2013話 極楽ジゴク
巣穴の外には逃げ足の速いモブプレイヤーたちを置いていき、巣穴の中では警報を鳴らしてしまいその結果現れたモンスター相手に【短剣探険者】とモブプレイヤーたちを置いていったので随分と人数が寂しくなってしまった俺たちだが……
……その実、人数が少なくなったことで身軽になり行軍速度が上がっているので実は感謝していたりするぞ!
「うおっ、何か速くない?」
「さっきまでよりも動きやすくなってきてるな」
モブプレイヤーたちも理屈は分かってなくても移動のスピードが上がったことには気がついたようだ。
このまま一番奥まで行くぞっ!
そうして一番奥にたどり着くとそこには土で作られた玉座に巨大な虫が鎮座していた。
あれは……アリジゴクか!?
砂漠の遺跡を探索しに行ったときに何度か見たことがあるが、あんな何メートルもあるような図体のアリジゴクは普通ありえないからな!?
【……貴方たちは底下箱庭側のプレイヤーか?】
うわっ、巨大なアリジゴクが俺たちに話しかけてきたぞ!?
……ってことはやはり俺の予想は当たっていたか。
あぁ、俺は確かに底下箱庭側のプレイヤー……包丁次元のMVPプレイヤーの【包丁戦士】だ。
お前こそ、そんな虫みたいなモンスターみたいな見た目をしているが天昇箱庭側のプレイヤーだな?
そして、外にいたモンスターたちもただのモンスターじゃなくてプレイヤーなんだろ?
『えっ……そうなの?』
「まじかよ【包丁戦士】!?」
「それは悪い冗談じゃねえのか?」
【プロペラ遊人】を含めた他のモブプレイヤーたちは俺の指摘を怪訝そうに聞いていたが、巨大なアリジゴクの返答は……
【ご明察……いかにもわたくしは天昇箱庭側のプレイヤーであり、外にいた貴方たちがモンスターと称した同胞たちもプレイヤーだ】
やはりそうだったか。
能力の個体差や行動パターンがバラバラだったりしてたから、モンスターでのビルドの違いとプレイヤーごとの判断基準が違うからこそ行動パターンが違うと睨んでいた。
そして何より……
『【包丁戦士】さんが……気配を読めていた?』
そう、そこだ。
俺が気配をハッキリ読める対象はプレイヤーだ。
他も読めるが曖昧になってくるんだが、外にいたモンスターたちの気配はハッキリと読み取れた。
だからこそ、プレイヤーだっていう予想が立てられたわけだな!
「【包丁戦士】ってMVPプレイヤーなだけあって、頭切れるんだな」
「というか気配読めるってさらっと言ってるけど、そんな分かるか?」
「それよりも、あのモンスターたちプレイヤーだったのかよ!」
「どうりで冒険者ギルドのモンスター相手よりやりにくいと思ったぜ」
それはそれとして、こっちも名乗ったんだからお前も名乗りを上げてくれてもいいんじゃないのか?
今のままだとお前のことは巨大アリジゴクとしか呼べないんだが……
【それは失礼した。
わたくしは土遁科のセクションリーダー【極楽ジゴク】、以後よろしく】
土遁科のセクションリーダーと名乗った【極楽ジゴク】だが、セクションリーダーというのはおそらく俺たちで言うMVPプレイヤーに相当する枠組みの代表者のことだろうな。
多分だけど。
そして……名乗ったな!
俺たち底下箱庭……包丁次元の洗礼を受けるといい!
お前の名前は【極楽ジゴク】だ!
【ワールドアナウンス】
【【包丁戦士】が【名称看破】しました】
【【土遁科】のプレイヤー【極楽ジゴク】】
【【包丁戦士】「俺たち底下箱庭……包丁次元の洗礼を受けるといい!
お前の名前は【極楽ジゴク】だ!」】
【【名称公開】により知名度に応じたステータス低下効果付与】
【なっ、わたくしの名前を媒介にしたデバフ!?
底下箱庭にはそんな呪いのようなものがあるのか……】
よしよし、久し振りに綺麗に【名称公開】が決まってくれたな!
次元戦争だともう手の内がバレバレになってしまって迂闊なやつか、情報共有されてないやつくらいにしか決まらなくなってるのもあって困ってたが……天昇箱庭側のプレイヤーにも通用して良かったぞ。
「【名称公開】だ!」
「ボマードちゃん以外のプレイヤーで聞くのはじめてかも」
「珍しいもの見れた気がするな」
包丁次元特有の【名前に関するスキル】なのに次元戦争に参加してないと包丁次元の連中ですらほぼボマードちゃんの例しか知らないからな……
これが【名称公開】の使い方だ、ちゃんと覚えておけよ?
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】




