1985話 色欲たる淫蕩魔
【ロイス=キャメル】と一問答した後、二人でレイドボスが待ち受けるという場所へと突入していった。
すると例のごとく無機質な声のアナウンスが脳内に鳴り響き……
【Raid Battle!】
【色欲たる淫蕩魔】
【???】
【色欲淫魔】【色欲罪魔】【???】
【ーーー???ーーー】
【ーーー???ーーー】
【ーーー???ーーー】
【恋い焦がれ、恋慕の発露が】
【色欲として戦場を駆け巡る】
【ーーー???ーーー】
【ーーー???ーーー】
【ーーー???ーーー】
【レイドバトルを開始します】
レイドアナウンスと共に俺たちの前に現れたのは【色欲たる淫蕩魔】……
見た目は手にステッキを持ち、シルクハットを被り、ウサギの耳が頭についた、英国紳士風の衣装を着た幼女の悪魔だった。
何か通常モードの【ロイス=キャメル】の衣装と【色欲】の権能で魔法少女へ変身した身体で合算された姿のレイドボスだな?
「ゲーム運営プロデューサーから私への意趣返しといったところだろう。
私の二面性を同時に表現するならこの形が適切だと判断されたわけだ。
衣装と姿がそれぞれ逆で反映されなくて良かったと、自分のことながら初見で思ったのは記憶に新しいよ」
衣装と姿がそれぞれ逆で反映……つまりおっさんの【ロイス=キャメル】が不思議の国のアリス風衣装を着た姿ってことだろ?
……正直あんまり俺は見たくないな。
「そういうことだ。
【色欲】を冠しているからにはある程度他者から愛される姿でいたいという自負はある。
英国紳士の衣装で身体が幼女ならばそれなりに需要があるはずだから、敵ながら天晴れと私が後押ししておこうか」
いや、ナニを後押しするんだ……?
怖いから聞くのを止めておこう。
「それはそれとして、お嬢さんに言っていなかったが……」
【ロイス=キャメル】が何かを言い始めようとしていたが、その途中で【色欲たる淫蕩魔】がステッキで俺へと攻撃を仕掛け始めていた。
その技量、その動き……まさに戦場で鍛え上げられた熟練の技巧だっ!
姿だけじゃなくて技量もコピーされているのか!?
「しまった、遅かったか。
だが説明するまでもなく分かったはずだ。
それにきちんと対応できているあたり私の杞憂だったようだ。
その咄嗟の対応力、若いというのはやはり羨ましいものだよ」
ちょっ!?
そんな呑気なことを言ってないで俺を助けてくれよ!
こいつ、猛攻過ぎて俺は防戦一方で攻撃する暇なんて無いんだが!?
「お待たせしてすまないね。
これは英国紳士としてあるまじき失態だった。
ここからは行動で挽回するとしよう」
そう言うと【ロイス=キャメル】は身体を紫色のモヤで覆っていき、そしてモヤが晴れた頃には不思議の国のアリス衣装の金髪幼女へと変身を遂げていた!
「ここからはキャメルちゃんのオンステージだよ♪
【包丁戦士】ちゃんもついてきてね♪」
さっきまでと口調も声色も、そして仕草も変わり完全に幼女ロールプレイを決行しているな。
流石はバ美肉おじさんだ……他人の目の前で急に全てを切り替えられるのは覚悟が決まってないと出来ないぞ!?
俺を羨んだり誉めたりばかりしていた【ロイス=キャメル】だが、その辺の演技力も踏まえると普通に自信を持ってもいいと思うんだけどなぁ。
「まずはキャメルちゃんからイクよ~♪
大罪スキル発動♪【色欲陰桃】♪」
【ロイス=キャメル】が俺への援護として放ったのは色欲の大罪スキルである【色欲陰桃】だ。
ピンク色のエネルギー弾を放つもので、それが【色欲たる淫蕩魔】に襲いかかっていく。
【色欲たる淫蕩魔】はそれをステッキで一つ一つ撃ち落として迎撃対応をし始めていた。
その手際は見事なもので、被弾ゼロで危なげなく捌いていた。
……よしっ、俺への追撃の手が緩んだな!
【ロイス=キャメル】の攻撃は当たりこそしなかったが、急に襲われていて準備が整っていなかった俺が前線から一旦離脱出来たので非常に助かった。
サンキュー!
【ロイス=キャメル】はこの辺を計算して弾道を敷いていたのだろうが、やはり堅実に戦うならこいつと一緒にいると肩の荷が降りるな……
本当に助かる。
「そう言ってもらえるとキャメルちゃんもハッピーだよ♪
【包丁戦士】ちゃんとはもっと仲良くなりたいもんね♪」
そう言いながらも俺が体勢を立て直すためにエネルギー弾を放ち続けているのだが、【色欲たる淫蕩魔】はそれを撃ち落としながら俺たちの方へと接近してきている。
さて、どうしたものかな……
幼女だったり、幼女じゃなかったりする……
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】