1966話 超越者と最強者
うおぉぉぉぉぉぉっ!!!
「はあああぁぁぁぁぁっ!!!」
【神聖底突破邪剣撃】と【暴食斬魚】……自身のアイデンティティを乗せた最強の一撃同士の衝突。
いわば意地と意地のぶつかりあいだ!
全てを蹴散らす最強の一撃と、【暴食】の力で底上げされた全てを食らい尽くす一撃。
そのぶつかり合いは破壊と再生を繰り返してるので永遠に続くと思われた。
だが、【勇者】二人のリソースを追加した俺でもまだ届かないらしい。
ジリジリと【暴食斬魚】のスキル骨子が破壊されており、完全崩壊まであと少しのところまで来ていた。
……くそっ、全てを喰らわせるつもりだったんだが俺の想定よりも【神聖底突破邪剣撃】はさらに強烈だったってわけだ。
ただ、幸いにも攻撃の規模自体は当初よりも大幅に弱まっておりあと少し後押しがあればなんとかなるんだが……
このままだとその弱まった【神聖底突破邪剣撃】に巻き込まれてどっちにしても死に戻り確定だ。
ここからはもはやお祈りゲーだ、頼むっ!
何とかなってくれっっっっ!
そんな俺の祈りも虚しく、刻一刻と迫り来る【神聖底突破邪剣撃】。
【暴食斬魚】も既に破壊され、俺を守るものはない。
そんな中だが俺は清々しい気持ちでいた。
その理由とは……
「変態お姉さん、このタイミングでいいんだよね~?
うちが【ランゼルート】から変態お姉さんを守っちゃうからね~!
スキル発動!【真名解放】ー【修練武器超位解放】ー【湖奼姤之蛇】!」
【マキ】はそのかけ声と共に身体をチュートリアル武器の蛇腹剣と融合させていき、安寧村ジャバラケンのダンジョンで戦ったレイドボスである【怠惰なる妖蛇女】に似た姿……つまり上半身が【マキ】のままで下半身が蛇のような姿になっていたのだ!
しかも、蛇部分はよく見ると全て蛇腹剣が数珠繋ぎのように連なっており、刃物で構成されているというわけだ。
そしてその姿のまま【神聖底突破邪剣撃】の前に立ち塞がり、全身でそれを受け止めていった。
「【マキ】が自らを犠牲に僕の攻撃を受け止めた!?
……いや、違うね。
犠牲どころか無傷で受け止めているようだね?
しかもこれはabilityによる無敵じゃなくて能動的に動ける状態のまま無敵になっているのか……
その【真名解放】ー【修練武器超位解放】ー【湖奼姤之蛇】が理由かな?」
「ふっふっふっ、そうだよ~!
うちのさいきょーパワーだよ~!」
【マキ】の呑気な声が戦場に鳴り響きながらも【神聖底突破邪剣撃】はその役目を遂げることなく、そのままスキル効果時間を終えていったようだ。
【マキ】、ナイスタイミングだったぞ!
あのタイミングできちんと入ってきてくれたから何とかなった……
「変態お姉さんが【神聖底突破邪剣撃】の攻撃の範囲を狭くしてくれてなかったらうちが入ってもそのまま後ろにいる変態お姉さんに当たってたもんね。
じーっと待ってたよ~!」
【神聖底突破邪剣撃】が放たれた直後くらいに【マキ】の気配を感じたからな。
すぐに来ないようにしれっとジェスチャーを飛ばしていたのが伝わっていて何よりだ。
ギリギリじゃなかったら下手すると【ランゼルート】に排除されてしまっていた可能性もあったし、あのタイミングが本当に最高だったぞ。
「それにしても【修練武器超位解放】か。
……その概念は知っていたけれどまさかたどり着くプレイヤーがいたとはね?
僕ですらたどり着けない領域だというのに、MVPプレイヤーの中でも最も非力だと思っていた君がそれを成し遂げるなんて驚きだよ」
【ランゼルート】でもそこまでは行けてないのか!
それならなおのこと【マキ】が【修練武器超位解放】を修得したのは偉業だな!?
「そうなの~?
よく分からないけどやったね!
【ランゼルート】と変態お姉さんに褒められちゃったよ~!」
本人がよく分からないのかよ!?
まぁ、実際褒めてるから純粋に喜んでくれていたらそれでいいんだけどな。
「ただ、僕の聞いたことのある【修練武器超位解放】の情報は断片的でね。
それ一つで僕の複数発動している【上位解放】たちに対抗できるのかは分からないのさ。
それに、【修練武器上位解放】でもそうだけど武器によって性能差もあるからね。
一括りで判断できないのも悩ましいところだよ……」
ある種、【ランゼルート】を超えたということですね。
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】