1974話 ねむねご
【マキ】の共倒れ睡眠スキル【怠惰巻拉】によって、【マキ】は既に睡眠状態に。
俺は辛うじて眠らずに必死に耐えている状態となった。
【師匠】は何とか耐えきっていたがあれは精神力でごり押ししてただけだからな……
あそこまでの精神力に至るには老成してようやくってところだろうし、俺には同じ芸当は出来ない。
だが、俺には別の手札がある……が……
くそっ、眠気で手が上手く動かせないな……
しかも腕が元々生えてたやつじゃなくて、後から生やしたやつだから細かい作業をさせるのには向いてないんだよなぁ……
……っと取れた!
本当はバフアイテムとして作ってきていたレア食材の【明朝卵】と【ケムリダケ】で作ったスープのカプセルだ!
これをこのタイミングで飲むと……
ゲホッ、ゲホッ、ゲホッ……
ケムリダケの成分で噎せやすくなっていたのもありすっきり目が覚めたぞ!
それに明朝卵自体にも眠気覚ましの効果があるので効果覿面だったというわけだ。
ありがたいことにな!
まさか眠気覚ましとして使うことがあるなんて想定していなかったが、この局面で俺の料理好きが活かされることになるなんて流石に予想もしてなかったぞ。
あるとしても戦闘が始まる前の準備段階くらいだろうと思っていたのもある。
「ZZZZZZZZZZzzzzzzz」
【マキ】はそんなこととは知らず呑気に寝ているな。
俺がわざわざ催眠対策をしているなんて想像もしていないだろうから仕方ないだろうが……
ここで俺が生産プレイヤーだったのが活きてきたな!
だが、【マキ】は無敵なので今のうちにダメージを与えるということが出来ない。
なので前と同じように今のうちに拡散スイカの種を口に仕込んでおこうと近づくと……
「むにゃむにゃ……
スキル発動……【火流煙硝】……」
【マキ】は蛇腹剣を振り回してそこから火煙をマキ散らしてきた。
うおっ!?
寝ながらスキルを使ってくるなんて随分と器用なことをしてくるじゃないか!
まるで寝言だな!?
俺は慌てて回避するために後方へと下がっていくはめになってしまった。
絶好の機会だったのだが普段の状態ならともかく、今の俺の負傷状態でこれを受けてしまったら死に戻りしてしまうのであのまま突っ込むわけにはいかなかったのだ。
寝てる【マキ】相手に死に戻りしていて、【マキ】が起きてたらいつの間にか勝っていたなんて状況になったら洒落にならないからな……
せっかく意気込んでいたのに拍子抜けしてしまうだろうし、死ぬ気で生き残る必要があったわけだ!
そして、そのお陰か【マキ】に動きがあり……
「むにゃぁ?
変態お姉さんおはよう~!
って、うわっ【火流煙硝】が出てる!?
いつの間に使ってたの~!?」
やはり意識的ではなく夢の中で無意識でスキル【火流煙硝】を使っていたか。
無意識下で戦闘行為を行えるなんて、なんと恐ろしいやつだ……
【師匠】がこの光景を見たら常在戦場を心がけていると【マキ】を誉めてくれるだろうよ。
まぁ、それはそれとして【マキ】が起きてきたことで無敵状態が解かれたわけだ。
つまり、再びダメージを与えられるチャンスが俺に巡ってきたということにもなる。
小細工で勝てるならそれに越したことは無かったのだが、真っ正面から戦えるならそれはそれで気が楽だしヨシとしておこう。
というわけで……
スキル発動!【輝毒呃洛】!
俺はスキルを使い結晶を生み出し、目の前に設置していった。
ぶっちゃけ目の前に置いた結晶に価値はないのだが、俺が欲したのはこのスキルのデメリット……身体の結晶化だ!
それによって俺の切断されてしまっていたもう片腕の先端から伸びるようにして結晶が生えてきた。
そして、この結晶で【マキ】の顔面をぶん殴っていった!
「ぶへっ!?
まさかのパンチ攻撃!?
予想外だし、痛いよ~!?」
【輝毒呃洛】パンチをしたのは過去にもあったが、やっぱりいつも驚かれるよな……?
普通に思いつくことだと思うんだが、違うのか……?
こればかりは俺の思考だけで判断できないので保留するしかないのだが……
それはそれとして、結構いいダメージを【マキ】に与えることが出来たのは大きいな。
「今度はうちが反撃するよ~!」
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】




