2008話 包丁、プロペラ、短剣連携草案
「それで、【包丁戦士】さんはこれからどう動くのカナ?
気になっちゃうんダヨ~!」
【短剣探険者】が俺のところまで駆けてきて話しかけてきたが……
まぁ、とりあえずは愚直にまっすぐ進んでみることにする。
50人もいるし、誰かしら何かを見つけてくれることに期待しているぞ!
『他力本願……でも、時にそれは必要』
【プロペラ遊人】は半分俺のことを懐疑的に見つつも、一応俺の方針に賛同してくれたな。
【短剣探険者】のことはある程度関わりもあるからどう考えていてどう動くのか予想は出来るが、【プロペラ遊人】はほとんどゲームで遊んでいるときにも接点はないし正直何を考えているのか分からない。
それでも選んだのは他のゲームで頭角を現していたから、今回のように別システムの相手と戦う時にもボトムダウンオンラインに染まっていない対応をしてくれることを期待していたわけだ。
『それは嬉しい……でも期待に応えられるか不安……』
不安なのか。
でも、無言剣士に認められてるし、俺もお前と戦ってみてポテンシャルの高さや適応力の高さは感じてるからそこまで不安になる必要はないぞ!
あくまでも自然体でいてくれたらそれでいい。
それこそが俺がお前に求めてることだからな。
「そうダヨ!
【包丁戦士】さんは無茶振りしてくることはあっても、出来ないことを強要はしてこないから安心シテネ!」
【短剣探険者】も不安げな【プロペラ遊人】のフォローに入っていた。
こういう時にこういうフォローが出来るのが姉としての役割を普段から果たしている証拠だな。
とはいえ、双子の弟の【ブーメラン冒険者】はわりとしっかりしているのでこういう側面を俺が見る機会って実はこれまであんまり無かったけど……
「【包丁戦士】さんが見てない時はしっかりしてるときもアルヨ!
【ブーメラン冒険者】の方がゲーム得意だからボトムダウンオンライン内だとあんまり見せられてないケド」
それなら仕方ないな。
まぁ、今は深掘りする時でもないしそろそろ索敵に集中しながら戦いに向けて色々と話しておこうか。
まずここにいる2つ名持ちプレイヤーでの個別連携について説明しておく。
まず考えたのが俺と【短剣探険者】の近距離連携だ!
包丁と短剣というリーチの短いチュートリアル武器同士だからこそ、相手にかなり距離を詰めた戦いを繰り広げやすくなる。
そこで俺が搦め手を使い相手を翻弄しながら、【短剣探険者】が高火力攻撃で相手を仕留めるというわけだな!
次に考えられるのは俺と【プロペラ遊人】の連携だな。
【プロペラ遊人】は無言でスキルが使えるから俺が前線で回避タンクをしながら時間を稼いでいる間に相手の意表を突くことが出来るはずだ。
俺自身もトリックスターのようなプレイスタイルだから、二人とも何をしてくるのか分からないってことで相手としてはやりにくいに決まってる。
……それを見越して【プロペラ遊人】をわざわざ選んだしな。
「あとは私と【プロペラ遊人】さんって組み合わせもいいヨネ!
私は普段から【ブーメラン冒険者】と組んでるから、投げ系のチュートリアル武器の使い手との連携は他のプレイヤーよりも何倍も慣れてるカラネ」
そう言われてみるとそうだな。
その視点で考えてなかったが、【短剣探険者】としては【プロペラ遊人】はかなり組みやすいかもしれない。
ブーメランとプロペラという形状の違いはあれど、味方が投げやすいための立ち位置は感覚的に分かるレベルで習熟してるだろうし、それに合わせた攻め方も熟知しているしな。
『それは……楽しみ。
でもプロペラと連携は……難しい』
「そこは任せてヨ!
ここは本当に自信がアルヨ!」
あぁ、俺もそこは太鼓判を押しておこう。
少なくとも次元戦争だったら連携で普通にMVPプレイヤーを打倒できるレベルだしな。
2つ名持ちプレイヤー同士の連携についての所感はこんな感じだな。
あとはモブプレイヤーたちだが……
知らん!
とりあえず遠距離武器と近距離武器で二人一組を作ってペアで行動しろ!
以上だ!
「えぇ……(困惑)」
「二人一組……うっ、トラウマが……」
「投げやり過ぎて草」
「流石狂人、思い切りが良すぎて泣けてくる」
「もうちょっとなんかいい声かけの仕方って絶対あっただろ……」
「これが俺たちのトップだぜ?
他の次元……特にさっきの【ロイス=キャメル】がいるステッキ次元が羨まし過ぎる」
まぁ、非難轟々だがこれは日常茶飯事なので気にしないでおこう。
『相変わらず……変な人』
仮にも次元天子なのですからきちんとプレイヤーを導いて下さい。
全く、これだから劣化天子は……
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】