1964話 勇者装備と勇者バフと勇者デバフ
「まさか勇者二人が妨害に回って、【包丁戦士】が攻め手に回るとはね……
あのタイミングで仕掛けてくるなんて想定もしてなかったよ。
僕自身の攻撃ということもあってかなり体力が削られてしまったのもあるし余力はそろそろ無くなりそうだ。
手を抜いていたわけではなかったのだけれど、まだ侮りと油断が残っていたってことか……
自分のことながら、気持ちが切り替えられていなかったのは未熟だな」
いやいや、あれで侮りと油断が残っていた戦い方だったか?
世界罪剣八本同時展開とか、勇者三人、MVPプレイヤー二人、深淵レイドボス一体……いや、俺たちと戦う前にもう一体倒していることを考えると二体か。
それだけ相手にしていて倒し続けられているのは純粋に堅実に戦っている証拠だろうよ。
それは逆に謙遜が過ぎるぞ……
まぁ、とはいえ俺が大ダメージを与えたのでこれでまた勝機が見えてきた。
あと一発か二発、同じようにダメージを与えられたら倒せそうな様子だ。
「ふん、そうはいかないよ。
残りの【勇者】も倒してみせるさ!
スキル発動!【勇者見参】!」
ここで【ランゼルート】が使ってきたのは、自身のリミットをさらに外すためのスキル【勇者見参】だった。
それで力が溢れ出てきたわけだが……
「【上位権限】発動!【他次元スキル】ー【名称公開】ー【修練防具上位解放】ー【勇者鎧アンチノミー】!
【上位権限】発動!【他次元スキル】ー【真名解放】ー【修練武器上位解放】ー【勇者聖剣パラドクス】!
剣と鎧の制約を今解く!」
【ランゼルート】はスキルを発動し、聖剣や鎧の姿を変えていく。
聖剣は宝玉が埋め込まれた黄金色と銀色が入り雑じった刀身へと変化し、鎧も同様の配色となった。
さっきまでの【ランゼルート】は【正義】の大罪を行使する者としての本気というなら、今の【ランゼルート】は【勇者】としての本気モードってわけだ。
いやいや、本気モードが幾つもある時点でおかしいけどな!?
「これが【勇者】として極地に至った姿……っ!?
凄すぎるよ!?」
「ふひひっ、目の当たりにしてみると改めて分かりますけど風格があてぃしたちと違いすぎますねぇぇ!
なんだか、そこにいるだけで存在を示してますよぉぉ!?」
勇者二人も勇者装備を身に纏った【ランゼルート】に気圧されているようだな。
俺も何度対峙してもそうなるから、初対面の二人はなおのこと気圧されてしまうのも無理はない。
それが本来同格とされるはずの勇者で格の違いを見せられたのだからなおさらだ。
「手は緩めないよ。
【上位権限】発動!【他次元スキル】ー【名物怪々】ー【修練解析上位解放】ー【勇者鑑定アンビバレント】!
……君たちの弱点を統合して斬撃属性に対して特に弱くなるように設定しなおしたよ。
さらに【上位権限】発動!【他次元スキル】ー【安価名案】ー【修練研磨上位解放】ー【勇者洗練ジレンマ】!
僕が蓄積した過去スレッドから選ぶのは……【剣で勇者を斬り倒す】効果だ!」
さらに【ランゼルート】が使ってきたのは【名物怪々】ー【修練解析上位解放】ー【勇者鑑定アンビバレント】と【安価名案】ー【修練研磨上位解放】ー【勇者洗練ジレンマ】だった。
しれっと初見の【勇者鑑定アンビバレント】とかいうものを使ってきているが、【ランゼルート】の発言からして相手の弱点を変えるスキルなんだろう。
聖剣の使い手が相手の弱点を斬撃に変えてくるなんて理不尽にも程があるぞ!?
つまり、通常攻撃すら弱点扱いになってしまうんだからな。
それに【勇者洗練ジレンマ】で付与してきた能力もえげつない。
【剣で勇者を斬り倒す】効果とかいうさっきの斬撃弱点付与と合わせると二重で効果があるわけだからだ。
幸いにも俺は対象外になっているので辛うじて難を逃れたみたいなところあるが、【キズマイナ】と【キョズコロン】はそうもいかない。
ここからは勇者であっても【ランゼルート】に即死させられてしまう戦場と化したのだ!
「げぇぇっ!?
【ランゼルート】ってそんなインチキくさいこともしてくるの!?
【包丁戦士】っち、聞いてないよ!?」
俺も【勇者鑑定アンビバレント】については全く知らなかったからな!
そりゃ知らないことは言えないだろ!
「そっか、そうだよね……」
「ふひひっ、装備もバフもデバフも完璧ってことですねぇぇ……
あと少しの体力なのに、それを削り切るのが急に遠くなった気がしますよぉぉ!」
どうやって勝てばいいんですかぁぁ!?
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】




