2018話 忍耐の美徳2
【【土遁科忍耐蜉蝣】となったわたくしは先ほどまでと同じと思わない方がいい。
もはや別のプレイヤーと思うべき。
【美徳ー忍耐の解放】……それと【土遁ー泥豪の術】】
【極楽ジゴク】は今解放されたばかりの美徳【生樹技能】とこれまで使ってきていた土遁【生樹技能】を組み合わせて俺たちを攻撃してきた。
「い、威力もスピードも泥弾の大きさも全部強くなっている!?」
「ぐわぁっ!?」
「し、しぬぅ……」
さっきまでの要領で回避したり防御しようとしていたモブプレイヤーたちが次々にやられていってしまっている。
【美徳ー忍耐の解放】によって強化された幅がそれほど大きいということなのだろう。
『それだけじゃない……かも。
真上から狙ってきてるから……当たりやすい』
そう、カゲロウになり飛行能力を手に入れた【極楽ジゴク】は上空から泥弾を放ってきているのだ。
真横からの攻撃だけ警戒していれば良かったさっきまでと違い、重力、引力によるスピードの上昇もあってか勢いが増しているし、向こう側からの攻撃の角度も少しずつ変えてきているからな……
これを見越したさっきまでの堅実な戦術だったわけか!
してやられたな!?
【アリジゴクとカゲロウ……2つのスタイルをスイッチしながら戦うのが今のわたくしの強み。
攻撃的に、活動的に動けるカゲロウの姿で稼いだ時間分決めさせてもらう】
稼いだ時間分……?
違和感のある発言だが、どちらにしてもここからは速攻で俺たちを倒すことに注力してくるようだ。
とはいえ、ここに残っているのはもう俺と【プロペラ遊人】しかいない。
この二人でどう戦うかだが……
『……!』
そう考えている間にも【プロペラ遊人】はプロペラを投擲して【極楽ジゴク】を狙い撃っていった。
今投げたプロペラには狐火が宿っており、回転するプロペラから炎が撒き散らされていっている。
あれはおそらく【一尾狐矢】だな。
プロペラに宿した呪符から放っているのもあり、至近距離で【極楽ジゴク】へとヒットしていった。
【くっ、流石にこの姿の時に攻撃を受けてしまうとしんどいか。
わたくしの忍耐がどこまで持つか……】
ほう、今ダメージを受けた【極楽ジゴク】の様子からして、カゲロウの姿の時はそこまで防御力が高くないらしい。
砂の装甲も剥がれているし、今なら俺の包丁も通るかもしれないな!
だが、その一方で【極楽ジゴク】からの攻撃も苛烈になっている。
一気にモブプレイヤーたちが一掃されてしまったのがその証拠だが、今も俺たちに攻撃が降り注いでいる。
【あの方のためにもここでわたくしが抑えねば……
さらにここから……【美徳ー忍耐の収束】それと【土遁ー砂地獄の術】】
【極楽ジゴク】は【美徳ー忍耐の収束】それと【土遁ー砂地獄の術】を組み合わせてきた。
さっき【土遁ー砂地獄の術】を使ってきた時には足元が流砂のようになり巻き込まれそうになったが、今回は空中で砂がドリルのように巻き込みながら回転して収束している。
同じ【生樹技能】を使うのでもここまで機能が違う使い方が出来るのか!?
スキルでも中々そういうのは無いぞ!?
『あれは……危険!』
【プロペラ遊人】も【美徳ー忍耐の収束】と【土遁ー砂地獄の術】の組み合わせの砂ドリルを警戒していた。
すぐに俺たちに向かって飛んでこないことから狙いを定めているのか、あるいはまだ力を溜めている最中なのだろう。
あれは……回転力を上げているんだな!?
【ご明察。
わたくしの必殺の一撃の一つで、すぐに攻撃せず耐え忍ぶことでその分威力を高めることが出来る!】
それなら今のうちに攻撃しておくとするか。
スキル発動!【渦炎炭鳥】!
俺は赤色の魔法陣を【極楽ジゴク】の真下に生み出すと、そこから立ち上がるようにして火柱が天を焦がしていった。
その間にいた【極楽ジゴク】には大ダメージを与えられたようで……
【直撃……か。
無防備な今の状態のわたくしをすかさず狙ってくるとは随分と抜け目が無い!
だけれども、それが仇になることもあるのをお忘れ無く】
【極楽ジゴク】の負け惜しみとも思われる言葉を聞いた直後、空中に浮かんでいた砂のドリルの回転力が一気に増してきた。
おいおい、急に何があった!?
『きっと、【極楽ジゴク】本体がダメージを受けたら強化される……』
ちっ、そういうカラクリかよ!
【忍耐】の美徳の力を行使しているのもあって、耐えるって行為だけで更なるバフがかかっていくのか。
これまた厄介な能力だな!?
相手の能力というのは厄介に見えるものですよ。
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】




