1957話 ティルティルティルティルティルティルティルティル
相変わらずの規格外の長さの大罪アナウンスを聞かされたわけだが、【ランゼルート】はやはり【色欲】以外の大罪を全て兼ね備えた状態になっていた。
流刑次元で【夢魔たこす】が辛うじて【色欲】を司っていた【大罪魔】を打破してくれていたお陰でそこだけは免れていたわけだ。
「だとしても、それ以外の権能は今や僕の手にある。
そして、この状態だからこそ使える新たな手札もあるのさ。
剣現せよ、【傲慢剣ティル】【嫉妬剣ティル】【強欲剣ティル】【暴食剣ティル】【怠惰剣ティル】【憤怒剣ティル】【虚飾剣ティル】【憂鬱剣ティル】」
【ランゼルート】がそう言うと八本の剣が一斉に中に生み出されていった。
おいおい……まさかの八本同時かよ!?
俺と【夢魔たこす】がそれぞれ【正義剣ティル】と【色欲剣ティル】を持っているからその二本だけ欠けた形で残り全てを使役しているのだろう。
だが、流石にいくらなんでも【世界剣種】を八本同時はリソース度外視過ぎないか?
「僕のリソース量なら造作もないことさ。
当然、君の懸念通りリソース度外視で長時間続けられるわけではないのだけれど、それまでに【勇者】を最低一人……それだけ確実に倒すことさえ出来れば僕の地力だけでも勝ちは狙えるからね。
少しくらいは無理もするさ。
それが【勇者】というものだよ」
勝ちを貪欲に狙いにいっているわけか……
まさに【強欲】だな。
【ランゼルート】の中に大罪が烙印されたことでそれぞれの欲求も強まっているのかもしれない。
円卓を汚した時には【憤怒】を前よりも露にしていたしな。
「拙者の【疾風迅雷】が空中の剣に弾かれた……っ!?
空中に浮かせたまま操作が出来るということなのだな……
……これは手厳しい」
「ふひひっ、それならあてぃしも数を増やしますよぉぉ!
ability発動!【粉骨再身】!
スキル発動!【想起現像】!」
【ランゼルート】が攻撃の手を増やしてきたのを見た【キズマイナ】はabilityとスキルの組み合わせで骸骨兵を次々と生み出していった。
その様子はまさにネクロマンサーの2つ名に相応しいな!
「なるほど、君は死に関するものが得意なようだ。
一騎当千の【勇者】と、痒いところに手が届く数の骸骨兵を一人で両立できるのは中々凄い特技だよ。
でも、手数を世界罪剣のお陰で増やせるようになった僕を上回るほどではないね。
【世界剣種】はその一つ一つがレイドボス級の力を秘めているからさ!」
そう言いながら【ランゼルート】は【キズマイナ】の生み出している骸骨兵を八本の世界罪剣を空中操作して蹴散らし始めた。
まるで紙でも切るかのように倒しているので、本当に余裕綽々なのだろうよ。
「それなら私が【ランゼルート】本体に攻撃を……
スキル発動!【蛇眼閃光】!」
【キョズコロン】は世界罪剣たちが【ランゼルート】本体から離れたのを確認すると、それを好機と思ったのか眼からビームを放っていき【ランゼルート】を仕留めようとしていた。
実際手薄になっているから間違いではないように思えるが……
「世界罪剣だけが僕の戦力ではないよ?
スキル発動!【必殺名技】!
聖剣の輝きを君に見せよう、【聖突破魔剣】」
眼からのビームと聖剣からのビームが激突し、周囲に衝撃が走っていく。
……っ、うおっ俺も飛ばされるっっ!!
「【包丁戦士】っち大丈夫!?」
「互角……いや、このままでは【キョズコロン】が危ういか。
ならば拙者が追撃するとしよう。
スキル発動!【疾風迅雷】!」
状況の不利を見た【シゼンゼプラ】が再び稲妻と風を纏い【ランゼルート】へと襲いかかる。
ビームを出している聖剣が【キョズコロン】相手に使用されている以上、【シゼンゼプラ】へは使えないからな。
「【勇者】同士の連携はやはり手強いね。
反応が遅れると命に危険を感じてしまうくらいにはね?
だけど、見えている攻撃なら対処は可能だよ。
こんな風にね!
【強欲剣ティル】【虚飾剣ティル】、僕の身を護ってくれ!」
【ランゼルート】は骸骨兵たちを倒している最中だったうちの世界罪剣のうちの二本を背後に呼び寄せて【シゼンゼプラ】の攻撃を受け止めていた。
……おいおい、そんな器用なことも出来るのかよ!?
「しかも、拙者が押しきれぬほどに強固な守りだ!
不意を突いたと思ったのだが……その実誘われていたということか」
【シゼンゼプラ】の剣は挟み込まれてしまい押すにも引くにも出来ない状態になってしまっているようだった。
攻めに回っていたものが二本減ったことで骸骨兵が減る速度も遅くなったのだが、その分【シゼンゼプラ】が動けなくなってしまっては元も子もない。
流石に【世界剣種】8つ同時は規格外過ぎますよ……
無欠の次元天子だった時の私ですらやりません。
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】