2031話 プロペラのカイコロク
【Raid Battle!】
【包丁戦士】
【包丁を冠する君主】
【深淵域の管理者】
【『sin』暴食大罪を司る悪魔】
【メイン】ー【深淵天子】【深淵使徒】【プレイヤー】【会者定離】
【サブ1】ー【次元天子】【ボーダー(妖怪)】【上位権限】
【サブ2】ー【暴食大罪魔】【デザイア】
【聖獣を担うが故に】
【深淵へ誘い】
【聖邪の境界を流転させる】
【責務放棄により】
【境界を見守り】
【管理することを強いられる】
【会うは別れの始め】
【合わせ物は離れ物】
【産声は死の始まり】
【この世の栄誉は去ってゆく】
【故に永遠なるものなど存在しない】
【瞳に宿る狂気に溺れたままいられることを祈るのみ】
【ああ……この世は無情である】
【ワールドアナウンス】
【【包丁戦士】がレイドボスとして顕現しました】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も元気にログイン!
昨日は【短剣探険者】とガーデンバトル中の出来事について話していたな。
【短剣探険者】はフンコロガシを倒していたようだが、そこにステッキ次元のプレイヤーも参戦していたという全く知らなかった情報が入ってきたから話してみてよかった。
【ロイス=キャメル】と話すときに話が噛み合わないことが発生する可能性がこれで防げたというわけだ。
どこから情報が転がってくるのか分からないのもVRMMOならではの面白さであり、難しさだよな……って思った。
というわけでやってきました海エリア!
ここで【プロペラ遊人】と船の上でゆっくりと誰にも邪魔されず話をすることにした。
……まぁ、【プロペラ遊人】は喋れないからフリップボードで文字を俺に見せる形式での会話になるからゆっくりとした場所で対話するのがベストと判断したわけだな!
『あの【極楽ジゴク】との戦い……楽しかった』
へぇ、意外にも【プロペラ遊人】はあの戦いを楽しんでいたんだな。
声色を窺えないので表情でしか判断できなかったが、苦戦していたこともあり苦しい表情も浮かべていたからなぁ……
どういう心情で戦っていたのか俺には分からなかった。
それが今直接【プロペラ遊人】から聞けたことで、少し安心したところもあるな。
無口なので機械的に戦っているんじゃないかと懸念していたからだ。
だが、それが払拭されてむしろ楽しんでいたことが俺としてはありがたい。
『そうなの……?
あの【極楽ジゴク】は強かったから、どうやって倒すのか考えながら戦うのが……楽しかった。
【包丁戦士】さんも凄い動きばかりしてて……見ていて面白かった』
そんなに俺は凄い動きだったか?
特に変わった動きはしてないし、前に【プロペラ遊人】と戦っていた時も同じことをしていた気がするぞ?
『敵として見るのと、味方として見るのでは見え方が違う。
……特にこっちが動こうとしていることを察知して先回りしてくれてたから、凄く動きやすかった』
ふーん、そういうものか。
俺の動きの感想は俺だけが分からないから客観的な意見は何回聞いても新鮮に聞こえるぞ!
でもそれを言うなら【プロペラ遊人】の動きも良かったぞ!
無言のスキル詠唱を活かしたスキル有無の幻惑とか、【濁流万花】の巨大花びら回転でのドリルとの激突シーンは隣で見ていても圧巻だったからなぁ……!
あれだけの動きが出来るやつは中々いないぞ!
『本当は【短剣探険者】さんとも一緒に【極楽ジゴク】と戦えていたらもっと『面白い』戦いになってたと思う。
……だから、少しだけ残念』
【短剣探険者】と共闘したかったのか……
あれだけコンビネーションの可能性について考えていたからなぁ。
かなりいいコンビになり得たかもしれないが、そのコンビネーションが発揮される機会が少なかったのが今回心残りなのだろうよ。
『それに【極楽ジゴク】のアリジゴク姿の時にあまりダメージを与えられなかったのが……悔しい。
もっと力があれば……活躍出来てたのに』
そこは普段のプレイが影響しているだろうな。
特に【プロペラ遊人】は他のゲームも兼任して遊んでいるだろうから、どうしても手札やアバターの強化面で遅れが出てしまう。
それは仕方ないことだ。
『……でもっ!』
そう、でもここからその部分を変えることは出来る!
それこそ、今クラン【リップカレント】は海エリアの攻略をしているだろ?
そこをきっちりと詰め切れたら新たな手札やアバターの強化にも繋がるかもしれないな!
『……ありがとう、【包丁戦士】さん。
頑張ってみる』
【プロペラ遊人】のやる気に満ち溢れた文字を見て俺はつられて微笑んでしまったのだった。
悪魔の微笑みですか……
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】