2032話 骨折り損のくびったけ
【Raid Battle!】
【包丁戦士】
【包丁を冠する君主】
【深淵域の管理者】
【『sin』暴食大罪を司る悪魔】
【メイン】ー【深淵天子】【深淵使徒】【プレイヤー】【会者定離】
【サブ1】ー【次元天子】【ボーダー(妖怪)】【上位権限】
【サブ2】ー【暴食大罪魔】【デザイア】
【聖獣を担うが故に】
【深淵へ誘い】
【聖邪の境界を流転させる】
【責務放棄により】
【境界を見守り】
【管理することを強いられる】
【会うは別れの始め】
【合わせ物は離れ物】
【産声は死の始まり】
【この世の栄誉は去ってゆく】
【故に永遠なるものなど存在しない】
【瞳に宿る狂気に溺れたままいられることを祈るのみ】
【ああ……この世は無情である】
【ワールドアナウンス】
【【包丁戦士】がレイドボスとして顕現しました】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も元気にログイン!
昨日は【プロペラ遊人】と話していたな。
ガーデンバトルでの【極楽ジゴク】との戦いで【短剣探険者】と共闘出来なかったことを残念そうにしていたり、ダメージを中々与えられなかったことを悔しがっていたな。
そこでちょっとアドバイスしてやったら元気になったので話しにいった甲斐があるというものだ。
というわけでやってきました沼地エリア……無限湖沼ルルラシア!
ここで【マキ】と【ロイス=キャメル】が集団戦闘の特訓をしているというのを聞いたので駆けつけたわけだ。
ここにいるメンバーはMVPプレイヤーを除くとそれぞれの次元のモブプレイヤーたちだな。
2つ名持ちプレイヤーによるワンマンプレーを避けるためだろう、じゃないと集団戦闘の基礎を学ぶ妨げになるだろうし仕方ないことだ。
「【マキ】君は自分で動かずに周りのプレイヤーを動かして運用する立ち回りを覚えた方がいい。
そのために、実力が近そうなプレイヤーだけで集まってもらった。
まずは私の指揮する集団に対して、【マキ】君が指揮する集団で戦ってみようか」
「難しそうだけど頑張るよ~!」
そんなわけで始まった【マキ】軍団VS【ロイス=キャメル】軍団の戦い。
MVPプレイヤー本人たちは参戦せずに指示を出すだけという縛りがあるのは中々面白い特訓方法だ。
考えたな、【ロイス=キャメル】……
「え~い、みんな突撃だよ~!」
【マキ】が出した指示は突撃だった。
まっすぐに固まって突撃するという戦術は愚直ではあるが、そこまで悪い手ではない。
変に戦力を散らすよりは連携が取れるからな!
それに対して【ロイス=キャメル】が出した指示は……
「鶴翼の陣だ。
総員、配置につくのだ!」
鶴翼の陣をモブプレイヤーたちに指示していた。
鶴が翼を広げたような形に兵を並べる陣形で、敵を包囲して戦う戦法で、兵力差が大きい場合に用いられるんだが今回は兵力が互角のはずだ。
それなのに優位な時に使う陣形を使った意図はいったい……?
「今だ、回り込むのだ!」
すると翼の先端の位置にいたプレイヤーたちが突撃している最中だった【マキ】集団の後ろに回り込み、そこから追撃するような形で【マキ】集団を後ろから崩し始めた。
戦力のほとんどが前方向への進行を止められず次々に撃破されていってしまう【マキ】集団。
「えぇ~!?
なんでなんで~!?」
指揮系統の頂点である【マキ】が混乱しているのもあって、【マキ】集団全体も混乱したままボロボロと崩壊していってそのまま全滅することになってしまった。
「……これは思った以上に骨が折れそうな教育だ」
(骨って今言いました!?)
【ロイス=キャメル】が頭を抱えて先が思いやられている様子と、謎に【キズマイナ】が骨というワードに反応して思念を飛ばしてくるというカオスの状況になった。
ここで【キズマイナ】が混ざってもただ意味がないだけ……?
いや、待てよ?
【キズマイナ】も骸骨兵を使って戦闘をしているよな?
それこそ【骨笛ネクロマンサー】時代から!
それならはじめは【ロイス=キャメル】が【マキ】側について手取り足取り教えながら、敵役として【キズマイナ】の骸骨兵が相手になってくれたらちょうどいいんじゃないのか?
骸骨兵は基本的にはスキルも使えないんだし、数さえ調整すれば初級編にはちょうどいいだろう。
「ふむ、【マキ】君にはそれくらいがちょうどいいのかもしれないか。
お嬢さんの伝手で対戦相手が見繕えるなら私の負担も少し減るからありがたいことだ」
それならよかった。
俺の思いつきだが、これはまたうまく行きそうな気がしてきたぞ!
ふひひっ、何だか変なところで首を突っ込んでしまった気がしますよぉぉ……
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】