1986話 無機物魅了
【ロイス=キャメル】が放つスキル【色欲陰桃】によるエネルギー弾をステッキで弾き返しながら迫り来るレイドボスの【色欲たる淫蕩魔】。
【ロイス=キャメル】は身動き取れないだろうし、この対応は俺がしないといけない。
さてどうしたものかと考えたが……
これだな!
スキル発動!【深淵纏縛Л】
俺は深淵の黒い霧に覆われると、次の瞬間には暗黒騎士を思わせる黒い甲冑姿へと変化していた。
これが【深淵域の竜帝王】……【エルラシア=ガルザヴォーク】の力を身に宿した姿だ!
そしてここから……
スキル発動!【深淵煉獄】!
俺は迫り来る【色欲たる淫蕩魔】を燃やし尽くすかのように黒炎を放っていった。
【ガルザヴォーク】の力は一つ一つがド派手な大火力だからな……
燃費は悪いがその分威力は俺の持つスキルの中でもトップクラスだ。
「ふむ、いきなり大ダメージを与えられたか。
見事な思いっきりぷりだ。
だが……」
【ロイス=キャメル】が素に戻って俺を誉めつつも懸念しているものがあるのか【色欲たる淫蕩魔】の方を見据えていると……
周囲の壁を壊して生まれた岩たちを動かして防壁にしてきたぞ。
一瞬鉱人系のスキルかと思ったが前段階で【ロイス=キャメル】から聞いていた話から考えてみると違うっぽいな。
「そうだね♪
あれが無機物も魅了出来る力を利用した防御方法だよ♪
キャメルちゃんはあの力でメタメタにされて太刀打ち出来なくなっちゃったんだよ~♪」
メタメタとか中々聞かない表現だが言いたいことは伝わってくる。
【ロイス=キャメル】から無機物も魅了出来ると聞いていたが、岩自らが【色欲たる淫蕩魔】を守るために動いて壁になるのは予想してなかったな……
これ、地形を味方にしたようなものだろ……
中々インチキ臭い能力だな!?
「でもその分本体のステータスはレイドボスにしては低めに設定されているみたいだよ♪
【包丁戦士】ちゃんの当てた一撃だけでも致命傷に近いくらい疲弊してるからね♪」
【ロイス=キャメル】に促されて【色欲たる淫蕩魔】の様子をじっくりと見てみると、確かに深手を負っているようだ。
あれなら何とか攻撃を通していけば勝てなくもないか。
「でも、キャメルちゃん1人だけだとここから全く攻撃が当てられなかったから気をつけてね♪
それに魅了が活かされるのは守りだけじゃないよ♪」
【ロイス=キャメル】の忠告が為された直後、螺旋階段部分が後ろから飛んできて俺たちへと襲いかかってきた!
おいおい、それは反則だろ……っ!?
「本体が動かなくてもこんなことが出来るんだから厄介だよね♪
足元を掬われないように気をつけないと♪
大罪スキル発動♪【色欲絶跳】♪」
【ロイス=キャメル】は地形の変動に対して脚力を強化する大罪スキルの【色欲絶跳】を使用して壁面を駆け回りながら移動することで対応していた。
てっきり飛んで対応するのかと思ったがそうやって逃げ回るのか。
ちょっと意外な選択肢だな。
「飛んでると守りが甘くなっちゃうからね♪
キャメルちゃんは地に足をつけていた方が安心だよ♪」
まぁ、【ロイス=キャメル】の戦い方ならそうだろうな。
そっちの方が堅実に戦えるだろうし。
「あと、こうやって攻撃にも使えるんだよ♪
え~い♪」
逃げ回るのに利用した脚力と勢いを利用してそのまま【色欲たる淫蕩魔】へとかかと落としを炸裂させようとしていった。
それは再び壁面を崩して生まれた岩が防壁となって通らなかったのだが……
いい隙を作ってくれたな!
スキル発動!【覇道竜陣】!
俺は再び黒炎を生み出して【色欲たる淫蕩魔】に攻撃をしていった。
【ロイス=キャメル】が先に攻撃していたことで周囲の無機物たちがそっちに集められていたこともあり、俺の黒炎へ対応出来る数が少なくなっていたので攻撃を通すことに成功したぞ!
あいつ、無機物の動きの流れを読んで俺の攻撃が通るように誘導していたんだな……
「射線が通るように立ち回りするのは得意だよ♪
いつもやってるからね♪」
それは心強いな。
何なら【牛乳パフェ】と組んでも強いんじゃないのか?
「そうかもね~♪
でもキャメルちゃんがわざわざ通るようにしなくても勝手に通してくれそうだからあんまり意味がないかもよ♪」
【牛乳パフェ】くらいの技量だとそうなるのか……
【ロイス=キャメル】視点でそう映るのなら相当腕前を買われているってことだが、まぁ、納得は出来る。
知らないところで株が上がるMVPプレイヤー。
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】




