プレイヤー】【会者定離】
【サブ1】ー【次元天子】【ボーダー(妖怪)】【上位権限】
【サブ2】ー【暴食大罪魔】【デザイア】
【聖獣を担うが故に】
【深淵へ誘い】
【聖邪の境界を流転させる】
【責務放棄により】
【境界を見守り】
【管理することを強いられる】
【会うは別れの始め】
【合わせ物は離れ物】
【産声は死の始まり】
【この世の栄誉は去ってゆく】
【故に永遠なるものなど存在しない】
【瞳に宿る狂気に溺れたままいられることを祈るのみ】
【ああ……この世は無情である】
【ワールドアナウンス】
【【包丁戦士】がレイドボスとして顕現しました】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も元気にログイン!
昨日は【オミクロン】を【カニタマ】と【槌鍛冶士】のコンビネーションで正気を取り戻させて、さらに地脈による呪縛から解放していたな。
どちらかだけだと正気を失った【オミクロン】が堅牢剣山ソイングレストを暴れまわるようになっていたり、逆に正気を取り戻したのに小部屋から出られないという再び狂気に取り憑かれそうな状況になっていただろう。
それはどっちでも地獄みたいなものだから、コンビネーションあってこその最善の状況ってわけだ!
というわけでやって来ました岩山エリア……堅牢剣山ソイングレスト!
俺はさっそく地脈の縛りから解放された【オミクロン】に会いに来たわけだな!
「自由に動き回れるって最高だ!
きーっ、感動的っ!」
【オミクロン】は俺と出会うなり感動していた。
解放された時から思っていたが、随分と感情的だよな……
正気を失わされて復活して、小部屋に閉じ込め続けられていたとかんがえたら分からなくもないんだが、それでも他のレイドボスたちよりも涙腺が弱いようにも思える。
多分だが、元々そういう性格なんだろうなぁ……
「次元天子様がいつの間にか代替わりしてたのは驚いたが、こうやって助けてくれたからにはその恩に報いるつもりだ!
きーっ、奉公的!」
やっぱり俺が次元天子ということはきちんと認識してくれているんだな。
レイドアナウンスも俺がログインする度に毎回流れているし、種族欄にもきちんと明記されているからということもあるんだろうが、【オミクロン】の場合は俺の次元天子の力を直に感じ取ったのだろうよ。
聖獣たちは俺が次元天子になってからは会えばすぐに分かってくれるからなぁ……
だが、お前は俺の……次元天子の眷属の聖獣であるのと同時に【熱狂剣山の地霊鉱爵】の眷属の鉱人種族でもあるだろ?
どっちの比重が大きいんだ?
「おれは今地主の【熱狂剣山の地霊鉱爵】様の影響の方が強いぞ!
顕現の時に身体を再構築する力として使われた地脈がおれを支配してる。
きーっ、複雑!」
感情としては複雑なんだな。
てっきり【熱狂剣山の地霊鉱爵】に心身共に傾倒していてもおかしくないと思ってたぞ。
だが、俺のことを次元天子様と呼んでいたからもしかして違うのかなと思って聞いてみたが案の定だったな。
力で押さえつけられている感じか。
「うーん、そういうのでもないな!
本能的に次元天子様と【熱狂剣山の地霊鉱爵】様が対立した時には【熱狂剣山の地霊鉱爵】様側につかないといけないようになってるぞ!
きーっ、不思議!」
あー、機戒種族と深淵種族が陣営対戦をした時に深淵種族に関わりの深いプレイヤーは強制的に深淵種族側で参戦しないといけなかったからそれと似たようなものか。
プレイヤーの選択肢は潰されてたし、システムにより密接しているレイドボスの【オミクロン】ならその影響力からは逃れられないだろうな。
「でもそのお陰で顕現してからは鉱人種族の力も使えるようになったから、ここで過ごす分には便利だ!
きーっ、感謝!」
まぁ、鉱山の中で過ごしているならそうだろうな。
周りの地形からしてもそれを利用しながら過ごせるなら快適には違いないはずだ。
掘削作業もそうだし、戦闘力もこの中にいれば大幅に上昇しているだろ?
ここで俺が【熱狂剣山の地霊鉱爵】と戦った時も【熱狂剣山の地霊鉱爵】に地の利がありすぎて勝負にすらならなかったし。
土地を利用しながら行動するなら鉱人種族として行動するのも悪くないだろうな……
こら、止めなさい!
私の配下の聖獣としての自負をしっかり持つのですよ!
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】