197話 得意不得手
【Raid Battle!】
【包丁を冠する君主】
【菜刀天子】
【次元天子】【上位権限】【???】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【次元をさまよい】
【冒険者を導く】
【聖獣を担うが故に】
【深淵と敵対する】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【ーーー機密事項のため開示拒否ーーー】
【レイドバトルを開始します】
はい、今日も元気にログイン!
今日は後輩野球部員の戦闘訓練をしようと思う。
こいつ、盗みの腕はピカ一だが、戦闘に関してはそこまで得意ってわけじゃなさそうだからな。
今後レイドボス相手に練習するのはもちろん必要だが、それより前に立ち回りを俺と直接対戦しながら教える方が先だったようだ。
身体の動かし方とか、じっくり見せてやれば少しはマシになるんじゃないだろうか……と思っての発想だ。
見本も無しに上手くやれっていうのは酷だからな。
というわけで新緑都市アネイブルの闘技場に俺と後輩野球部員はいた。
「闘技場ッス!?
VRMMOだと定番の施設ッスけど、このゲームの闘技場は特に迫力あるッスね!」
そうだろ?
闘技場全体の見た目は新緑都市という景観を損なわない木造建築で、入口は木目に併せて金箔を塗ってあるという拘りよう、木造という雰囲気を壊さない限度で豪華絢爛という要素を強欲にも盛り込んできているからな。
この絶妙なデザインは俺も好きだ。
「俺っちはそこまでじっくり見てたわけじゃないッス……
でも、迫力を感じたのはそういう理由なんッスね!」
そうやって闘技場に驚いている後輩野球部員を横目に、俺は闘技場の中へと侵入していき中央のドでかいステージ……ではなく、室内に設けられたトレーニングルームのようなところへ入っていく。
「あれ?
あっちの広い闘技場のステージでやるんじゃないッスか?
というか、誰もこっちに来てないッスけど、勝手に入っていいんッスか?」
あー、あっちのステージでやると手の内を色んなやつに晒すことになるからな……
お前は俺のクランの秘密兵器としてひそかに育成して、イベントでどーんと他の連中にインパクトを与えてやりたい。
せっかくの盗みの才能だ、それを充分に活かした戦いをしてこの前みたいにあっさり死に戻りしないように、俺がみっちり教育してやる。
俺はそう言いながら腰に提げた包丁を手にとって、刃先を後輩野球部員に向ける。
端から見ると脅迫の現場にしか見えないだろうが、あくまでもこれは教育。
そう、教育だ!
誰がなんと言おうとこれは教育なんだ……っ!
「お、お手柔らかにお願いするッス……」
お手柔らかに?
温いな、俺はプレイヤーキラーだぞ?
プレイヤーキラーの俺が、プレイヤー相手に躊躇するわけないだろ!
お前はこのゲームをはじめてから日が浅いから知らないかもしれないが、俺はプレイヤーキラーとして、悪名が広がっている。
悪名が広がりすぎて出禁になっている場所とか結構あるレベルで……だ。
「なんでそこまでやっちゃうんッスか……」
それをお前が俺に言うのか?
理由は簡単だ、お前が手癖でものを盗んでしまうように、俺はついプレイヤーキルしたくなる……それだけだ!
俺は後輩野球部員の疑問に返答すると同時に包丁による攻撃をしかけた。
得意の袈裟斬り……ではなく、単純に上から下に振り抜く唐竹だ。
お手柔らかにしたわけではないが、流石に即死されても訓練にならないからな。
得意の軌道の攻撃ではないのと、身体に平行した避けやすくガードしやすい攻撃だ。
まずはこの攻撃に反応できるか……?
それを踏まえての攻撃のチョイス。
「うわっ、いきなりきたッス!?」
後輩野球部員はバットを取り出し、身体に垂直になるようにバットを横向きにして上から振り下ろされる包丁を受け止めた。
ほう、これくらいなら流石に対応できるのか。
俺が唐竹という斬撃をあまり使用しないのには、さっき言った身体に平行した避けやすくガードしやすい攻撃という点以外にもまともな理由がある。
俺のこの身体、身長がお世辞にも高いとは言えない……というより低めだ。
というわけで、垂直に上から振り下ろされる斬撃を繰り出しても他のやつが同じことをやるよりも唐竹の売りであるスピードや威力、威圧感のようなものが出にいくからな。
それなら、その辺りのものが減退することを前提に軌道が斜めで、有効範囲が広がる袈裟斬りや、低めの身長を活かした下から沈み込むように振り上げる逆風などの斬撃を運用していくのが、俺の強みを相手に押し売りできる。
そういうわけで、この2つを多用しているのだ。
だからこそ、唐竹を止められたこと自体にはそこまで驚きはない。
だが、俺が後輩野球部員に求めた最低基準の攻撃反応能力を満たしていたことを確認できたので、それは良かったと素直に思った。
後輩に襲いかかる先輩の図……
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