2020話 戦場の絆
天昇箱庭側のプレイヤーである【極楽ジゴク】を打倒した俺たちだったが、まだガーデンバトルの終了が告げられていないので【極楽ジゴク】はリーダーではなかったのだろう。
まぁ、それでも重要プレイヤーだったのは間違いないので倒せて良かった。
単体で戦ってこうだったんだから、天昇箱庭側のセクションリーダーが纏まって襲ってきたことを考えたら目も当てられない状況になってたはずだ。
それを防げたことに意味があるだろう。
ここにはもう用事はないし、【プロペラ遊人】そろそろ他の連中を助けに行くぞ!
そう声をかけたのだが返答がない。
おかしいと思い【プロペラ遊人】の方を見てみると身体が穴空きになっており、全身から光の粒子が漏れ出ている最中だった。
『最後に……砂の散弾を……撃たれて……いた。
防げなかった……』
なにっ、俺が気づかない間に【極楽ジゴク】は攻撃を仕掛けてきていたのか!?
もしかして【プロペラ遊人】は俺も庇ってダメージを引き受けてくれたのか?
そう俺が問いかけると、【プロペラ遊人】は無言で頷くとそのまま死に戻りしていってしまったようだ……
こいつ、最後までいい仕事をしてくれたな……
【プロペラ遊人】の死に際を見送ってから俺は来たミチを歩いて戻っていっているわけだが、そこにはあちこちがボコボコになった跡だけが残っており底下箱庭側のプレイヤーも天昇箱庭側のプレイヤーも誰もいない。
相互に押し合うような激しい戦いだったのだろうよ。
ここにはゲジゲジみたいなやつやフンコロガシみたいなやつがいて、【短剣探険者】とモブプレイヤーたちが共闘して戦っていたはずなのだが気配も感じられないので戦いの場が移ったのか、或いは共に全滅したんだろう。
地面も砂を利用した跡が多くあり歩きにくくなっているが、進路を塞ぐほどではないので多少足場に気をつけたら問題ないレベルだな。
そして外に出てみても同じように底下箱庭側のプレイヤーも天昇箱庭側のプレイヤーも誰もいない。
外に戦場を移したという線もこれで消えたな。
あと、囮になってくれていた逃げ足が速い連中の気配もしないのでこれは包丁次元のプレイヤーは俺しか残ってないな!?
……と思っていたが、1人だけ気配がするな。
こいつは……
「うおっ、【包丁戦士】が出てきた!
誰もいないから全滅してたと思ったぜ」
そう、こいつは棍棒を持った伝令役のモブプレイヤーだ。
お前は戦場の最前線から離れていたから無事だったわけだな。
俺は天昇箱庭側のMVPプレイヤー枠みたいなやつを1人倒してきたぞ!
……俺以外全滅したが。
「それで【包丁戦士】が残ってんなら上等じゃね?
こっちの最大戦力のうち1人を残して他に迎えるし……ってそうだった!
早く援護に来てほしいって言われてるんだった」
援護に来てほしい……?
ってことは包丁次元以外のところでも本格的に戦闘が始まっているわけか。
天昇箱庭側はやっぱり別々の方向にそれぞれ拠点を作っていたな。
そこは読み通りだったが、さて俺はどこに援軍として向かえばいいんだ?
「蛇腹剣次元のところだ。
って言ってももう蛇腹剣次元のプレイヤーは全滅してる頃だと思うけど。
伝令の時点で死屍累々だったみたいだぜ?」
つまり、包丁次元の今の状況に近い感じになってたわけか。
ちなみにステッキ次元の方はどうなんだ?
「そっちは【ロイス=キャメル】と天昇箱庭側のセクションリーダーの一人がずっと対話問答をしてるっぽい。
武力じゃなくて持論を投げかけあってるみたいで、そこにいたお互いの他戦力は全部蛇腹剣次元のいるところに投入されて総力戦になってるって聞いたな」
なんか面白いことになってるな!?
【ロイス=キャメル】は戦わずに天昇箱庭側のセクションリーダーを一人足止めしてるって考えた方がよさそうだ。
何をそう盛り上がっているのか知らないが、ずっとそのまま引きつけ続けてくれていたらこのままそいつは死蔵した戦力扱いにできる。
プレイヤーの数としては一対一だが、天昇箱庭側のプレイヤーの方が一人に費やされているリソース量が多いことを考えると【ロイス=キャメル】一人で足止めしているというのは底下箱庭側が有利な条件ってことだ。
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】