2015話 役割と仕様
巨大なアリジゴクプレイヤーの【極楽ジゴク】の【生樹技能】……【土遁ー砂地獄の術】によって包丁次元のモブプレイヤーが一人葬り去られたわけだが、砂地獄に巻き込まれただけで死に戻りさせられてしまうとは……
地形妨害としても厄介なのに死に至るまでの猶予も少ないのは厄介すぎるぞ!
【それがわたくしの【生樹技能】、いいでしょう?
これでセクションリーダーの座をはじめて勝ち取っただけあって、貴方たちのスキルより強い自信は……ある!】
「自信満々だけど、それくらい強いよな」
「近寄れないもん」
「辛うじて……これなら当たるか!
スキル発動!【渦炎炭鳥】!」
おそらくジョブがメイジだと思われるプレイヤーが火の玉を放っていった。
勢いと飛距離は問題なさそうだが……
【それだけでは温い。
【土遁ー土壁の術】!】
【極楽ジゴク】は新たな【生樹技能】……【土遁ー土壁の術】を起動させると、地面から土の壁が迫りあがってきて火の玉を難なくシャットアウトしてしまったようだ。
あの火の玉も悪くはなかったんだが、相手がセクションリーダーという実力者なので当てるためには工夫が幾つか足りてなかったな。
ちょっと真っ直ぐ過ぎだ!
「あれ、防がれるのか」
「わりといい感じだったよな?」
「というか地面が壁になるってことは、地面の何処からでも防御を出せるってことよね?」
「防御の対応力高過ぎだろぉ!」
モブプレイヤーたちも【極楽ジゴク】の堅実的かつ、リソースの差を感じているようだ。
同じ攻撃や防御の用途に使うスキルと【生樹技能】だが、生み出されるものの規模や強度で圧倒的に負けているわけだからな。
だが、直近で使ってきた【生樹技能】の傾向からして【極楽ジゴク】というプレイヤーのプレイスタイルというのもが透けて見えるようになってきた。
……お前、タンクとかそれに近い役割で動くのが得意なタイプだろ?
【……根拠は?】
その返答からして正解と言っているようなものだからわざわざ俺の考察材料を伝えてやる義理もないんだが……
こういう手合いにはあえて伝えてやることで動揺が誘える気がする。
俺がお前をタンク系プレイヤーだと思ったのはまずそのスペック差がありながら、一気に俺たちを倒そうとしなかったところだ。
もっと攻撃的に動いてきていたらこっちの被害はもっと拡大していたのは間違いないし。
【わたくし自身の消耗や危険を減らすために様子見していただけと言ったら?】
まぁ、俺もまずそれを考えていた。
そういうプレイヤーも多くいるからな。
だが、その次に使ってきたのは攻撃ではなく【土遁ー土壁の術】という完全に防御のための【生樹技能】だ。
その前段階でお前ほどの力量のプレイヤーなら俺たちとのリソースの差は分かっていたはずだから、それを攻撃的に撃退するわけじゃなくて守りに徹した時点で普段の行動パターンが透けて見えたってわけだな。
【わたくしの行動をそこまで見透かしてくるとはまるであの方のよう……
いえ、あの方のものとはまた別物……?】
あの方とかいう謎の存在と比べられても別物かどうかなんて俺が分かるわけないだろ!
……それはさておき、俺の目の前のプレイヤー【極楽ジゴク】がタンク系プレイヤーなのは正直かなり良くない。
何故なら俺たちは道中で囮や足止めとしてモブプレイヤーたちを複数置いてきているんだからな。
本当は速攻でリーダー格を倒して戻れたらモブプレイヤーたちを助けに行けるんだが、肝心の【極楽ジゴク】が守りに入っていることもあって攻撃を通すのに一苦労しているので無駄に戦闘で時間がかかってしまっている。
こうやってやり取りをしている間にも包丁を使って何度か上空から【極楽ジゴク】を切りつけに攻めて言っているのだが、砂を纏って作り出したと思われる外殻に阻まれてしまいほとんどダメージを与えられていない。
砂がクッションみたいになっているから自然と刃物の攻撃が受け流されてしまっているんだよなぁ……
下手に固いだけの装甲よりも厄介かもしれないぞ!?
【そこに気づくとは目のつけどころがいい。
わたくしたち土遁科の優れているところとして他の科にも評価されていた点で、今体験してもらっているように特に斬撃に対しては滅法強い!
貴方の包丁という武器を軸に扱うプレイスタイルが災いしたようだ】
そうは言ってもな……
俺から包丁を手放してしまったらボトムダウンオンラインのコンセプト的にも無力になるし、これは不可抗力みたいなものなんだよなぁ……
【極楽ジゴク】にはわざわざ言わないけど。
武器を固定してしまうが故の弱点ですね。
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】




