2034話 陣形変更!
【Raid Battle!】
【包丁戦士】
【包丁を冠する君主】
【深淵域の管理者】
【『sin』暴食大罪を司る悪魔】
【メイン】ー【深淵天子】【深淵使徒】【プレイヤー】【会者定離】
【サブ1】ー【次元天子】【ボーダー(妖怪)】【上位権限】
【サブ2】ー【暴食大罪魔】【デザイア】
【聖獣を担うが故に】
【深淵へ誘い】
【聖邪の境界を流転させる】
【責務放棄により】
【境界を見守り】
【管理することを強いられる】
【会うは別れの始め】
【合わせ物は離れ物】
【産声は死の始まり】
【この世の栄誉は去ってゆく】
【故に永遠なるものなど存在しない】
【瞳に宿る狂気に溺れたままいられることを祈るのみ】
【ああ……この世は無情である】
【ワールドアナウンス】
【【包丁戦士】がレイドボスとして顕現しました】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も元気にログイン!
昨日は【キズマイナ】と【マキ】で骸骨兵同士の集団戦闘をしていたな。
【マキ】も【ロイス=キャメル】から学んだ陣形を使うなどして進歩はしていたが、細かい運用方法まで熟知していたわけではないので結果的にはやはり負けてしまっていた。
だが、確実に集団戦闘の経験値は積めているし、訓練で勝つことそのものが目的じゃないから今のところは順調ってことだな!
というわけでやってきました沼地エリア……無限湖沼ルルラシア!
ここで【マキ】が特訓しているようなので来てみたわけなのだが、これまた面白い絵面になっているようだ。
「では【マキ】君、その軍勢で私の軍を打倒してみるといい」
「うん!
やるよ~!」
【ロイス=キャメル】がそう言っているが、【ロイス=キャメル】のところにいるのは【キズマイナ】から貸与された骸骨兵たちだ。
数は……20体くらいか?
それに対して【マキ】側にいるのはプレイヤーの軍勢50人だ。
これまで【マキ】と対戦相手側で同じくらいの人数での対戦で特訓をしていたようだが、急に毛色が変わったな。
それに【マキ】側だけプレイヤーで【ロイス=キャメル】側だけ骸骨兵なのは何でなんだ?
「おやお嬢さん、今日もご機嫌麗しいようで何よりだ。
まずは【マキ】君に圧倒的に有利な状況で戦わせてみようという話になってね。
【マキ】君がどこまで有利なら勝てるのかという指揮能力の測定も兼ねているわけだよ」
なるほどな。
地力の高いプレイヤー、数の優位というお膳立てがあれば【マキ】でも【ロイス=キャメル】に勝てるのかっていう実験なわけか。
「しかも私がお嬢さんと話しながらというハンデまでさらに追加されたわけだ」
そこは意図してなかったんだな?
邪魔そうなら離れておくが……
「いやいい。
見たところこれくらいのハンデを追加した方がちょうどいいようだ」
【ロイス=キャメル】の言うように戦いの場を見てみると俺と【ロイス=キャメル】が喋っている間は互角に近づくようだ。
そして会話の切れ目で【ロイス=キャメル】が指示を出し直すと【ロイス=キャメル】側がさらに押し出していく展開だ。
つまり、恒常的には【マキ】がここまで優位な状況でも負け越しかけているってわけだな!
「ふむ、ここで鋒矢の陣に形を変えてきたか。
中々面白い一手だが……」
【ロイス=キャメル】が口にしているように【マキ】軍勢はここで形を変えてきたようだ。
鋒矢の陣は「↑」の形に兵を配する陣形で、矢印の後部に大将を配置し、そちらを後ろ側として敵に対する陣形だ。
今回の場合は【マキ】が大将の立ち位置ではあるのだが、【マキ】は戦わないという縛りで指揮をしているので大将が本来いる場所には別のプレイヤーが陣取っている。
「状況に応じて陣形を変更するという思考になったのは望ましいことだが、最善の選択を出来ているのかと言われるとまだまだか。
ベターではあるのだが、ベストではない」
いわゆる無難な選択までは出来るようになったってことだな。
だが、無難なままではそれを上回る戦術を扱う者が相手なら読まれてしまうし、勝ちを拾うのは難しいだろう。
ここに【マキ】本人が参加できたらいいのだが、その場合は相手側のエースとも戦うだろうし結局は陣形に組み込むのは難しいってことだな!
そうしてしばらく見守っていると……
「あ~、負けちゃったよ~!
これだけ有利だったのに負けちゃうのは悔しいよ~」
「まだまだ精進あるのみだな。
だが確実に成長は感じられるから気を落とす必要はない」
そう言って【ロイス=キャメル】は【マキ】を労っていた。
この短期間でも陣形を使い分けし始めているのはロリなのによくやるものだと俺も思うぞ!
成長があるのはいいことですね。
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】