1975話 燃料切れの奥の手
「今度はうちが反撃するよ~!
スキル発動!【潜蛇影手】~!」
【マキ】が使ってきたのはこれまで何度も見てきたスキル【潜蛇影手】だった。
なんならさっきまでの【ランゼルート】戦でも使ってたしな。
そんな【潜蛇影手】によって生み出された地を這う影蛇が俺へと向かってくる。
前情報なしでこのスキルに対処するのはかなり難しいものだが、そこはおあいにくさま。
俺と【マキ】が共にいた時間が長くなりすぎたな?
その影蛇はこれに弱いはずだ!
剣現せよ、【封地剣マヒク】!
スキル発動!【封印土剣】!
俺は地面に包丁を突き刺していき、影蛇を地面に縫いつけていった。
【封地剣マヒク】は呼び出してみたものの、俺の今のリソース量では正直姿を象るには足りずサイズの変化はほぼなくて、本来なら木の枝が包丁を覆うはずなのだがそれを一本だけちょろっと生えてきただけだった。
……やはり【ランゼルート】のように複数の全力を一回の戦闘で万全に使うのは無茶だったな!
だが、地面に干渉すること自体は出来たのでスキルの封殺は完了だ!
「うぅ……
これまで【潜蛇影手】が防がれてるシーンを変態お姉さんに何回も見られちゃってたから簡単に防がれちゃったよ~!」
そりゃそうだ。
タネの割れている手品のようなものだからな。
そう簡単にくらってやるほど俺も甘くないぞ!
「そう、だよね……
変態お姉さんとうちの付き合いも長くなってきてるもんね……
だったら次で全てをかけて放つよ~!
このスキルが持つのは一瞬だけだからね~!
スキル発動!【聖獣毛皮ωψ】~!」
【マキ】はそういうと、身体を鱗で覆っていき変身してみせた。
【聖獣毛皮】2つ同時発動か!?
だが、これまで見たことのある【オメガンド】や【プシーナク】の力を宿した竜人の姿ではなく、曲線美の映える蛇人系の姿となっていた。
これが【マキ】がこれまで俺に全く見せてこなかった奥の手中の奥の手か!?
いいだろう、面白くなってきたじゃないか!
少ししか持たないようだが、どうせ今の俺たちの状態ならあと少ししか戦闘を継続できないだろうし短期決戦なのはお互い承知の上……
それが少し早まったくらいだろうよ。
……それなら俺も残された深淵鉄球のリソースを最後まで使いきるつもりでこれを見せてやろう!
スキル発動!【深淵顕現権限ЖЖ】!
俺はお尻から【ジェーライト】のヌルヌル尻尾を複数生やしていき、【マキ】と対峙することになった。
粘液が地面に垂れ流しになる様子は不気味だろうよ。
「うへぇ~
変態お姉さんのヌルヌル尻尾だ~!
はじめて戦った時もその尻尾でうちの相手をしてたよね~」
あぁ、俺がお前に変態お姉さんなんて変な異名をつけられた1つの要因でもあるな。
だからこそ、この最終局面にふさわしいだろう。
本来なら【深淵顕現権限】じゃなくて【深淵纏縛】のバニー服フォームでお相手してやろうと思ったんだが残念ながらリソースが足りなくてな……
それに今のこの姿も無理しているからあと一分くらいが限度だ!
というわけで先手必勝!
スキル発動!【魚尾砲撃】!
俺は毎度お馴染み【魚尾砲撃】の極太レーザーを【マキ】に向かって放っていった。
威力は申し分ないはずだが……
「うちもビームで対抗するよー!
スキル発動!【蛇眼閃光】~!」
【マキ】も目からビームを放ってきて相殺をしてきた。
いや、種族相性と、使っているスキルのランクが向こうの方が上っぽいのか俺の方が押されているな!?
このままだとまずい!
俺に直撃するぞ!?
くそっ、スキル発動!【魚尾砲撃】!
俺は手にしていた包丁を放り投げながら回避に専念するために、【魚尾砲撃】を逆噴射してビームの方向とは逆方向へと後退していく。
本当は横方向に逃げたいんだが、相殺に使っている尻尾の向きとの兼ね合いで真横に逃げられないのだ!
とはいえ、相殺を止めてしまうと即死なのでこんな延命みたいなことしか出来ないのだ。
向こうが期限つきの火力強化と分かった上で言わせてもらうが、こんなものがあるならもっと前から使ってくれよ!?
「だって、【ランゼルート】には変態お姉さんがいれば勝てると思ったんだもん!
だから、変態お姉さんと戦う時まで使わないようにずーっと使わないようにしてたんだよ~!」
くっ、パジャマロリの癖に生意気な……
随分と小賢しくなったじゃないか!
「変態お姉さんのお陰だよ~」
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】




