1972話 決戦の時
さて、最強のプレイヤーと断言できる【ランゼルート】を倒した俺たちだが、まだやることは残されている。
それは……
「勝負だよ、変態お姉さん!
うちと変態お姉さんとの一騎討ち、さいしゅ~けっせんだよ~!」
そう、【マキ】との決着だ!
まだ次元戦争が終わっていないのは、今回4つの次元全てが敵同士で他の次元のプレイヤーを倒しきらないといけないからだ。
つまり、蛇腹剣次元の【マキ】か包丁次元の【包丁戦士】……どちらかが倒れないといけないわけだな!
【ランゼルート】という強敵を前に皆が自然と共闘する形となっていたが、その共通の敵がいなくなった以上は残ったプレイヤーたちで争わなくてはならない。
「でも、うちはまた次元戦争で変態お姉さんを相手に戦えるのにわくわくしてるんだよ~!
これまでず~っと敵として戦ってきて強いと思ってたんだけど、しばらく味方として一緒に戦って『すごいっ!』って思うようになったんだ~
だから、そんな変態お姉さん相手に全力で、真剣に戦ってみたかったんだよ~!」
なるほどな。
近くで見ていたからこそ実感したことと、味方であることが続いていたからこそ本気で真剣に戦う機会が無かったことによるフラストレーションがたまっていたわけだ。
だからこそ戦意が高いのか……
だけど戦意が高いのはお前だけじゃないんだぞ?
俺も、お前と戦いたいっ!
俺が教えて、俺を見て育ってきた【マキ】の戦術は以前敵対していた時のものとは変わってきていて太刀筋、不意を突くこと、その他立ち回りを柔軟に吸収している。
実際、【師匠】を相手にしていた時には寝た振りを敢行して不意打ちに成功していたし、今回も【ランゼルート】相手に同様の方法で致命傷を負わせていた。
ここまでの成長を見せられて胸が踊らないわけがないだろう!
だからこそ、どこまで成長したのか直々に確かめてみたかったのだ!
「ほえ~、変態お姉さんもうちと同じ気持ちだったんだね~!
それなら嬉しいよ~!
相思相愛だね~」
いや、それを言うなら以心伝心ってやつだな!
奇しくも包丁次元と蛇腹剣次元で似たような名前のスキル……【渡月伝心】が解放されているのは何か含みを感じるな。
「これまで戦ってきた時はいつも【ジャノメ】がまだ残ってたりしたけど、今回は【ジャノメ】がいないから正真正銘のさいしゅうけっせんだね~!
ここまで後がない戦いを変態お姉さん相手にするのもはじめてだよ~!」
言われてみるとそうだな。
MVPプレイヤーである【マキ】と次元天子である【ジャノメ】がセットになっていることが多かったし、基本的に【マキ】を倒した後に【ジャノメ】と戦うことが多かった。
そういう意味ではこれまで【マキ】は前座としての役割だった気がする。
そんな【マキ】が著しい成長を見せた上で、ラスボス……もしくは裏ボス的な立ち位置として俺の前に立ち塞がって来たのは感慨深いものがある。
「うちも次元戦争ではじめて戦ったプレイヤーが変態お姉さんだったから、こんな大きな舞台で戦うことになるなんて嬉しいよ~」
そう言われてみればそうだな。
初開催の次元戦争の相手も蛇腹剣次元単体だったか。
だからこそこの場で戦う特別感がより生まれるのであろう。
さぁ、決戦の時だぁっ!
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】