2021話 アンソニーの手札
それで、蛇腹剣次元のプレイヤーたちは今どこで戦闘を繰り広げているんだ?
方角はあらかじめ決めていた方向から大きくずれていないとは思っているが距離感が分からないからな……
「そういやそうだな。
距離は聞いてない!
でも、オアシスみたいなところで戦ってるってことだけは聞いたぜ?」
オアシスみたいなところか。
砂漠なら充分にあり得る場所だが、そんなところで戦ってるのか。
オアシスといえば休息地の代名詞みたいなものだろうに。
そこで戦いが繰り広げられているのは皮肉なものだな……
そしてしばらく歩いていくと水辺が見えてきた。
そこでは敵味方入り乱れた激戦が繰り広げられており、全身透明な鉱石ゴーレムのようなモンスターや、巨大なサーモンみたいなモンスターまでいた。
……なるほど、魚系のモンスターの姿のプレイヤーがいるからオアシスをわざわざこの戦場に作っていたのか!
そういえば今回の相手の天昇箱庭の構成は土遁科&金鉱科&水流科だったな。
土遁科は俺が制したから残りが金鉱科&水流科と考えるならゴーレムは金鉱科、巨大なサーモンは水流科所属っぽい気がする。
いや、見た目に惑わされて痛い目を見ても嫌だからあくまでも参考程度に考えた方がよさそうだが……
「あれだけ色々なモンスターがいると魔境としか言いようがない気がするな!
狂人なら喜んで戦いに行くんだろうが、俺は正直勘弁したいぜ」
いやいや、俺だって別にあの乱戦に好んで混ざりたいとは思ってないぞ!?
万全な状態ならともかく、さっきまで俺も激戦を繰り広げていてかなり疲弊しているからな……
「狂人でもそういうのあるんだな、ちょっと安心した気がするな。
どんな状況でも戦いに行くもんだと思ってたし」
それは酷い偏見だなぁ!
俺だって疲れたりして戦いたくない時はあるし、そもそも戦闘狂ってわけじゃないから戦いそのものを避けたりする時もザラにあるぞ!
狂人と一言で言われることが多いから誤解されがちだが、俺がやりたいのは戦闘というよりプレイヤーキルだからな……
そこの違いが上手く伝わらないことが多いぞ。
「でも、今はそれでも行くんだろ?」
そうだな。
この大舞台でしかも味方が負けそうなら加勢するしかない。
俺がMVPプレイヤーじゃなかったら逃げるという選択肢もあるだろうが、代表者が逃げてしまうのは今後の戦いにも支障が出てしまうしやむを得ないだろう。
そう言って戦場を見てみると、【マキ】は既にここにはいないようだな。
どこか別のところで戦っているのか、あるいは死に戻りしてしまっているのかは分からないがここでは頼りに出来ないのは変わらない。
そして、代わりにいる実力者はステッキ次元の【シャルル=ホルムズ】と蛇腹剣次元の【アンソニー】か。
【シャルル=ホルムズ】は多数相手に牽制しながら時間稼ぎをしているようで、しかも遠方にいるのでここから助けにいくのはしんどい。
それに優先度が高そうなのは【アンソニー】の方だ。
明らかにセクションリーダーですよ感を出している周りより五倍以上大きな体躯のクジラがオアシスの中央で【アンソニー】と対峙しているからな。
【マキ】がいるならともかく、【アンソニー】一人で相手するには流石にしんどいだろう。
「【包丁戦士】が来てくれて助かったyo!
【マキ】が死に戻りしてから負けそうでヤバかったyo!」
そういう【アンソニー】の周りにはスキップのマークが書かれたUNOのカードが複数浮いていた。
……これは【マキ】が言っていた『面白い』【修練武器上位解放】か?
「そうだyo!
この【修練武器上位解放】ー【命運産載札】はUNOに書かれたマークに応じた効果を発揮出来るんだyo!」
説明を聞いている最中に飛んできた水流攻撃が【アンソニー】に直撃しそうになると、それが【アンソニー】を通り抜けて後ろへそのまま流れていってしまった。
手番を飛ばすスキップカードを再現した効果ってそういうことか。
だが、その代償なのかさっきまで浮いていたカードのうち一枚が消えてしまった。
「【マキ】がいれば防御を【マキ】に任せていて、使うことが無かったスキップカードばかり残ってるから少しだけならタンクみたいな役割が出来るyo!」
他にもカードはあるようだが、浮いているカードはほとんどスキップばかりになっているのでそれは本当なのだろう。
そりゃ無敵になれる【マキ】がタンクとして守り続けてくれていたならスキップカードは不要だよな……
それはそれとして、【アンソニー】の発言からして【マキ】はもう死に戻りしたんだろうな。
遊戯系チュートリアル武器ですね。
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】