2000話 世界への異なるアプローチ
俺、【霧咲朱芽】は【株式会社幽刻修験堂】の本社へと足を運んでいた。
毎度毎度のことだが、特別枠での会社勤めという扱いになっているので普段は出勤せず自由に行動していればいいのだが、召集がかかれば強制的に来なければいけないのだ!
「やあやあ、今日もご苦労様。
この【山伏権現】の召集に応じてくれて嬉しいよ」
俺たちの前に現れたのはゲーム運営プロデューサーの【山伏権現】だ。
山伏のような姿とサラリーマンのような姿をまぜこぜにしたカオスな見た目のやつだ。
基本は山伏衣装なんだが、ネクタイをしていたり、キッチリメガネをキメて、髪は七三分の状態でワックスで固めている。
「次元戦争も一区切りついて統合関係がむちゃくちゃになって忙しくなってきた時に呼び出すっつーことは相応の用事なんだろうなぁ?」
このガラの悪い喋り方をしているセーラー服の女は【東雲飛鳥】……【株式会社幽刻修験堂】の専属モデルだ。
表の顔としてモデルをやっているだけあってスタイルは抜群だが、裏の顔はこの特別な場所に招かれるくらいに【山伏権現】とズブズブな関係だな。
そしてこいつはアンカー次元のプレイヤーだから、元々統合関係にあった釣竿次元と切り離されて聖剣次元に取り込まれたんだったな。
「……」
そして釣竿次元のプレイヤーである無言剣士……もとい【源流一刀斎】も同じように思っている……っぽい表情をしている。
喋らないから本当かどうかは分からないけどな!
「君たちにとって動乱の日々になっているのはゲーム内でも、ゲーム外でも分かっているとも!」
【山伏権現】はそう理解を示してきたが……
そりゃ、ゲーム内でも、ゲーム外でもお前が要因になってるんだから分かってもらってないと逆に困るんだが!?
口にはしなかったが心の中だけでそうツッコミを入れておいた。
「それはさておき、君たちには先に話しておこう。
ここから先は外部環境のプレイヤーと戦うことになるんだけれど、向こう側はこの【山伏権現】の管轄ではないんだ。
そして、向こう側たちは今こちらでやっている臨界点への到達とは異なるベクトルで働きかけをしているはずだ。
お互いに阻害し合っているからこそ、この結末も決めなくてはいけないところまで来たということさ。
どの結末に導かれるかはこれからの戦いや、行動によって変わると思うけどせっかくここまで用意してきたのだから、この【山伏権現】の結末へ進めたいよ」
「……つまり、俺たちに勝てって言ってるんだよな?
それはここの社員としての仕事か?」
俺は【山伏権現】の意図を探るために質問を挟み込んでいった。
いつもよりは難解じゃなかったからある程度意図に沿った質問だと思うがどんな返答が来ることやら……
「この【山伏権現】の責務として君たちに従事してもらうことを鑑みれば社員として勝って欲しいとも言えるよ。
だけど何よりも『面白い』ことを『面白い』と思いながらプレイしてもらいたいと思っているかな。
手段として使ってはいるけれど、ゲームとしての媒体を選んだのは何を隠そうこの【山伏権現】なのだから。
『面白い』と思ってもらえる媒体での潜在意識への働きかけをするからこそ、世界臨界点への到達に意味が出てくるのさ」
【山伏権現】の語りには一部理解できないこともあるが、端的にいえば『面白い』と思いながら……楽しみながら勝ってこいという激励なのだろう。
「粋な激励じゃねーか!
ちょっとは俺たちのことも期待してくれてるっつー話だよな?」
【東雲飛鳥】も同じことを思っていたようだ。
【山伏権現】にしてはわざわざ俺たちに伝わりやすい表現をしてくれていたんだから、それは俺たちのステージに合わせてくれたということでもあるわけだ。
「それと向こう側たちにも気をつけた方がいいよ。
身体と精神を含めた潜在意識に透徹するほどの願望を持つことで臨界点への突破を目指すことが底下箱庭計画のコンセプトで、それに合わせた成長を遂げられるシステムを組み込んだわけだけど、さっきも言ったように向こう側たちは別のコンセプトで世界への干渉を試みているからこそアバターの成長方法も全く異なっているよ。
それはこちらからして都合がいいところもあるかもしれないが、最終的には必ず噛み合わないことが根幹としてあるのを忘れてはいけない。
必ず宥和ではなく、打倒を選ぶようにして欲しいのがこの【山伏権現】からの指針だよ。
君たちがそれぞれの統合枠組みで分かれて配置されている意味を理解して行動してくれることを期待しているよ」
まぁ、相性がいいと思えても必ず俺たちで相手を倒せということっぽいな。
他のプレイヤーは仲良くなりたがるかもしれないが、それぞれの統合枠組みで組分けが違うこの三人でそれを止めて欲しいということなのだろう。
わざわざそこまで口出ししてくるということは【山伏権現】にとって相当都合が悪い方向に繋がるってことだ。
そこは社員として働いておくことにしよう。
俺はプレイヤーキラーだからな、倒せる相手がいるなら倒すだけだ!
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】
とうとう2000話到達しました!
まさかここまで続くとは書いている本人も思いませんでしたが、なんとかなりました笑
読者の方にこのようなwikiも作っていただけて私も楽しませてもらってます笑
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これからもこの作品をよろしくお願いします!
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