1955話 羨望の勇者
【ファインド】は【ランゼルート】の放った聖剣による一撃……【聖突破魔剣】の光の奔流に巻き込まれて死に戻りをする……
誰もがそう思っていたが、その中から決意に満ちた声とオーラが立ち上ぼり【聖突破魔剣】を振り払っていった。
「見ててよね【包丁戦士】っち!
これが私の……新たな力っ!
【上位権限】ー【Legend Weapon】っ!
渡りに渡って私の手元にやってたその意味をここで見せて、【底遷剣バルム】っ!!」
【GMコール】
【【勇者】召喚】
【【真名解放】……【ファインド】→【キョズコロン】】
【Raid Battle!】
【羨望の勇者】
【キョズコロン】
【メイン】ー【底辺種族】【上位権限】【勇者】【プレイヤー(β)】
【サブ】ー【底辺種族】【白獣人(偽)】【ウォッチャー】
【底辺種族を導き】
【次元を勝利に導く】
【己の無力さを嘆きながらも】
【深淵と敵対する】
【他者を羨む勇ましき者は】
【強き者の姿を眼に焼きつけ】
【その身の糧とする】
【羨みを胸に、嫉妬を手に】
【その力を奮うのだ!】
【レイドバトルを開始します】
【ワールドアナウンス】
【底辺種族の覚醒】
【【ファインド】がクラン【スネーク・アイズ】を強制退会させられました】
【【キョズコロン】が【勇者パーティー】のリーダーとなりました】
ちょっっっ!?!?!?!?
お前がこのタイミングで【勇者】になるだと!?
流石にそれは予想外だったんだが!?
「ふふふ、【包丁戦士】っち。
実はここは、【勇者】に覚醒してなくて条件をあと少しで満たせるかもしれない存在を後押しするためのフィールドだったみたいだよっ!
そして私は【羨望の勇者】……憧れた存在や強い存在を見つめ続けた時間が途方もない時間になって、その最高峰の一撃で身体が一度崩壊することがトリガーだったみたいだね」
急に悟ったような、システムの仕組みまで語り始めた辺り本当に【勇者】として【上位権限】を獲得したのだと窺えるな……
「ふひひっ、ここで新たな【勇者】の誕生とは嬉しい限りですねぇぇ!」
「拙者も喜ばしいな」
【キズマイナ】と【シゼンゼプラ】は頼もしい新たな味方の誕生に拍手喝采したいくらい喜んでいるようだ。
実際には【ランゼルート】を警戒しながらなのでそんなことをする余裕はないみたいだが……
「【勇者】が三人揃っていた時点で新たな【勇者】が誘発して生まれる可能性は考えていたけれど、まさか君とはね。
さっきまでの無力さこそが糧になったのかな?
【勇者】になってその無力さが解決したのなら敵として認めてあげるよ、だけど【勇者】に相応しくない力ならそのジョブは返還した方がいい。
大いなる力には大いなる責任が伴うからね。
相応しいかどうかは別として【勇者】というジョブそのものが重荷になるはずだ、君にそれが背負えるか!」
【ランゼルート】は俺や深淵種族たちに見せた怒りとは別の……同格同族への心配と叱責を混ぜたような言葉を【ファインド】……いや、【キョズコロン】へ投げかけていた。
【ランゼルート】にしては珍しい様子だが、今ここにいる他の【勇者】たちが己の信念を持って戦っているのは剣をぶつけ合いながら既に分かっているからこそ生まれたばかりの【勇者】である【キョズコロン】が心配なのだろう。
【ランゼルート】は同族の後輩にはわりと優しいんだなぁ……
口調こそ強いが心配の感情が全身から溢れ出ているし。
「私もその責任を果たせるのかは今すぐに結論は出せないよ!
でも、それは戦いの中から見つけるしかないから……戦うよっ!
憧れた力で憧れの存在たちにどれだけ力を示せるのか試してみたいからね」
【キズマイナ】と戦っていた時から……いや、俺のことも見ていたことも含めると奔放さやそれが許されるだけの強さに憧れていてコンプレックスになっていたもんな。
嫉妬の勇者にならなくて良かったなと言ってあげたいくらいだ。
【嫉妬】だったり、【嫉妬】じゃなかったりする……
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】




