2017話 忍耐の美徳
天昇箱庭側の【土遁科】セクションリーダーである【極楽ジゴク】による【生樹技能】……【土遁ー泥豪の術】を防いでいたところだったが、【プロペラ遊人】のファインプレーで敵を混乱させることができた。
そして、呪力放出を利用したプロペラの投擲でようやく砂の装甲を通り抜けてまともなダメージを与えられたな。
【あそこまで加速されてしまえば砂の装甲も貫通されてしまうか。
ですが、わたくしの余力を奪うほどではない】
確かに【極楽ジゴク】にダメージは与えたが、泥の弾丸でこちら側が受けた被害と比べると軽微なものだった。
俺や【プロペラ遊人】でほとんど防いだとはいえ、モブプレイヤーは数人死に戻りしてしまっているからな……
あくまでもダメージをほぼ受けなかったのは俺と【プロペラ遊人】、そしてその真後ろにいた連中くらいだ。
全員無事だったというわけじゃないのが辛いところだよな。
【とはいえ、このまま少しずつわたくしのヒットポイントを削られてしまうのを黙って見続けるわけにもいかないか。
セクションリーダーの真価を今こそ発揮する時っ!】
【美徳テキスト】
【【忍耐】が世界を凌駕する時、蜉蝣は救済される】
【Wake Up!】
【極楽ジゴク】
【土遁科アリジゴク】→【土遁科忍耐先導蜉蝣】
【【忍耐】の権能により美徳進化しました】
【美徳の【生樹技能】が解放されました】
【【忍耐】レベルの上昇】
【【忍耐】時の蓄積が力へと変換されます】
【【忍耐】の権能による特殊能力が貸与されます】
【大罪への敵対反応が発生しました】
【ワールドアナウンス】
【美徳への敵対反応が発生しました】
【【包丁戦士】の称号に【『sin』暴食の目覚め】の存在を確認】
【【包丁戦士】の称号に【『sin』正義の目覚め】の存在を確認】
【罪は負の連鎖で繋がったり、断ち切られたりする……】
【包丁が血を求める】
【【包丁戦士】の称号【『sin』暴食の目覚め】が強制セットされました】
【【包丁戦士】の称号【『sin』正義の目覚め】が強制セットされました】
【【包丁戦士】の称号【『sin』暴食の渇望】が強制セットされました】
【【包丁戦士】の称号【『sin』暴食の飢忌】が強制セットされました】
【【包丁戦士】の称号【『sin』暴食狂姫】が強制セットされました】
【【包丁戦士】の称号【『sin』暴食の狂牙】が強制セットされました】
【【包丁戦士】の称号【『sin』正義の勇足】が強制セットされました】
【【包丁戦士】の称号【『sin』正義の勇鎧】が強制セットされました】
【暴食は食べ散らかしたり、味わったりする……】
【罪は上塗りしたり、消しあったりする……】
【大罪域の風が吹き荒れる】
【【包丁戦士】に暴食と正義の力が貸与されました】
【美徳テキスト】という名のアナウンスが流れた後、【極楽ジゴク】の姿が変化していき巨大なアリジゴクから巨大な蜉蝣へと進化をしていった。
そして、つられるように俺の大罪も反応して【暴食】と【正義】の権能の力が貸与されてきた。
向こう側は【忍耐】の美徳の権能を貸与されているということだが……
【なるほど。
わたくしたち天昇箱庭側は美徳の力を行使していましたが、底下箱庭側は大罪の力を行使するか。
敵対しているのに加えて、力の性質も対なものだということまでは予想外だった……!】
向こう側も俺たちが大罪の力を使うことに驚いているようだった。
美徳にも色々と種類があるのだが、【忍耐】の美徳が存在するということはその中でも大罪と対になる系統の美徳が天昇箱庭側に存在するということが予想できる。
傲慢⇔謙譲
憤怒⇔慈悲
嫉妬⇔忍耐
怠惰⇔勤勉
強欲⇔救恤
暴食⇔節制・自制
色欲⇔純潔・貞節
こんな感じでそれぞれに対するものが決まっている。
つまり、【極楽ジゴク】の対になるMVPプレイヤーは望遠鏡次元の【牛乳パフェ】ってことだな!
ちなみに俺の【暴食】と対になるのは【節制・自制】だな。
【この時点でお互いに考えていることは自分の力の対になる存在への興味でしょう。
対になっていない者との遭遇でここまでの敵対反応を見せるのなら、真逆の立ち位置として対になっている……わたくしでしたら【嫉妬】の大罪の持ち主と遭遇した時のことを想像してしまうのは当然かと】
まぁな。
俺だってすぐに脳裏によぎったからな……
だが、システムが違うこともあり大罪と美徳では権能の起動時に発生する項目もまるで異なるな。
美徳進化とかいう姿が変化するものもあるし、種族も変わってたっぽい。
一方で美徳特有の【生樹技能】も解放されていたり、特殊能力が貸与されたりするのは大罪と似たような感じだ。
対になっているだけあって重なる部分もあるんだろう……
重なったり、重ならなかったりする……
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】