1973話 寝テージ
「うちからいくよ~!
大罪スキル発動!【怠惰閉目】!
そして袈裟斬り~!」
【マキ】が先手として使ってたのは相手の思考と動作の繋がりを遅くするという特殊な魔眼スキルだ。
【怠惰】の権能を借りて使用しているのもあって真っ正面から受けてしまうと対応が送れてしまうわけだが……
スキル発動!【想起現像】!
俺は【マキ】との間……魔眼の視線を効果期間中遮るために赤色の砂を頭上から落とし続けていく。
それで向こうの魔眼の効果が著しく落ちたのと……
「砂が重くて蛇腹剣が速く触れないよ~」
しれっと袈裟斬りの妨害も兼ねさせてもらったぞ!
1つのスキルで2つの効果を生み出せるかどうかというのは使い手の技量が光るテクニックだな。
そして、その隙に……
スキル発動!【紅枝深淵】!
俺は夢幻の力と深淵の力を乗せた紅に染まったこの茨で【マキ】を絡め取っていく。
普段なら操作……というか支配権の維持に難ありのスキルなのだが【夢幻深淵】のセーラー服フォームで俺自身の強度を上げつつ使用したのもあって何とか使えているな!
「うぅ~!?
【ランゼルート】もそうだったけど変態お姉さんもうちを拘束してくるんだ~!?
へんたいさんだね~」
うるさい!
お前への対処方法なんて限られているからな!
こうやっておくのが一番ってわけだ。
そうして【マキ】を雁字搦めにしていると、俺と【マキ】の変身状態が同時に解けていった。
二人とも時間制限があったからな。
【夢幻深淵】は元々燃費がめっちゃ悪い変身フォームで、【勇者】二人を使った膨大なリソース量で強引に維持していたものだ。
そして【マキ】の【修練武器超位解放】ー【湖奼姤之蛇】も同様に時間で途切れてしまう変身フォームだが、流石に無敵になれる状態が永遠に続くなら勝ち目はないからそれは当然の仕様だろう。
無敵以外の能力はその分控えめだったから持続時間はそこそこ長めではあったのだろうよ。
「あれ~?
うちも変態お姉さんも変身が解けちゃったね~!
これでうちが無敵になっちゃったから不利かもしれないけど、変態お姉さんも両腕がもう無いもんね~!
包丁も持てないはずだからこれならうちでも勝てるかも~!」
そう、変身が同時に解けたことで二人ともデフォルトの状態になってしまったわけだが、これまでの戦闘での負傷度合いに差があるわけだ。
【マキ】も俺も負傷こそしているものの、【マキ】は片腕を失っているだけなのに対して俺は両腕を失ってしまっている。
そのせいでチュートリアル武器を持てるか持てないかという明確な戦力差が生まれてしまっているのだ!
……って思うだろ?
こんな時のための手札だってきっちり用意してるんだぞ?
見せてやろう、異形の腕を!
俺は口を使い角の首飾りを取り出した。
読者のみんなは見覚えがないだろうが、これは【失伝秘具(童話礼装)】の【恋慕戦場の怪物ー蛇馬魚鬼】……この前の次元戦争で【ロイス=キャメル】が厄介払いするかのように俺に押しつけてきたものだ!
これを口から空中に投げて輪投げの要領で俺の首にかけると……
「これは変態お姉さんが【師匠】と戦ってた時に使ってたやつだ~!
ぐろてすくだね~!」
あぁ、これは左腕が次元戦争のレイドバトルで見た【ジャバ=ウォック】の腕の見た目のまま俺の腕のサイズへ変えた感じだな。
これで左腕だけだが復活したし、何とか体勢は整えられた……っ!
いくぞっ!!!
異形の腕で包丁を拾い【マキ】へと切りかかっていった。
【マキ】はそれを蛇腹剣で受け止めていった。
やはり防御的な戦い方は元来得意っぽいよな。
生存戦略的に自己防衛反応が高まっているのだろう。
【マキ】から前に聞いた生い立ちが由来してそうだが……
そして俺は包丁で追撃を仕掛けていくが……
「大罪スキル発動!【怠惰巻拉】~!」
【マキ】はカウンターでさらなる大罪スキルの【怠惰巻拉】を使ってきた。
そのせいか、俺が包丁で攻撃を仕掛ける度に眠気が増してきた。
ぐっ、ね、眠い……
「ZZZZZZZZZZzzzzzzz」
くそっ、寝たらまた無敵になって安全になれるからって安心してぐっすり寝やがって……!
ね、眠すぎる……
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】




