1982話 流刑塔迷宮 色欲扇情塔ステッキ
【Raid Battle!】
【包丁戦士】
【包丁を冠する君主】
【深淵域の管理者】
【『sin』暴食大罪を司る悪魔】
【メイン】ー【深淵天子】【深淵使徒】【プレイヤー】【会者定離】
【サブ1】ー【次元天子】【ボーダー(妖怪)】【上位権限】
【サブ2】ー【暴食大罪魔】【デザイア】
【聖獣を担うが故に】
【深淵へ誘い】
【聖邪の境界を流転させる】
【責務放棄により】
【境界を見守り】
【管理することを強いられる】
【会うは別れの始め】
【合わせ物は離れ物】
【産声は死の始まり】
【この世の栄誉は去ってゆく】
【故に永遠なるものなど存在しない】
【瞳に宿る狂気に溺れたままいられることを祈るのみ】
【ああ……この世は無情である】
【ワールドアナウンス】
【【包丁戦士】がレイドボスとして顕現しました】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も元気にログイン!
昨日は【開襟町ステッキ】にある時計塔についての説明や、【ロイス=キャメル】がここに来てからの動きについて教えてもらっていたな。
まさか時計塔ダンジョンの第一階層を一人で踏破していたとはな……
かなり大変なはずなのだがそんな様子を少しも見せていなかったのは流石と言えるだろう。
「では今日は実際にここのダンジョンに二人で挑んでみるとしよう。
お嬢さんとの連携も久しぶりだが、私を興奮させるような戦いぶりをまた見せてもらいたいものだ」
ねっとりした言い回しの【ロイス=キャメル】に後ろから熱い視線を浴びせられながら俺は先行して時計塔へと入っていった……
【流刑塔迷宮 色欲扇情塔ステッキ】
俺たちが突入した途端、次元戦争やイベント、そして流刑次元でエリア移動をした時に流れるようにエリア名称がアナウンスとして流れてきた。
名前の繋がりからして流刑次元か罪魔種族と関係ありそうな場所かな?
そして入った瞬間に真横にワープポイントが生み出されていた。
「これは私が第一階層を踏破したことでショートカットとして入口にワープポイントが生み出されるようになったのだ。
お嬢さんが同伴していても同じ様になるとは嬉しい知らせだが、お嬢さんとの逢瀬の時間が減ってしまうのは残念だな。
類いまれなる器用さから引き出される芸当を見られる機会が減ってしまうわけだからね」
俺にどこまで期待しているのか分からないくらい評価が高いのが怖いんだが……
とはいえ、【ロイス=キャメル】のお陰で第一階層をスルーして第二階層に挑めるのはありがたいから軽くスルーするだけにしておこう。
そうして第二階層に足を踏み入れると、そこは螺旋階段の途中部分だった。
どうやらこの螺旋階段を登りながら攻略する一本道のダンジョンのようだな。
「幸いにも私やお嬢さんのような身軽なプレイヤーであればさほど苦にならないダンジョンだ。
これが【ギアフリィ】君だったらかなり苦戦しただろう。
狭い通路に段差のある斜面での戦いが常時展開されるわけだ、あのパイルバンカーを装備しながらこのダンジョン攻略させるのは酷というものだ」
まぁ、【ギアフリィ】の通常状態でここに挑ませるのは俺も大変なことだと思う。
MVPプレイヤーの中で【ギアフリィ】、【夢魔たこす】、【マキ】辺りは特に向いてないだろう。
十字架を振り回すなら【綺羅星天奈】もこれに該当するが……あいつはステゴロに切り替えたら問題ないだろうし……
そんなことを考えていたら【ロイス=キャメル】が声をかけてきた。
「さっそくモンスターのお出ましだ。
まずはお嬢さんの手際を見せてもらう」
そう言われて向こうを見てみると、サキュバスのようなモンスターが宙に浮かびながら俺へと襲いかかってきている最中だった。
なんか体よく押しつけられたように見えるが、仕方あるまい。
第一階層のクリアという面倒ごとを一人でやってくれているんだからモンスターの一体や二体を受け持つくらいはしてやらないと割に合わないだろうし!
【ロイス=キャメル】もそれが分かったうえで俺に押しつけてきたのだろう。
やはり策士だな……
とりあえず俺はサキュバスの後ろに回り込むと両方の羽を切り落としていった。
「ほう!」
俺の手際に感嘆の声を漏らした【ロイス=キャメル】の反応を見るとちょっとどや顔してしまいそうになるが、まだ倒しきっていないので油断せずにそのまま墜落していく最中のサキュバスの背中に包丁を突き刺して、そのまま真下へ切り裂いていった。
これで一丁アガリってわけだ!
「実に手際がいい!
流石、私が見込んだだけはある!!
惚れ惚れするような動きに私の身体も疼いてきてしまうよ。
やはりお嬢さんはMVPプレイヤーの中でも特に技巧に富んだ芸当の使い手だ」
そ、そこまでべた褒めされると俺でも照れるぞ……
さすがに入れ込みすぎでは……
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】