2011話 気配と罠、その違和感
伝令役を再びスタート地点へと向かわせたわけだが、残った俺たちは再び侵攻を進めていた。
この辺りでモンスターに遭遇したってことは、敵の拠点用地の一つが近いか指揮官ポジションが近くにいるかもしれないと睨んでのことだ。
「とりあえずモンスターは倒せたし一歩前進したモンネ」
あぁ、そうだな。
他の次元のやつらより遭遇が遅れてしまったから進みは悪いかもしれないが、それでもきちんと進めることが出来たのでヨシとしよう。
『でも……これからどう進む?』
【プロペラ遊人】が不安げに俺を見てきているが、何をそんなに心配してるんだ……?
いや、モンスターを見つけたからってここから先の探索のあてがないことを気にしているのか。
だが、そんなに心配する必要はない。
俺はプレイヤーキラーで気配には人一倍敏感なのだ!
普通モンスターの気配はあんまり読み取れないんだが、さっきのやつらは異様に読み取りやすかったからその気配に似たものがある場所に近づいていけばいいだけの話だ。
「えー、凄いネ!?
【包丁戦士】さんが気配読めるのは知ってたけどあのモンスターたちのやつも読めるんだネ」
『全く……わからない』
これは俺特有のものだからお前たちには難しいだろうな。
だから俺が先導して連れていってやる。
おーい、モブプレイヤーたちも俺についてこい!
「なんだなんだ!?」
「何か見つけたのか?」
「急に狂人が進みはじめたぞ、ついていかないと!」
「待って~置いてかないでー!」
俺が進んでいき、そこに【短剣探険者】と【プロペラ遊人】が続くと慌ててモブプレイヤーたちが追いつこうとして走ってきた。
自分たちだけ置いていかれないように必死になっているというわけだな!
というわけで気配を辿ってきたらモンスターたちが出入りしている流砂地帯があった。
あの穴からさっき戦ったサソリやサンドワームみたいなモンスターたちも出てきたのかもしれないな。
「あれだけ全部のモンスターと戦ってたらキリがないよな……」
「めちゃくちゃ数が多いってわけじゃないけど、五人とか六人がかりで戦ってようやく一体倒せたくらいだし」
「つまり五倍から六倍の戦力をこっちが用意しないと勝てないってことだもんね」
「巣穴っぽいところをあっさり見つけた【包丁戦士】は凄いけどよ、あれだけ出入りしてるところに行くのは無謀じゃね?」
モブプレイヤーたちはさっき苦戦したような相手が群がっている光景を見て怯えているようだ。
さっき戦った集団よりもモンスターの数が多いんだから仕方ないが……
とはいえ十中八九戦うことになるのでそんなに怯えていては話にならないぞ!?
「そうは言うけどさぁ……」
「俺らは【包丁戦士】みたいに強いわけでもねぇし……」
「しかも向こうの拠点近くってことだろ?」
「罠とかいっぱいありそうよね」
「全滅しちゃうかも!」
ほう、罠の可能性についてはモブプレイヤーたちも考慮してたか。
ぶっちゃけあの数のモンスター相手でも俺と【短剣探険者】、【プロペラ遊人】がいれば何とか倒せると見込んでいたがそれでも俺が攻め込むことを即決せずに様子見に徹しているのは罠を警戒しているわけだ。
何せこのフィールドで天昇箱庭側は準備期間があったわけだからな。
重要そうな場所を守るために何か備えをしていると考えるのが自然なことだ。
「でも、【包丁戦士】さんって罠がある場所も分かるんダヨネ?」
『それは……知らなかった』
あぁ、よく覚えていたな。
俺は確かに罠のある場所を経験則から予測して、痕跡を見たりして把握できるんだが……
ここには不自然に罠があったり、無かったりしてるんだよな……
「どういうことカナ?」
『違和感……?』
そう、違和感があるんだ。
様子を見るに分かる範囲だけでもきちんと嵌めようとしている罠と、囮の罠、見せ罠、それぞれ用意されていてそれだけで一連のセットがあるので問題がないように見える。
だが、これだけのセットを作れるやつが設置する位置について違和感があるんだ。
明らかに抜け穴とは言いにくいほどあらゆるところに抜け道ばかりになってしまっている。
これでは引っ掛かるものも引っ掛からないぞ?
「それは向こう側が雑なんじゃないノ?
作り方は知っていても配置の仕方のノウハウがないトカ」
『警戒……し過ぎ?』
その可能性も無いとは言えないが……
確かに生産に特化しただけのプレイヤーと配置のプレイヤーが別々なら雑っていうのもあるが……
それにしても一部がきちんとセオリー通りミチの誘導出来ているんだよなぁ?
うーん、判断に困るところだ。
困ることはいいことです。
その苦悩を糧にしなさい。
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】




