20話 爆発と発光の少女たち
攻撃は通ったが早速肉壁を1つ消費してしまったか。
レイドボス相手に短期決戦で勝てるとは思っていないので、早々に有限の手札を切ってしまったのは痛かったかもしれない。
「とりあえず、爆弾魔ちゃんは明らかにウナギ尻尾の攻撃だと思われるものが来たら投身して行こうな!
自爆テロってやつだ!」
俺の隣で待機しているロリ巨乳の耳元でそっとささやく。
なんでささやいたのかというと、他のプレイヤーに【名称公開】を気軽に取得してほしくないからだ。
だが、勘違いしないで欲しい、ボマードちゃんに独占させたいとかそういうのではなく行動不能になったプレイヤーがゲーム内に溢れ出したら、VRMMOとして崩壊することを懸念してのことだ。
狩りをしたり、ものを作ったり、売ったりするプレイヤーが減ればプレイヤー経済(?)が崩壊する……と【検証班長】が考証会議の時に言っていたので、他言無用になったのだ。
「いや~、私を爆弾みたいに扱わないでくださいよ~
いや、それしかやれないので仕方ないですけど!!ですけど!!」
ですけど、を強調するな。
安心しろ、その役割は俺や他のトッププレイヤーじゃ出来ないお前だけの強みだ。
俺はそれを尊重するぞ。
「ふぇぇ!?
いや~、唐突にタラシみたいなこと言いますね【包丁戦士】さんは……」
んっ、なんか言っただろうか……
こいつは時々ボソボソ喋るので聞き取りにくくてしょうがない。
「いや~、何でもないですよ……
【包丁戦士】さん、信頼してますから!
これで倒せなかったら爆発の罰ですよ!」
「了解、任せろよな!」
こんなやり取りをしていると、ウナギ尻尾をムチのようにしならせる広範囲殲滅攻撃が始まった、これが始まるとしばらくは近づけなくなるが今回の場合はちょうどいい!
「いや~、私の出番みたいですね。
行きますよ、【名称公開】っっ!!!」
【名称公開】を発動しながらムチの嵐に飲み込まれていった。
【レイドボスの能力に一部制限がかかりました】
【制限時間00:10:00】
今まで死に戻りすると息をするように【名称公開】によってデバフをかけていたボマードちゃんだったが、スキル取得によりパッシブスキル状態からアクティブスキル状態へと変化したらしい。
ただ、スキルを獲得しただけでそうなるのか、【先導者】称号によるものなのかは未検証とのこと。
デバフはアクティブ状態に変わった段階で最低保証として弱々しく杖をついてなら歩ける程度まで軽減されたらしい。
おばあちゃんかな?
「おっ、レイドボスのスタミナ切れかなにかのフラグを踏んだのか?」
「わからねぇよ、ただチャンスだぜ!」
「乗るしかない、このビッグウェーブ!」
【モブ】たちが動きの弱まったウナギ尻尾を見てそう叫んでいる。
レイドバトルの醍醐味は味方のモチベーションコントロールだ。
一見すると勝てそうにない相手でも、少し希望が見えると一気にパフォーマンスが向上する。
こういうのは俺よりも【検証班長】のほうが得意そうだが、俺でも出来ないことはない。
「行くぞ、みんな!
【包丁戦士】部隊と【釣竿剣士】部隊に分かれて突っ込むぞ!」
「当然ですよ、生産プレイヤーなら!」
俺の発言に便乗して後ろからにょっ、と割り込んできた。
気配を全く感じなかった……怖いわ!
「私に続いてください、行きますよ!
釣竿一刀流【発光】!」
【釣竿剣士】は全身から眩い光を発しながらジェーに突っ込んでいった。
あっけにとられていた俺や【モブ】たちも慌てて追いかける。
「いや、あれ人間!?」
「あれくらい出来ないとトッププレイヤーになれないのか……」
「いやっ、敵より味方のほうがびびってて草なんだがwww」
「光るとかヤベーよ!」
【モブ】たちが口々に【釣竿剣士】の技に驚いている。
リアルスキルで全身から光るのは流石におかしい、何かトリックでもあるのか……と思い本人に尋ねてみる。
「当然ですよ、生産プレイヤーなら!」
いや、どっちの意味の当然なんだっ!?
俺の悲痛な叫びはレイドバトルの喧騒にかきけされてしまい、応えてくれるものはいなかった……
えっ、あの娘光るんですか!?
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