1953話 三勇者集結
「ふひひっ、見たところ【ランゼルート】相手に【包丁戦士】さんと【シゼンゼプラ】が組んで戦っているようですよねぇぇ?」
「それには相違ない」
「ふひひっ、ではさっそく新参のあてぃしから仕掛けさせてもらいますよぉぉ!
スキル発動、【底辺土葬】!」
【キズマイナ】がその手に持つ剣を振り回すと、【ランゼルート】の周りの土が一気に掘り進められて【ランゼルート】のバランスが崩れていった。
先手で直接攻撃じゃなくて搦め手を選ぶ辺り【キズマイナ】の性格が表れた戦い方だよな……
「【シゼンゼプラ】が風の使い手だったから君は土の使い手なのかな?
安直な発想かもしれないけれど、手慣れた様子で使ってきたからついついそう思わされてしまうよ。
それに本人のパーソナリティーがそのまま反映されやすい【底辺】スキルだからなおのことだよ」
【底辺】スキルは底辺種族特有のスキルだが、今のところ同じスキルを使っているやつは一人も見てない。
だからこそ【ランゼルート】の言っていることは本当なのだろう。
とはいえ、【ランゼルート】の予想は完全に的中しているわけじゃない。
【キズマイナ】が得意としているのは土属性じゃなくて、遺骸に関するスキルたちだ。
死属性と言ってもいいのかもしれない。
「【ランゼルート】が隙を晒しているうちに拙者も畳み掛ける!
スキル発動!【底辺旋風】!」
ここで便乗して【シゼンゼプラ】も底辺スキルを使ってきた。
【底辺旋風】というようだが……どうやらその手にある日本刀を振り抜いて風の刃を飛ばしていったようだ。
【波状風流】のように不可視というわけじゃないが、その分射程距離や軌道、そしてインパクトで差がついているな!
【シゼンゼプラ】から【ランゼルート】に向かって放たれたのだが、それを躱した【ランゼルート】を通り抜けて再び折り返して【ランゼルート】を狙っていったのだ!
……旋回してきたってわけか!
そして、刃のような一撃の周りには当たり判定の大きそうな風圧の壁のようなものも随行している。
中々凶悪なスキルだな……
「これは流石に直撃出来ない攻撃だね。
ただ、対処方法は幾つかあるよ。
君たちがせっかく底辺スキルで合わせてきているんだから僕も底辺スキルで対抗させてもらうとしようか。
スキル発動!【底辺廃退】!」
足場を崩されて落下している最中の【ランゼルート】が繰り出したのは俺が過去に対峙した時にも使用してきていたスキル【底辺廃退】だった。
聖剣から無色の光を放ち、それで風の刃と打ち合うとそのまま風の刃がボロボロと朽ち果てていってしまった。
「!?
風の刃が朽ち果てるなど……あり得るのか!?
拙者はこれまで体感したことがない恐怖を覚えてしまっているぞ……」
「ふひひっ、生けるものはいつかは滅びるとは言いますけど、あれは繁栄から荒廃するまでの過程を高速で再現してエネルギーのムラを生み出して破壊していますねぇぇ!
あてぃしとも親和性がありそうなスキルなので見てすぐに理屈がわかりましたよぉぉ!」
【シゼンゼプラ】は自分の必殺技が思わぬ形で敗れてしまったのに驚愕しているのだが、一方で【キズマイナ】は【底辺廃退】の効果を自分なりに分析して納得しているようだった。
……【キズマイナ】が言うようなことが正解なら、確かに【キズマイナ】が得意とする死の概念にも通ずるものがあるので感覚的に理解しやすかったのだろうよ。
「やっぱり【勇者】2人が相手だとしても僕の優位性は変わらないようだね。
これならそのまま勝てる気がするよ。
……もちろん、攻撃を受けたら致命傷になるのは分かっているから油断はしないけれどね?」
「ふひひっ、油断してくれてた方があてぃしとしては嬉いんですけどねぇぇ……」
「やはり拙者たちの個の力では【ランゼルート】には及ばぬか……
そうなれば勝機があるとすれば連携による手数と攻撃の種類による攪乱!
こちらは三人いるという強みを最大限に活かすしかないであろうな」
【シゼンゼプラ】が今後のことを話しているが……その手数を補う戦力がまた増えたようだぞ?
「【包丁戦士】っち、私が来たよ!」
双眼鏡を携えた蛇腹剣次元のプレイヤー……【ファインド】だ!
さっき死に戻りした【牛乳パフェ】と同じく魔眼スキルを使いこなす遠隔支援専門のプレイヤーでもある。
最前線に【勇者】二人がいる中でこいつが参戦してくれたのはわりとデカイんじゃないか!?
というか、これで蛇腹剣次元の参戦していたプレイヤーが全員明らかになったのか。
既に死に戻りした【マックス】と今来た【ファインド】、そしてまだ姿を見せない【マキ】だ。
「ええっ、【マックス】っち死んじゃったの!?
いつの間に……」
あっ、こいつは知らなかったか……
また賑やかになってきましたね……
【Bottom Down-Online The Abyss Now loading……】




